○…ハンチントンの「文明の衝突」は冷戦後の世界の枠組みを提示した書だが、近年の相次ぐテロ、中東紛争などなど、欧米キリスト教文明と中東イスラム文明との「文明の衝突」と見ることもできる。
イスラム教とキリスト教は兄弟宗教であり、中世世界では両宗教間で差があったわけではなく、人々は圧倒的に宗教のもとにひれ伏していた。中世では現代とは反対で、イスラム世界が先進、キリスト世界が後進であった。これがいつどう逆転したのか。
キリスト世界が14・5世紀以降のルネッサンス・宗教改革・宗教戦争・大航海時代(世界の拡大)などの大変動を経て、商品経済に適合したキリスト教の変貌と商業倫理・労働倫理の確立、国民国家・国民経済の成立、市民革命、法治国家世俗国家の確立などと、産業革命をもたらす資本主義経済の基盤が成立したことが回答だろう。例えば木村尚三郎「近代の神話」(中公新書)を参照すると血まみれの西欧の近代化が見えてくる。
その間イスラム世界は多民族帝国オスマントルコのもと繁栄を続けていた。キリスト世界との格差に目覚めたのは第一次大戦オスマントルコの崩壊以後だ。現在でもイスラム法の支配が続くなど世俗化は不十分なままだ。中東など多くの国が独立、多民族共存地域に国境を引いて国民国家を無理無理造り出したのだが、成功例は数少ない。
○…3月下旬に能登半島をM6.9、震度6強の地震が襲った。この地震は、「日本全国どこでも巨大地震が起こっておかしくない」ことを実感させた。 というのも、政府地震調査研究推進本部が昨年発表した「今後30年以内に震度6弱以上の揺れに見舞われる確率」の予測を見ると、能登半島は0.1%未満の地域に色分けされている。ほぼ発災確率ゼロと考えてしまう。 ただ、同本部は「今後30年以内に震度6弱以上の揺れに見舞われる確率が相対的に小さいとしても0%ではない。例えば、30年以内に火事に被災する確率は1.9%、交通事故で死亡する確率は0.2%、これらの数値と比較しても、例えば地震の発生確率3%という数値は決して低くない。また、たとえ地震の発生確率が高くなくても、一度地震が発生すればその被害は甚大なものとなる。これらを考えあわせれば、今後30年以内に震度6弱以上の揺れに見舞われる確率が3%を「高い」と捉えることには十分意味がある」と説明している。
人口が密集している大都市で発災したらどうだろう。その被害は想像を絶する。首都圏地域でいえば、同予測図で「南関東地震」はM6.7〜M7.2で確率70%程度となっている。この確率はとてつもなく大きい。この予測図は全国の市町村に配布されている。ぜひ、ご一見を!
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