Morrison Knudsen(MK)がRaytheonのエンジニアリング部門Raytheon Engineer & Constructors (REC)を買収してできたWashington Group(WGI)が短期資金ショートに陥り、破産法Chapter11申請の可能性も考えられいる。RECから引き継いだPJの採算が予想以上に悪かったからだ。WGIは買収成立後にも拘わらず、事実を明らかにしなかったとしてRaytheonにREC購入価格の低減を要求、ついに訴訟を起こした。同時に引き継いだ赤字の見込まれる米国内ガス発電PJ2基の工事の中断を行ない、Raytheonの譲歩を引き出そうとしている。
WGIとRaytheonとの交渉経過
MKのRECの買収条件は現金と5300万ドルと負債4.5億ドル。かつリスクの高い海外4PJはRaytheonの責任とした(実際はMKがコストベースで実施、赤字はRaytheonが負担)MKはよい買い物をしたと評判であった。すでに7月には取引きは成立し、現金も支払っている。そしてWGIと改名した。しかし、現実にRECのPJを引き受けてみると、赤字が続々と発生し、WGIはさらに7億ドルの「営業権」の計上が必要となり、年間6千万ドルの償却が必要となった。Raytheonに請求している金額は3.25億ドルという。そしてついに短期的に資金ショートとなり、破産法申請も選択肢の一つとなっている。
MKを率いるWashington氏のビジネスは公開会社である建設事業以外にプライベートビジネスでも大きな事業資産を築いているが、その手法はどちらも危機に瀕した優良事業を安く買い再生させるというものだ。建設事業では93年にKaslerを買収、96年破産法Chapter11管理下あったMorrison Knudesenを買収してMKと改名した。さらに99年にはCBSからWesting Houseの政府サービス部門を買収し、見事に大手コントラクターの一角として事業の再生に成功した。
REC統合により、規模的にも事業範囲としても米国第4位のエンジニアリングコントラクターとしての確立を狙ったものだ。ビジネス自体・社内体制としては成功したものの、資金的にはM&Aの結果として大きな傷を受けてしまった。
買収が成立したのに、その条件を改定しようと要求するのは相当異常な事態であり、Raytheon側はWGI はプロフェッショナルであり、応じられないとした。そのため訴訟となった。RECの海外部門を担当するRaytheon Engineer & Constructors Internationalの監査を行なった財務諸表がでなかったことからDue Diligence (精査)できないという理由をあげている。
WGIはさらに驚くべきことに、Raytheonから引き継いだSythe社の2基のガス発電プロジェクトを継続すれば赤字が継続発生して、WGIの破綻につながるとして工事を中止した。あわせて11億ドル、1600MWと800MWのプラント。Sitheは契約を破棄して、Raytheonに工事継続を求めている。一旦工事を中止したWGIは現在無契約状態で工事を再開したという。WGIとしてはRaytheonに契約の責任をもたせ、コストベースでPJ遂行したいようだ。RaytheonとしてもWGI の破綻は望んでおらず、解決の方向を望んでいるので、Raytheonの譲歩の可能性も出てきた。
WGIのモラルアップ
WGIはRECの赤字PJの精査は、WGIの幹部がプロジェクトマネージャーを突然訪問し、プロジェクト情報にアクセスし、数回の会議を出席するものだったという。この結果わかったことは多くのPJでRaytheonのデータはでたらめだということだという。たとえば、海軍向けのPJで固定価格で2050万ドルの利益というが実際は1億ドルの赤字。チェンジオーダーは5,880万ドルとなったのに売上高は2,600万ドルだという。
これらについてRaytheonは業界でありがちなことと述べている。確かにそのような一面もないではないが、Raytheonのエンジニアリング部門特有の問題も考えられる。すなわちRECは防衛・エレクトロニクスという利益率の高いRayTheonコア事業に対してノンコアとしてモラルダウンが噂されてきた事業だ。そして長らく赤字のRECを抱えることのできた大企業RayTheonだ。適切な経営がなされて来なかった咎めとも考えられる。
このように財政的にはREC統合はマイナスが多いが、電力をはじめ事業としては魅力あるものが少なくないという。フィリピンのダムなど赤字PJの中にもあるという。さらにスタッフの統合は極めてうまく行っているという。旧RECのメンバーのRaytheonでは得られなかった住み心地の良さによる新生WGIの一員としてのモラールアップ、それに対応した旧MKメンバーの我が社意識向上があるという。Fluorをはじめとする業界ベテラン幹部の登用も力として期待できる。
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Jacobsはこのほど、海外建設市場におけるインフラ能力強化のため、米国内外で活躍しているエンジニアリングコンサルティング企業LawGibbグループの国際部門Gibbを買収することとなった。
Gibbはロンドン本社で英国・欧州中心に、中東、アジア(東京・シンガポール)で活動しており、年商1億ドル。分野は輸送、土木・構造、水・廃水、建築、情報、防衛などJacobsの海外インフラ展開に最適な企業である。現在内定段階で、精査・当局の認可などを経て今年半ばには実現を見込んでいる。
LawGibbは20世紀初頭にLaw氏により設立された歴史のある中堅のデザインファームで、1989年に英国のGibbを買収、国際企業となった。ただしグループ本社名をLawGibbとしたのは、1999年になってからだ。国際部門の売却理由は明らかでないが、再び米国国内企業に戻ることになる。
Jacobsのプロセス分野の海外展開はStorkのEC事業の買収で行われている。既報の通り、これは2段階で行われ、昨年2月の第1段階に続いて、このほどオランダ中東の2企業の統合という第2段階が終了、5000人の欧州規模となった。同社の戦略は事業を各社の国内市場に展開するものでmultidomestic Strategyと呼んでいる。
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Suezの3月の企業動向はめまぐるしかった。初頭にはSuezが工業ガスのメジャー企業Air Liquideへの買収提案と拒否されたことが明らかとなった。下旬にはグループ名からLyonnaise des Eauxをとり、水事業を新名称Ondeoとすることを発表にした。
Suezは昨年ドイツ電力ユーティリティ企業Eonとの合併が頓挫したのち、新たな展開をもとめAirLiquide買収を仕掛けたもので、新設の工業サービス事業の強化とめざしたと見られるが、規模的に株主価値で360億ユーロの企業が140億ユーロの企業を買収する大型すぎるとして市場からは不評であった。Air Liquideは2000年の業績はきわめて好調であり、買収提案は株主利益にならないとして、この提案を拒否した。
Suezへの改名は国際的に通用するブランドとするためだ。Suezの水以外の事業は電力・衛生・通信である。通信では第3世代携帯から撤退しており、電力とともに方向性がいまだ明確でない。
水部門Ondeoは130国1.1億人にサービスする世界最大級の企業だ。4つに分けており、Ondeo Services(水道事業、旧Lyonnaise des Eaux、ただしフランスだけは旧名称)、Ondeo Nalco(水処理)、Ondeo Degremont(エンジニアリング)、Ondeo Indusrial Solution(水関連マネジメントの提供)の4社だ。
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クリーン燃料とクリーン燃料製油所の増大が見込まれ、新しい脱硫技術はキーテクノロジーだ。BPとフランスのIFPはBPのガソリン脱硫技術OATSの商品化を目的にアライアンスを組んだ。またW.R.GraceはChevronと共同で水素化プロセス用の触媒を開発するためAdvanced Refining Technologies (ART)を設立した。
BPによるとOATS技術は、FCCガソリンの脱硫のための進化した方法で、10ppmまでにできる。オクタン価の減少も少なく、かつ水素の消費量も少ない。全てのガソリンの脱硫プロセスのなかでマージンロスが最低だという。IFPは今後のOATSの今後の開発を引き受ける。プロセスのパイロットテストを行い、技術の独占ライセンサーとなる。最初の商業化プラントの操業は2003年を見込んでいる。
ARTはGraceの触媒事業部門DavisonとChevron Productsとが設立し3月からスタートしている。ARTは残渣油の改質、軽油などの水素化処理、水素化分解などの触媒に使われる。この触媒は石油の脱硫、その他不純物の除去に用いるので、クリーン燃料対応として、成長製品として期待されている。GraceはChevronは触媒ならびにプロセス技術のリーダーとしてパートナーを組んだものであり、従来の関係の延長という。