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EDITORIAL


○…「日本経済の罠」という本を読んだ。経済産業省の若手エコノミストによるもので、「失われた十年」という90年代の分析から、「不良債権」問題が日本経済を毀損しているシステムを解明、長期低迷から脱出するための、各種「仕切り」を超えた「グランドデザイン」を描いている。「需要サイド論」と「供給サイド論」という不毛な経済政策の対立から脱却するものとして、バランスシート再建に取り組むべきことを主張している。
 本書の取組みとして注目すべきは経済政策についての国民へのアカウンタビリティ(説明責任)を果たそうとしている点である。理論や提案について、一般読者でもわかるように説明されており、本書を読むことにより、日本経済の問題点を体系的に理解するとともに、それを理解するための経済学的な基礎知識を習得できる工夫がなされている。
○…不況感はますます募り、構造改革路線は頓挫するのではないかとの危惧がある。「失業問題」の深刻化が改革の足を引っ張る。しかし、構造改革の断行は産業界に新たな事業機会をもたらすだろう。
 規制緩和の進展によって、民業のビジネスチャンスは確実に拡大する。都市再生プランの遂行、公共事業の抑制、特殊法人の整理は民間企業に新たな事業機会を提示している。
 このチャンスをものにできるかどうか、企業の腕の見せどころだ。エンジニアリング産業にとっても格好の事業機会であるのは言うまでもない。
○・・・表紙に使わせていただいた花王の高級アルコールプラント。ヤシ油を原料に高純度の高級アルコールを作るものだ。この高級アルコールというのは、化粧品やシャンプー、リンスなど洗剤の原料になる。シャンプーの原料がアルコールだなんて知らなかったのでびっくりした。ヤシ油洗剤というのはヤシ油そのものを原料にするのかと思ってたら必ずしもそういうわけではないらしい。
 ちなみに、ヤシというのは大きいもので30mぐらいの高さになる。だからヤシの実を収穫するのにサルを使うこともある。収穫するのも大変だ。そこで花王ではヤシの品種改良を行なった。高さがせいぜい3mぐらいにしかならないのに、実の数は多いという品種を作ったそうだ。これだと普通のハシゴ程度でOK。収量も増える。フィリピンではこれが大変喜ばれているという。
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