EnB20号目次へ


ベントレー、EEM、ASPへ事業展開
グループ表彰はインドネシア銅精錬所チームなど8件



 エンジニアリング業界向けにCADシステムを提供してきたベントレー。既にCADシステムでは世界標準のシステムとしてその地位を固めてきた。しかし、エンジニアリング業界向けではCADの需要が一巡し、プロジェクトの減少にともなってシステム販売は低調に推移している。そうしたなか、同社ではIT(情報技術)革命をビジネスチャンスととらえ、単なるCADシステムにとどまらずビジネス展開を図っている。

●CADデータを利益の源泉に
 かつて、CADの導入は設計作業の機械化に過ぎなかった。入力されたCADデータは画面上に線を表示するが、それが何を表しているのかという情報は加えられていなかった。その後、CADはオブジェクトデータ形式へと転換し、データとその属性が統合された。そして2次元から3次元へと進化してきた。
 しかし、既に単なる3次元CADでも業務の効率化には限界が見えてきている。独立したCADシステムは、他のエンジニアリングシステムとの互換性がなく、設計のチェック&レビューを超えてCADデータを活用することは難しい。ITの波が押し寄せているなかで、エンジニアリング企業にとって貴重な財産であるCADデータをITのなかで有効活用できていないのが現状だ。
 ベントレーは、以前から「CADからEEM(エンタープライズ・エンジニアリング・モデル)への移行」を提案してきた。EEMは、CADを超える新たなエンジニアリング・カテゴリーと位置付けられている。通常のCADデータは設計部門内での形状データ共有に制限されているが、EEMでは設計、建設、運用にいたるまで企業全体で情報を共有することになる。CADデータを設計だけでなく、プロジェクトのライフサイクル全体で有効に活用していくことを目指したものでありEPCに止まらず、オペレーション&メンテナンスまで、CADデータを活かすことでより利益を高めていくことを目指す。
 「EEMによって、CADデータはエンジニアリング業の利益の源泉となる」(ベントレー・システムズ 荒井孝行社長)。

●ASP事業支援のプラットフォーム
 同社では、CADからEEMへ一気に移行するのではなく、段階的に移行するためのプロセス“Bentrey Continuum”を策定している。これにより急速なシステムの変革に伴うリスクを回避する。また昨年、移行のためのステップとして@Project Web、Aエンジニアリングバックオフィス、BMicrostatyion、Cエンジニアリングプロジェクト情報管理、DECMエディタ、Eライフサイクルインテグレーションの6つを提示している。
 一方、こうしたエンジニアリング・ソリューション環境整備を支援するため、同社ではASP(アプリケーション・サービス・プロバイダー)事業も提供している。「viecon.com」だ。
 Vieconは、インターネットを活用した“プロジェクトマネジメントサービス”であり、エンジニアリング会社内だけでなく、顧客や協力会社を含むプロジェクトの全ての関係者がプロジェクト情報を共有し、プロジェクトを円滑に遂行ることを目指すために必要なプロジェクト管理ソフトを提供する。また、vieconはユーザー企業がASP事業を展開する際にもそのASP環境を提供することができる総合的なエンジニアリング・ウェブサイトだ。こうした展開によって「e−Engineering」が実現する。
 ベントレーでは、従来のようなCAD単体のシステム販売から、このようなデータ統合型のシステム提供へと軸足を移してきており、さらにVieconを通じたインターネットサービスに力を入れている。「今後2年の間にシステム販売とインターネットサービスとの事業比率は逆転するだろう」。ベントレー・システムズの荒井社長は、そう見込んでいる。
 今、ITによってエンジニアリング業界の業務は著しく変革し、さらに新たな可能性が生まれようとしている。ベントレーは、こうしたエンジニアリング業の変革を支援していく考えだ。