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ブラジル、2004年までに2万6,000MWの電力を調達
GDPを超える電力需要の伸びに対応



 レアル通貨危機から立ち直りつつあるブラジル。2000年のGDP成長率は4.2%となる見通しだ。経済の安定化と成長にともない、電力需要も大きく伸びており、対応が急がれている。そのため、ブラジルでは2004年までに新たに2万6,000MWの供給力の増強が必要とされている。海外投融資財団(JOI)が行ったセミナー「ブラジルのエネルギー最新事情」で同国鉱業エネルギー大臣ロドリフォ・トゥリーニョ氏が講演した。

●火力で1万3,825MW
 ブラジルの経済状況は、急速に改善されてきている。94年のレアルプランの効果により、95年には22%であったインフレ率も98年には1.65%と急速に低下、99年には通貨切り下げの影響により上昇したが、2000年は6%に押さえることを目指している。また、GDPも98年はマイナス成長であったが、99年には1%成長となり、2000年は4%成長が見込まれている。最近の予測では4.2%成長が実現できそうだという。海外貿易でもおよそ11億ドルの貿易黒字となっている。
 こうした経済の安定化と成長のなかで、電力需要も大きな伸びを示している。99年には2.3%増程度であった電力需要も2000年は5.5%の伸びを予想。「長期的に見てもGDP伸び率の1.3〜1.4倍の伸び率が予想される」(ロドリフォ・トゥリーニョ大臣)。
 この需要の増加に対応するため、2004年までに2万6,000MWの電力供給力の増強が必要だ。同国の計画では、このうち水力発電の増強で1万700MW、原子力および既存の火力発電で2,300MW、アルゼンチンからの電力輸入2,000MWで1万5,000MWを調達する考えだが、それでも2004年までに新たに1万1,000MWを調達する必要がある。
 この不足分の調達のため、ブラジルでは99年3月にプライオリティ・サーマル・プログラムを展開、ブラジルおよびボリビアのガスを使った天然ガス複合火力を中心に新規発電所の整備を進めており、すでに38件のプロジェクトが進行中という。、総出力1万3,825MWの設備が2004年までに立ち上がる予定である。
 これらのプロジェクトのうち、目新しいものでは、IBIRITE(330MW)、TERMOBAHIA(270MW)、JUIZ DE FORA(38MW)、S.CRUZ(180MW)、TERMORIO(270MW)などが上げられる。このうち、JUIZ DE FORAは丸紅などが事業主体に参加して進めている模様だ。また、同時にアルゼンチンからの電力輸入の増強にともなって、送電線の建設も進められており2001年に500MW分、2002年にさらに500MW分を建設するとしている。

●大型案件はIPP
 一方、ブラジルでは電力セクターの民営化が進められており、配電会社に関しては既に85%を民営化。最終的には100%民営化する計画だ。また、既存の3つの発電会社も民営化する予定であり、送電についても民営化の対象となっている。
 今後建設が予定されている発電設備に関しても「大型のプロジェクトについては外資で資金を調達していきたい」(同)としており、基本的に大型プロジェクトはIPPで行われることになると見られる。既にエンロンがCuiabaで450MWの天然ガスコンバインドサイクル発電のIPPを手掛けており、今後はさらにIPPでのプロジェクトが増えていくものと見られる。世界のIPPプレイヤーがブラジル市場を狙っていくものと考えられる。
 「為替リスクは小さいと考えている」(同)とブラジル側でも外資の呼び込みに力を入れているようだ。