○…イラクで日本人拘束がまた起きた。今回拘束された斉藤氏はイギリスの警備会社HeartSecurityの警備スタッフ、長年フランス外人部隊員という筋金入りの職業兵士だ。前回NGOやフリー記者に起きた「自己責任」の声がないのが不思議だ。斉藤氏こそ自己責任で生死を賭けており、日本政府の保護を必要としない人物ではないか。
警備会社とはいっても実際は軍事役務を提供する民間軍事コントラクター(PMC)だ。イラクでの民間軍事要員は昨夏2万人に達し、PMCは米軍につぐ兵員だという。広く民間軍事企業PMFの市場は世界的に拡大している。冷戦終了後の戦争は国家間ではなく民族紛争や対テロ戦争であり、紛争解決を担う先進国にとって国民の多大な人員犠牲を強いる戦争ではないからだ。
「戦争請負会社」(NHK出版)によると、PMFは前線からの距離により軍事役務提供企業・軍事コンサルタント・軍事支援企業に分けられる。KBRのイラク輜重役務は軍事支援業務だ。この外延に人道支援・復興支援業務があり、先進国軍隊の責務となっている。民間だけで実施できる以前の段階だ。陸上自衛隊のイラク派遣もその一例だ。この業務も米国は積極的に民間企業を起用している。イラクの復興ビジネスがその例だ。民間コントラクターを通じての現地のリソース・協力が成功の鍵だからだ。
○…「橋梁談合」問題が新聞紙上を賑わしている。「談合」、「価格カルテル」は忘れた頃に告発され、話題を呼ぶ。確かに「談合」は市場経済に反する行為だろう。まず、第一に非効率な事業者も「業界協調」の名の下に温存される。何よりも、消費者・国民は高い買物(税金)をさせられるはめになる。けれど、「談合」はなかなかなくらない。過当な価格競争を避ける、業界全体の維持安定など様々な言い分があるだろう。時には、地場産業育成を目的とした官製談合さえも起こる。
今回の件では日本の有力な橋梁メーカーの殆どが顔をそろえている。これらメーカーを抜きにして安全な橋梁は建設できないだろう。確かに、メーカーが価格面で過当競争を行えば、赤字受注も起こり得るかもしれない。必然的に体力のない企業は淘汰される。
いつも、「談合問題」が起こるたびに思う。内部告発によって表に出てくるのであろうが、このシステムは深く日本の土壌に根づいてるのではなかろうか。既存のシステム、既得権益を壊したくない人々にとっては、たまたま告発されたのは「運が悪い」としか?だとすれば、抜け道を探すいたちごっこだ。問題は公共事業の入札システムにある。会計法に謳われる「一般競争入札」。ここに問題があるような気がしてならない。
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