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TECのASP事業、年末に商業運用開始



 東洋エンジニアリング(TEC)の「プラントITセンター」は発足後、約半年が経過した。年末の本格運用に向けて着々と準備が進むASP(アプリケーション・サービス・プロバイダ)事業。
 エンジニアリングビジネスの新たな展開として注目される「プラントITセンター」の現在の状況をレポートした。

●ポストEPCに着目
 今年4月に発足した「プラントITセンター」が現在、中心事業として進めているいるのは技術情報サービスの「EPSource.com」。このEPとはエンジニアリング、プロキュアメントの略である。
 現状、力を入れているのは「E」の分野。客先ごとに調達仕様が異なる「P」に関する展開はいろいろと制約があり、今後の課題だ。
 プラントITセンターは「IT技術を利用し、プラントユーザ向けに独立したビジネスを展開する」という設立趣旨のもと、プラントのライフサイクル全般に係わりあいを持って、密着した営業展開を行っていく。それによってプラントのビジネスチャンスに結び付けていく狙いも込められている。
 その設立の背景には時代の流れがあった。プラントITセンター新ビジネス開拓チームの西洋一チームリーダーにその流れを解説してもらう。
 流れは二つある。一つは「ポストEPC」ということ。プラントのライフサイクルは建設にかかわる時間の10倍以上ある。その間、客先との接点は切れたまま。既存システムのプロフィット・インプルーブメントは保全費用に左右される。製品コストへのはねかえりは小さなものでも15%、大きなものでは8割に達する。今までの保全のアプローチは機器に偏っていた。運転側からの視点を重視したコンサルテーションサービス「プラントクリニック」(商品名)を展開していく。コンサルティングからシステム作りまでのASP事業だ。
 もう一つの方向性は「コラボレーションの時代」ということ。「1人勝ちの時代ではない」という。パートナーシップによる手法と道具類の共通化は避けてとおれない。しかし、欧米の侵略を手をこまねいてみていられない。マレーシア、タイ、インドネシアなどでローカルなパートナーと道具類、手法の共有化を図っていく。「道具類の基本的なノウハウを広め、目指すのはデファクト・スタンダード化」と、意欲は大きい。

●アクセスは月2万件
 ASPサイトのアクセスは4月以降、毎月2万件に達するという。年末の商業運転開始を前にASPのテストユーザーは現在、約10社。この数字を多いと見るか、少ないと見るか。インテグレーションサービス、コンサルテーションを行う工数を考慮すると、それほど小さな数字ではなかろう。
 石油、石油化学のユーザは業務改善の提案を行っても現場サイドではそれどころではないのが現状だろう。今進んでいる統合・再編の動きが一段落したときが「ビジネスチャンス」とTECは見ている。
 ASP事業でのTECのエンジニアリングツールは、・単層流、二層流配管サイジング、・簡易ピンチテクノロジー解析(省エネルギー)、・フレアネットワーク計算、・ポンプ・コンプレッサー性能計算、・安全弁サイジングと出入り配管サイジング、調節弁サイジング、簡易トレイ・パッキング性能計算、・サーモサイフォンリボイラ計算など多岐に亘る。コンサルティングサービスを含むエンジニアリング解析/支援では、プロセスR&Dエンジニアリングサポート、材料選択および試験、流体解析、構造解析、耐震解析・設計、安全解析、騒音解析、リスクベースインスペクション、ライフサイクルコストなどをメニューとしている。
 「プラントクリニック」では、ERPで有名なIFS社(スウェーデン)の保全パッケージ、旭エンジニアリングなど幅広いツールを使って事業を進めていく。

●緒についたばかりのASP
 ASPの事業展開では、ASP基盤のサポートをいかに行うかが重要な鍵となる。同社が提携している日本ユニシスは「この分野での経験が豊富で運用を安心して任せられる」という。  しかし、今後海外展開を進めていく上では、シンガポールなどでデータセンターを利用する必要がある。この選択も今後の課題だ。
 現在、200社が加入している「ASPインダストリ・コンソーシアム・ジャパン」のベストプラティクス部会FA/エンジニアリング分科会の主査を努めている西氏は、「まだ、ASP事業は緒についたばかり。ASPの成功事例を発表しあって学んでいくのが分科会の主な仕事」という。
 TECがASP事業の成功事例を発表するのもそう遠くは無い。