○…ダイムラーが経営再建中の三菱自動車への増資に応じず、金融支援も行わないことが明らかとなった。ダイムラーはトラック部門の経営権をすでに握っており、筆頭株主として三菱自動車の再建にどっぷり浸かっていたにもかかわらず、最高意思決定機関である監査役会が拒否したものだ。これはダイムラー自体が三菱自動車を支援する余裕がないことを意味している。現代自動車との提携も解消の方向という。低迷するクライスラーをどうするのか、そしてダイムラー自体が世界の自動車業界のなかでの生き残り戦略の再検討をせまられている。ダイムラー・クライスラー・三菱という弱者連合の崩壊の一歩とみられよう。
三菱自動車のクレーム隠しリコールさぼりが発覚したのは2,000年の6月のことだ。隠蔽工作は書類の残っている77年から恒常的に行われて来たという。経営陣は社外にはこうしたことを改めることを約束したが実際にはそれ以降もユーザー側からのクレームを拒否してきたと指摘されている。2002年1月三菱ふそうトラックのタイヤ脱落死亡事故を起こしても整備不良と言い逃れ、責任を認め届け出たのは2004年3月だ。このような企業への出資に対するダイムラー株主の反発も撤退の要因の一つかも知れない。これほど、ブランドイメージの崩落した企業の再建は容易ではなかろう。
○…最近、消防関係者の話を聞く機会を得た。時々目にするオフィスでの防火訓練。みんな何やら気恥ずかしげにやっている。大体、防災訓練、消火訓練で火の出ていないところに向けて形だけの消火器操作に真剣になれないだろう。ぞろぞろ並んでの避難訓練も遊び気分は免れない。「小学生じゃあるまいし」という声が聞こえてきそうだ。
ところが、関係者の話によると「実際火事が起こった場合、消火訓練、避難訓練をやった人とそうでない人の差は歴然としている」という。火災の場合、初期消火が有効なのはほんの数分。訓練経験のない人は、頭でわかっていても実際の火災では全く何もできないという。消火どころか、避難さえ覚束ない。咄嗟の場合、体はいつも使っているエレベータに乗り込むらしい。これが大惨事に結びつく。
最近読んだ文章で、武道の達人の言葉があった。「お手本となる型を良く見て、正しい技の心像を自分の中で反復することが重要だ」。これが武道の心得だという。本物の正しい型、技術を身につけることが最も重要らしい。
「型」、「形式」と馬鹿にしていたが、どうもそうではないらしい。昨年あった一連の大企業の工場火災・事故。「型」を重要視していなかったことはないだろうか?
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