ENRランキングにみる米国エンジニアリング企業
恒例のENR誌の米国エンジニアリング・建設企業のランキングが発表された。建設(Contracting)売上高・設計(Design)売上高とも好調を維持しており、米国のエンジニアリング建設業界は繁忙が続いている。ただし、両売上高とも海外が減少、とくに建設は2桁の減少となっている。これは1997以降のアジア経済危機による受注減に原因している。建設受注高は合計・国内とも2桁増、海外も増加している。(表1参照)しかし、米国経済のスローダウンが建設景況とくに民間への影響が懸念されており、各社は市場の点検にはいっている。
今回引用するENR誌のランキングは、デザインファームのTop 500(April 16)@、コントラクターのTop 400(May 21)A、デザインビルダー・コンストラクションマネジャーのTop 100(June 18)Bである。これらのランキング(およびそれらの解説記事)により、以下米国のエンジニアリング建設企業の動向を見ることにする。なお、表1−5の出典は表1は@〜B、表2・3はAB、表4は@〜Bである。
米国経済の低迷により建設業界に警戒信号がでているものの、コントラクター・デザインファームとも当分受注はあるとみている。しかし、民間のデシジョンメーキング段階のプロジェクトに影響がでている。民間に対して輸送など公共分野はまだ期待ができるため、建築からシビルへと重点を転換などの動きが見られる。半導体市場・ハイテク・通信に不況の影響がでてきており、次の上昇を待っている。
多くのコントラクターは景気下降に備え、ビジネスを再点検している。デザインファームは顧客ニーズに対応して、コントラクト部門強化などの事業展開が進んだ時期に、皮肉なことに経済に問題が生じてしまった。顧客との密接な関係の構築が大きな課題となっている。
電力プラント市場のブームは少なくとも今後3年間はつづくとみられており、コンバインドサイクル中心のなかで石炭火力PJも動いている。最大の問題は、この市場がEPC・ランプサム契約であり、EPCコントラクターは繁忙をきわめる機器ベンダーに依存していることだ。設備の出荷の遅れは大きな金銭的損害になる。昨年相次いで起きだStone & WebsterとRaytheon E&Cの資金トラブルは海外ならともかく米国国内のPJでおきたこともあって電力プラントに関し業界に大きなショックを与えた。
現在、顧客とコントラクター間に変化の兆候があるという。リスクシェアできるPJを選択、一定レベル以上のリスクをとらないなどの各社の戦略もみえるが、注目されるのは最近Shaw Groupが受注した案件(本欄で既報)で機器保証はベンダーからとるが、顧客とアライアンスをくみ性能保証はしないというもので、これならEPCコントラクターがリスクを管理できるという。また大手独立電気事業者(IPP)はターンキーランプサムから徐々に移ると見ている企業もある。
プロセス石油市場は過去数年国内のブームのなかで恩恵を受けず大きく低迷した分野だが、全て展望が冷えたままではない。食品・医薬・ガス発電の需要拡大に伴うガス配送コンプレッサーステーションが期待される。医薬品は依然好調がつづくが資本回収のスピード化とともに早期完成が求められている。
石油価格の高値安定は大きな影響はなかった。石油上流は好転したがメジャー合併により相殺されている。石油精製でボトルネックPJ、その他新しいビジネスとしての石油会社のファシリティ管理がある。
建築市場は国内建築が成長著しく5年間で大きくシェアアップした。経済不振の影響が懸念される分野だ。多くのアーキテクトがチャンスありとみているのは都市計画・都市住宅だ。ベビーブーマー時代における健康施設文化施設などである
半導体市場は999年上昇ののち低迷のままだが、半導体の人材リソース経験は他−病院などダストフリー環境にも転用可能だ。アーキテクト関連でもこうしたクロス交配の可能性がいわれている。
交通市場は6ヵ年のTransportation Equity Act for the 21Cによる連邦補助金が高速道路・都市高速鉄道を振興により増加した。
環境市場については、別途ENR誌がThe Top 200 Environmental Firmsを発表しているので、あわせて次号以降紹介したい。
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アジア・南米の金融危機と国内ブームは、米国エンジニアリング企業の目を国内に向けてきたが、米国経済のスローダウンは再び海外に目を向けさせることになろう。電力やプロセス石油分野では大手EC企業に海外市場にチャンス=国内不況時の天国を提供してきた。
国際市場ではランプサムターンキー市場が通常となっている。ファイナンスされたプロジェクトでは、貸し手はオーナーにランプサムアプローチを要求する。自由にネゴできるのは、バランスシートに載せるファイナンスの場合だけだとBechtelはいう。なお、Bechtelは国際事業を再編し、地域別から事業ライン別にした、顧客が事業ラインの方を好むからという。
石油市場の国際競争はいぜん厳しい。その有効な武器として BechtelとFluorが挙げるのは、 専有ないしライセンス技術と遠隔地PJ実行能力だ。例としてトリニダッドのLNGプラントなどが挙げられている。
アジア市場はまだ3年間の金融メルトダウンから回復していない。復活はいつか不明だ。いくつかの有望地域・有望プロジェクトはあるという。香港・シンガポール台湾の交通・水関連インフラだ。電力市場はスローのままだが、一部韓国など原子力プラントなど例外もある。
ヨーロッパ市場は低下したが大きな市場だ。欧州は米国のあとを1-2年遅れで追っているともいう。英国は鉄道のメンテナンス・PFI市場など新たな市場がある。また東欧がコンシューマー社会へと転換しており、期待市場となろう。
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デザインファーム(コンサルティングエンジニア企業・建築設計=アーキテクト企業)は、急速かつしばしば、ラディカルな変身を遂げつつある。プログラムマネジメント、O&M・アウトソーシング、Equity Model、オフバランスファイナンスなどのコンセプトの進展、webベースのコミュニケーションや規制データベース、次世代のケーブル橋、クリーン石炭燃焼発電プラントなどなどの新技術が背景だ。各社はフルスロットルで仕事を進める中で、変身が進行している。
デザインファームのサービス多角化としては第一はデザインビルドへの進出だ。デザインランキングTop500において、コントラクティングカテゴリー(建設ポーション)に報告した企業が前年の81社から本年は92社となっていることにも現れている。また従来はデザインの延長としてデザインに含まれていたプログラムマネジメントが独立の業務として拡大していることが第二の多角化だ。典型的なのはParsons Brinckerhoffで、本年はCM for Feeにはじめて報告した。つまり大手のデザインファームが続々とEC企業に転身しているのだ。
顧客に広汎なサービスを提供し、アライアンスなど顧客との関係を深める、これがコンセプトで、顧客の投資サイクルの上流・下流へのサービス多角化を図っている。上記もその一環だ。Frederick R Harrisなど中堅デザインファームを傘下におくAECOMが1事業体として本年は報告したが、システムインテグレーションの上流を狙い、顧客の課題に始めの段階において解決をパッケージとして提供する事業体制に転換した。下流へ展開しているのはLockwood Greeneで親会社Jones Costructionとパートナリングを組んでいる。アライアンスはエクスクルシブであることは少ないが、小数ベンダーであるメリットは相互にあるという。
プロジェクトごとのマネジメントから顧客の大きな建設プログラムのマネジメント=プログラムマネジメントというトレンドが注目されている。マネジメントコンサルティング企業のフロントエンドワークへの進出がある。デザインビルド企業はリスクをとれ、エンジニアリングスキルをもつなど有利であり、マネジメントコンサルトができるやり方にはたちいらないという対策でいけばマネジメントコンサルタントより優勢だという。
多くの企業がプログラムマネジメントをつかって、新市場に参入している。CM・デザインビルド・プログラムマネジメントが発展するにつれ、建設企業は早急に足場を固めねばならない。建設企業は顧客の仕事を知り、分析に必要なファイナンスオプションから規制コンプライアンスにいたるすべてのアドバイスを提供できる立場にあるのだ。オーナーは経験ある建設企業を、個々のプロジェクトを管理できるマネジメント能力だけでなく、全プログラムをマネジできる企業をもとめている。これはもはや大企業に対してだけ限られるのではない、枠組みからでようというバックグラウンドと挑戦をしようという企業への新しいビジネスチャンスの新しい世界が開かれたのだ。
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デザインビルドのランキングの基準は、従来はデザインビルド売上のコントラクトポーションのみであったものが、本年はデザインとコントラクト両ポーション計とすることなった(表1参照)
デザインビルド、リスクCM(CM at Risk)はいずれも国内が2桁増、海外2桁減、全体で4%弱の増加となっている。フィーCM(CM for Fee)は2桁減となっているが、CM企業はブームであり、それはCM企業教会のメンバー数の急増にもあらわれているという。低下の原因は大手EC企業が、低下する国際市場でフィーCMからEPC契約に重点をうつしたためだという。デザインビルド・リスクCMの海外も大手EC企業のプロジェクトで、プロセス・石油、電力分野の低迷を反映している。
デザインビルドは過去数年、ステディに時には大きく成長してきたが、成功は一連の問題を生み出した。これは他のリスクCM、フィーCMにも通ずるもので、これらオルタナティブデリバリといわれる方式が盛んになると、競争が激烈となり、能力面で企業が正しく判断されていない。また、顧客の一部がオルタナティブデリバリを理解しておらず、ベストなやり方を選んでいないことだ。これらの問題についてデザインビルダーをはじめとする各団体が企業判断ツールや選択基準を作成、顧客にPRしている。
デザインビルドの最近の発展は公共建設分野での受容が増えたことだ。デザインビルドの新市場として注目されているのは水道・下水道プロジェクトだ。自治体や投資家所有の公益企業は需要家の最終ラインにいたる自営もしくは委託のプロジェクトを進めるための種々のアプローチを実験する意向があるのだ。民営化の動きもキイとなる役割を果たしている。自治体でない施設運営事業者や一部オーナーがDesign Build Operate Finance パッケージを採用している。最近採用された大型案件はDetroit水道・下水道局の40億PJ、現在検討中はPhoenix水道サービス局の約5億ドル案件だ。
デザインビルダーが顧客から悩まされているのは無限責任にいたるプロジェクト責任を強制されることだ。契約がますます複雑になって、弁護士や保険会社はリスクをコントラクターにますます押し付けようとする。MontgomeryWatsonが率いるデトロイドの11社のコンソシアムは無限責任をうけいれ、競争各社を追い払った。
リスクCM市場は10年間続いた好調な建設市場の恩恵を大きく受けてきた。95年売上ベースにランキングシステムを変えて以来、2桁の成長を続けている。米国の建設市場の波に乗ったなかで、現在の問題は市場から降り落とされないか、下落の可能性があることである。
プロジェクトデリバリの選択は、リスクCM、デザインビルド、最高額保証ゼネラルコントラクトのどれをつかうかはクライアントに依存し、どのようにクライアントがセットアップできるかにかかる。他方、クライアントはプロジェクトのリスク負担を建設企業に要求することが増加しており、デザインファームや純CM企業をリスク分野に導いている。リスクCMジョブでも学校案件などでプログラムマネージャー(本来フィーCM)としての役割から来たものもある。また、リスクCM企業は競合としてのデザインビルドの成長に注目している。
フィーCMは盛ん、とくに公共分野で盛んであり。公共分野のスタッフ減、デリバリシステムの実験というトレンドに対応している。高等教育機関を含む学校、上下水道がホットマーケットだ。CM企業はプロジェクト関連サービス以上のもの-例えば長期計画-を提供している。多くの機関ことに交通関連ユーザーはCM企業と長期の関係をもとめるという。CM企業の重要な傾向の1つに顧客がプレ建設サービスに金を喜んでだすようになったことがある。プランを形にするのに喜んで金をだす。どんなパートナリングでも文章が貧弱では助けにならない。
プログラムマネジメントの普及はCMとくにフィーCMの増加として現れる。中国石化プラントに対する米国EC企業の受注は本誌で本号も含めて既報しており、海外でのフィーCMとしてあらわれよう。
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本年のTop100(=B)は上記の建設企業の変身を表わすものとして、新たな表-統合建設売上高(Combined industry revenue)とプロフェッショナルサービスの2表を集計している。この2つの表をもとにつくったのが表4である。いくつかの企業パターンとして紹介しよう。
@従来型のEC大手企業
Bechtelの力が際立っている。デザインビルドとくに海外で断然トップである。つぐのはFluorでおなじ姿である。KBRはリスクCM(海外)が大きい。Washington Group、FWがこれに属する。、
Aプロフェッショナルサービスの多いEC企業
Jacobsが代表である。Parsons、Black & Veatch、ABB Lummus、IT Groupがこういうパターンだ。
BデザインファームからEC企業へ転進中の企業
CH2Mが早く転進した企業だ。URS、AECOM、Parsons Brinkerhoffが最近の転進だ。Montgomery Watsonは表からはContractingは見えないが、自らECと定義している。大手デザインファームのほとんどがPureDesignerからEC企業に変身している。
C建設企業
Turner、Skanskaだが、建設といってもリスクCMが多く、サービス化は進んでいる。Skanska本社がソリューションプロバイダー路線に適合している。AMECもリスクCMが多いがサービス路線だ。CMがなく純建設はPeter Kiewitと少数にとどまる。
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