○…地球環境保全が世界的コンセンサスを得たのは、商品経済システムにうまく乗った大きな要因だ。それには京都議定書に組み込まれたCDMなどの商品化システムもあるが、一般人へのエコとかグリーンという概念の普及が大きい。経済学で需要を説明するのに効用理論がある。ユーザーが効用の一つとして、(健康に良いと同じように)環境に良い、エコ商品という効用が認知されたのだ。この効用は自分のためよりも、子孫のため=利他性という特徴がある。 環境対策などで、科学的に因果関係が証明されない状況でも対策をという予防原則が必要とされる。ところが、現在の環境政策について科学的因果関係が証明されたものかと言えば極めて怪しく、現時点で科学者の多数のコンセンサスがあるに過ぎず、過去の政策で科学の進歩で現在では誤りとなったものも少なくない。つまり環境政策全体が予防原則に基づくもので、この原則を特記すべきではない。リスクや確度に従って、政策とすべきかが決まるものだ。
地球環境のCO2主犯説も1つの仮説に過ぎない。安部首相が提起した2050年CO2半減などという社会的経済的に巨大な影響を与える政策は子孫にとってハイリスクだ。省資源・省エネルギーはCO2説の真否にかかわらず、今後の地球に必要な政策だ。これこそが環境分野における利他性の政策なのだ。
○…ごく最近、ある方から「ご近所が撒布する家庭用殺虫剤で健康被害を受けている」という相談を受けた。2年ほど前からこの症状に悩み、その方は我われが居住する大規模集合住宅の関係者に訴えつづけてきた。周辺住民とのトラブルにさえ発展してしまっているのだ。
正直言うと、役目がら仕方なくこの悩みを始めて聞いたとき「あまりに神経質すぎる。ゴキブリ退治にスプレーを撒くのは違法でも何でもない。集合住宅に居住するからには、お互いにある程度の我慢は必要」と考えた。これまでの相談でも多くの反応はそのようだったろう。ご当人も「大部分の人は私の頭がおかしいと思うのでは?」とも言った。当のご家族も「臭いなどは何もしない。空気清浄機を複数台入れており、部屋もなるべく密閉するようにしている」と私の前で言い争いはじめた。
その方は「化学物質過敏症」という診断を受けたそうである。実はこの病は私にとって初耳だった。調べてみると、社会問題化している「シックハウス症候群」もこの範疇に入る。圧倒的に多い原因は殺虫剤、防虫剤、香水、芳香剤類のようだ。この病に悩む人は全国に70万人いるという。しかし周囲に理解はされていない。花粉症のように一般的になってくれば周知されてこようが、今後その可能性は大きいような気がしてきた。
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