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大成建設、商業施設コンサルティング機能を強化

ゼネコン・エンジニアリング部門の新展開

 大成建設エンジニアリング本部は、大規模小売店舗立地法(大店立地法)の施行を受けて、同法に基づく立地コンサルティング機能を強化、同事業を積極的に展開していく。ゼネコンエンジニアリング部門にとって、新たな市場ニーズが立ち上がってきているようだ。

法改正で新たなコンサル需要

 大店立地法は、昨年6月に改正され、2月1日から施行された。同法では、床面積1,000u以上の小売店が新規に立地する際に交通環境や騒音・振動、廃棄物処理など、周辺への影響を評価することが義務付けられている。従来の大店法が営業時間や年間休日数など、周辺の小売店を保護することを目的としていたのに対し、大店立地法では周辺環境の保護を主眼としているところが、大きな変更点だ。  また、従来の大店法の場合、対象となる店舗が出店する際のコンサルティングは、主にマーケティングの専門会社が実施することが多かった。しかし、今度の大店立地法では、交通予測や騒音・振動の影響評価といった技術調査が重要となるため、マーケティング専門会社では対応しきれないところも出てくる。「大店立地法が成立して以来、コンサルティングへの要望が多く寄せられるようになった」(大成建設エンジニアリング本部技術グループ)。  商業施設の新規立地における技術調査への比重が高まったことが、商業施設のコンサルティング、マーケティング構造の変革を促している。その新たな担い手として、ゼネコンのエンジニアリング部門が浮上してきた。

コンサルから建築まで対応

 同社の大店立地法コンサルティング事業における要素技術は、交通予測技術と騒音予測技術の二つ。同社は、これまでの100件以上の交通解析の実績を基に、施設開発に伴う交通需要予測から周辺道路の混雑状況の評価からアクセスルートや駐車場台数の提案までの交通計画全般を手がける。特に予測ツールとして人口・世帯数のメッシュデータと交通ネットワークデータを組み合わせた方面別交通量予測技術「TALK」を開発した。  また、騒音・振動予測では、工事現場における騒音・振動防止対策で活用していたシステムを大店立地法に適用し「TANS」というシステムにまとめた。これを使って、荷捌作業、構内自動車通行、営業宣伝、給排気や冷却塔などのあらゆる発生源からの騒音解析を行い、施設計画に反映していく。  さらに、廃棄物処理に関しては、エコロジー本部との連携で廃棄物の収集・保管・処理システムも提案していく方針だ。  エンジニアリング本部では、これらのシステムによって、コンサルティング業務期間を従来の約半分に短縮できるとしており、それによって開店までの期間も短縮。トータルコストを低減することをアピールしていく。また、施設計画や採算性など事業計画、さらには施設建設まで、全社の機能を連携させて総合的な体制でニーズに対応していく。  大成建設では、既に7つの案件に着手しており、そのうち2案件については昨年に届け出を完了した。大店立地法の対象が床面積1,000uと比較的小さいことから、交通や騒音の専門スタッフのいない出店希望者が多いと見ており、大規模店舗から中小規模店舗まで積極的に営業を展開していく考えだ。将来的には10億円コンサルティング・フィーを積み上げられるまでに拡大していきたいとしている。