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費用は年間100万円以内に
支援サービスも充実

三菱化学エンジ、工場設備診断ASPをスタート

保全工事に結びつけて事業拡大図る

 三菱化学エンジニアリングがアプリケーション・サービス・プロバイダー(ASP)で工場設備診断管理を行なうサービスを開始した。既に同社では、顧客のエネルギー関連設備でシミューレーションを行なえるインターネットサービスを開始しているが、エネルギー設備だけでなく工場全体の設備保全ソフトをASPで提供し、さらにパトロール支援システムなどのサービスも組み合わせてメンテナンス事業の拡大を図っていく。

費用は年間100万円以内に

 今回、ASPでサービスの提供を開始した設備管理システムは、同社が三菱化学向けなどで培ってきた保全管理・工事実績をもとに構築した設備管理システム「アミシス」を改良したもの。従来、同社はアミシスをソフト販売してきたが、これをインターネットで顧客と結び、ブラウザ上で使用できるようにした。これにより、常に新バージョンでシステムを使用できるため、バージョンアップ毎の買い替え費用は不要になる。
 アミシスは、工場の機器台帳を作成し、各機器ごとに点検台帳や点検カレンダーを作成。保守や修理の実施記録を入力することで台帳と実施記録データから故障頻度リストなど各種の管理指標を出力することができる。
 同様のソフトは他社からも出されているがシステムが大掛かりなものであり、その購入費用は500〜1,000万円。このため、大規模のプラントでしか採用されてこなかった。これに対してアミシスは必要最小限の機能に絞り込んでいることで、より小さい規模の工場でも容易に導入することができる。また、ASP化したことで、工場に専門の保全管理スタッフがいなくても、ブラウザがあれば簡単に使うことができる。また、費用に関してはデータの大きさによって固定費やデータ管理費は変化するが「年間100万円以内には抑えたい」(三菱化学エンジニアリング)としている。
 同社では、このASP事業で5年後に顧客数1,000件、年間売り上げ10億円の事業規模を目指している。
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支援サービスも充実

 ASP事業の開始にあたり、同社では4月に九州支社、中国支社、四国事業所、中部支社、鹿島支社の5ヵ所にデータサーバーを設置するとともに「設備管理センター」を新設。各地域における顧客ニーズにきめ細かい対応ができるように体制を整えている。顧客の設備になにかあった場合、2時間で急行し、保全・修理を行なえることがそのポイントだ。
 現在、20名でASP事業にあたっているが、将来的には全国8カ所の事業所全てにデータサーバーを設置し、要員もさらに拡大していく考えだ。
 また、ASPによる工場設備診断サービスだけでなく、三菱化学エンジニアリングの従業員が工場を巡回して設備管理を行なう「パトロール支援サービス」も提供する。現場の機器の運転データを、ハンディターミナルで収集して設備管理サーバーにデータを転送する。また回転機械などの動機械に関しては精密振動計や簡易振動計でデータを収集する。ちなみに、これらのデータ収集機器は三菱化学エンジニアリングが開発したもの。これにより、設備の稼働状況の把握を電子化することができる。
 さらに、機器の重要度に応じたセンサーを設備に設置し、連続的に設備の運転を24時間連続で監視する「リモート監視サービス」も展開。異常が生じたら即時に通報を受けて、緊急連絡体制のもとで必要な対応を迅速に行なうというもの。既に同社が建設したコージェネレーション設備や氷蓄熱設備を対象に生産の安定化を図るためのリモート監視サービスは手がけており、その延長で対象を各種設備に拡大した。
 同社では、ASPを核としてこれらの支援サービスを充実されることで、ASP事業のみならず、その先にある実際の保守・建設工事の受注拡大を狙っている。
 顧客産業では、オペレーションや設備管理をますますアウトソーシングしていこうとしてしている。特にユーティリティ設備、設備保全、環境施設、出荷など製造業ではノンコアの部分はメンテナンスの手が届きにくい。そうした部分を主体にシステムの採用を働きかけていく。
 ASP事業により、修繕工事への波及効果は、ASPの約3倍とみており、5年後にはASPを経由した修繕工事で約30億円程度の受注が可能と見ている。
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