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エンジ各社の2000年度中間期決算、企業格差広がる



 エンジニアリング専業3社、鉄鋼5社、造船重機6社、重電4社の2000年度中間決算がまとまった。今期の鉄鋼のエンジニアリング事業の特徴を一言でいうと、受注が活況を呈していること。しかし、ここでも企業間格差が出始めている。業績回復には海外プロジェクト受注がキーを握っているようだ。

●専業3社
 ハイドロカーボン分野を中心にエンジニアリング業界の市場環境は好転の兆しを見せている。
 LNGプラントで手堅い実績を見せる日揮。多くのLNGプラントのFEED業務を受注しEPC受注に意欲を見せる千代田化工。KBRとのエチレンプロセスのアライアンス成果も出始めている。TECは米独立系大手から初めて米国本土のFCC装置を受注するなどプラントビジネス分野で大手3社がふたたび活躍しそうな気配を見せている。
 しかし、2000年度中間期決算、通期見通しでは日揮が1人勝ちの様相を呈し、業績の差はますます広がった。このため、千代田化工は新再建計画を策定し、2003年度には黒字化を図る。また、TECも「再建計画」で抜本的な構造改革を進め、事業の安定化を図る。

●造船重機6社
 造船・重機各社は石川島播磨重工業(IHI)のみが黒字化を達成、他社は赤字となった。赤字の要因は会計制度の一部変更や売上の減少など様々だが、通期では三菱重工業および川崎重工業が最終赤字を残す以外は黒字となる見通しだ。プラント関連部門でも、国内外の市場がなかなか回復してこない。ガスタービンや都市ごみ焼却プラントなどは比較的好調だが、製鉄機械や化学プラントは非常に低いレベルで推移しているなど事業分野によって大きな較差が生じている。

●重電4社
 東芝、日立製作所、富士電機、三菱電機の重電4社は、国内電力投資の抑制が続いていることで、電力関連設備の業績が低迷を続けている。特に、重電部門の業績を大きく左右する原子力発電プラントの新規立地が遅れていることの影響が大きい。そのため、海外プロジェクトの受注がキーポイントとなっているものの、海外市場の中核であるアジア市場の本格的な回復には至っていない。しかも、欧米企業との競争が激しくなってきている。国内外で厳しい事業環境に囲まれている重電メーカーは、それぞれに事業戦略を立て直して、利益の拡大を図っているところだ。

●鉄鋼5社エンジ部門
 鉄鋼大手5社のエンジニアリング部門は、新日本製鉄とNKKが連結ベースのみ、住友金属と川崎製鉄が単独のみ、神戸製鋼所が連単双方でというように、それぞれに決算数字の公表の形が分かれた。そのため、単純に5社を比較することが難しくなったうえ、連結ベースとした新日鉄とNKKは、今中間期が初めての連結決算であるため前年度中間期との比較もできないという状況になった。

 全体的な傾向としては、国内自治体のごみ焼却プラントの発注が今年度大幅に増加したことにより、環境プラントが比較的好調に推移した一方、土木・建築分野においては公共工事の減少や民間建築需要が依然として低水準で推移しているために不調となっている。また、海外に関しては鉄鋼エンジニアリングの基軸でもある製鉄エンジニアリングで世界的に設備需要が低迷し、技術協力のようなソフト案件にシフトしつつあることに加え、技術協力に対する得意先のニーズもほぼ一段落したことで減少傾向にあり、環境分野以外は全体に低調だった。利益面では、リストラクチャリング効果が出始めているものの、前年度を下回る見通しもあり、収益基盤の強化が重要課題であることに変わりはない。