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エンロン、サハリンパイプライン建設も計画か
六ヶ所村ガス火力発電計画ともリンク



 エンロンが青森県六ヶ所村に出力200万kWの天然ガス火力発電所の建設計画を発表した。そのことだけでも大きな衝撃だが、さらに日本の電力およびガス事業者を大きく揺さぶっている話がある。エンロンがサハリンからの天然ガスパイプラインを六ヶ所村まで敷設しようという計画を進めているというのだ。

●燃料はLNGだけではない
 今年10月。エンロン・ジャパンの設立のため来日したエンロンのケネス・レイ会長権CEOは、通産大臣および建設大臣と会談したという。関係筋によれば、レイ会長の用件は「サハリンから六ヶ所村まで天然ガスパイプラインを引き、六ヶ所村に大型火力発電所を建設する計画がある。日本政府にも協力してもらいたい」ということだった。さらに、「六ヶ所村から仙台までは日本政府がパイプラインを引いてくれ。仙台から東京までは民間がやるべきだ」と述べた。
 この話のなかに述べられている六ヶ所村の発電所建設計画については、既に発表されている。エンロンとオリックスの合弁会社であるエンコムと、エンコムの子会社であるイーパワーが約200万kWのガスタービン・コンバインドサイクル発電所を建設。2004年ごろに着工し、2006〜2007年ごろに運転を開始するという計画である。燃料としてはLNGおよびパイプライン・ガスのいずれに関しても検討しており、パイプライン・ガスの受入設備あるいはLNG桟橋・受入・貯蔵設備など燃料受入設備も建設するという。
 発表された資料によれば燃料のオプションはLNGだけではなく、パイプライン供給も含まれている。エンロンがサハリン・パイプラインを建設するということに、含みを持たせているかのようだ。事実、エンコムもエンロンがサハリンパイプラインを検討することを否定していない。

●壮大なる日本市場戦略
 エンロンがサハリン・パイプラインを検討しているということは、サハリン・パイプラインのオペレータとして初めて名乗りをあげるものが出現したということである。しかも、エンロンの構想では天然ガスのバイヤーも同時に出現するのだ。
 これにより、サハリン・パイプライン構想が現実の問題として捉えられるようになる。日本政府としても、具体的に天然ガス輸入パイプラインに取り組まざるを得なくなる。サハリン・パイプラインの実現が一気に現実味を帯びてきた。
 エンロンが考えているのはサハリン・パイプラインばかりではない。
 六ヶ所村の計画では、LNGも選択枝となっている。その場合、どこからLNGを調達するのか。エンコムではマレーシアやインドネシアなど東南アジアを供給源として挙げながら、日本国内からの供給も視野に入れている。どういうことかというと、今年10月に行われた日米規制緩和対話で、米国側が今回初めて、日本国内のLNG受入基地のオープンアクセス化を要求してきたのである。以前から、この点を要求する声はあったものの。大手都市ガス業界にとっては、いきなり正式な要求項目に入れられたことで、困惑しており、態度を決めかねている。そして、これもまた“エンロンが働きかけている”という。
 オープンアクセス化が実現すれば、わざわざ遠いところからLNGを調達する必要もなくなり、プロジェクトのリスクも軽減する。また、将来的にLNG基地にパイプラインが繋がれば、パイプライン沿線の天然ガス需要を開拓することで、パイプライン・オペレータとしての事業性もより増してくる。
 現在、分散型電源が注目されるようになってきたが、これが普及するには幹線パイプラインの建設が不可欠であることは以前から指摘されているところであり、一地方のガス会社から世界的な企業に急速に発展してきたエンロンにとって、パイプライン建設と発電ビジネスをトータルでコーディネートするのはお手のものといえるだろう。
 パイプラインやLNGでのガス供給から発電にいたるまで、エンロンが描いている日本市場戦略は、壮大だ。
 そして、エンロンが日本でのエネルギー戦略を開始したということは、欧米からみれば日本のエネルギー市場の突破口をエンロンが開いた、ということになる。
 もはや、“国内”という市場は消え“世界市場の一つ”となりつつあるののかもしれない。