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本業再編とエンジニアリング事業



 世界的に加速している産業再編・統合の動きの中で、わが国の産業再編の動きは遅いといわれているが、今年にはいってようやく活発化している。ここ数週間、動きがさらに加速している。
 鉄鋼では今年4月、川崎製鉄とNKKが包括提携を発表した。製鉄所の補修、購買、物流で協力しコスト削減を目指すという。最近、さらにこの提携範囲を拡大し、製鉄工程の最上流部門である銑鉄の製造においても提携するのではないか、と報道されている。新日鉄と住友金属もステンレス鋼板、シームレスパイプ、H型鋼の設備廃棄を含む事業提携を行っている。さらに、新日鉄は韓国の浦項製鉄とも基礎技術開発などで戦略提携、グローバルな展開も視野に入れている。
 造船大手も集約されつつある。三井造船、川崎重工、IHIの3社は将来的には造船部門を分社化して統合することを検討している。日立造船とNKKも造船事業での総合協力を打ち出した。また、住友重機とIHIの造船所統合は決定した。三菱重工とあわせ4つのグループが編成されつつある。
 このような本業再編の次に当然想定されるのは、機械・プラント・エンジニアリングといった兼業部門の再編成であろう。製鉄機械で日立製作所と三菱重工の提携が6月にあったが、それが先駆けであろうか。
 総合建設の再建の動きも、このほど、熊谷組の債権放棄による再建のスキームが、鹿島の出資なき支援をふくめほぼ決着した。さらにハザマの債権放棄も最終的に合意がなった。与党による公共事業見直しは改めて、公共事業がもはや総合建設を支えることがないことをはっきりさせた。総合建設企業はいよいよエンジニアリング企業化へ志向することになろう。
 これら鉄鋼、造船の本業分野での統合・再編の動きの中でエンジニアリング部門の事業戦略はまだほとんど聞こえてこない。プラントエンジニアリング部門を子会社化、分社化するにしても、その事業性はどうであったのかを総括した企業はどれだけあったか。あるいは整理・縮小の対象になりその使命を終えてしまったのか。各社の期待事業である環境エンジニアリング分野の競争は激しい。しかし、PFIなどへの対応、技術開発投資などから企業間格差がつきつつあり、本業の再編とともに再編・統合に向かうべきだ。