さらなる再編へ向かう製鉄プラント事業
MHI-日立につづきNKK、住重、日造が事業統合へ
NKK、住友重機械工業、日立造船の3社は、各社の製鉄プラント事業の統合を目指して動き出した。昨年10月に発足したMHI−日立製鉄機械につづく製鉄プラント分野の再編である。特に今回は、鉄鋼業も含めた再編である点が注目される。極めて厳しい事業環境のなかで、鉄鋼のプラント部隊といえども製鉄プラント事業が単独で生き残っていくことはできないことは明らかであり、今後も鉄鋼と重機メーカーの枠を超えた再編が予想される。
2003年3月の統合を目指す
2月6日、NKKと住友重機械工業、日立造船の3社は各社が保有する製鉄プラント事業の統合を目指して、広範囲の提携を進めていくことで合意した、と発表した。まず、3社の共同出資によって今年3月に各社の営業部門を集約した販売会社を設立する。
かつて、製鉄プラントの世界市場は年間1兆円を突破したこともあったが、1999年では6,000億円程度と約半分にまで縮小している。しかも、欧米の製鉄プラントメーカーは統合再編を繰り返し、米国では総合製鉄プラントメーカーが消え、欧州も独SMS(シュレーマン・マンネスマン・ジマーグ)、オーストリアのフェスト・アルピネ、イタリアのダニエリの3強に集約された。この3強がユーロ安という追い風にも乗って、全世界の市場を席巻しつつある。昨年のMHI−日立、今回の3社による事業統合は、世界市場での生き残りをかけた再編の動きといえる。
3社による販売会社は資本金2億円、出資比率はNKKが34%、住友重機械工業と日立造船がそれぞれ33%。社名は未定だが、社長はNKKから選出される予定だ。従業員は約30名、年間受注高約300億円を目指す。
この販売会社を核として、3社は計画・設計技術の相互活用と、研究開発および調達面での協力、設備診断、操業の支援を進め、2003年3月までには製造も含めた事業統合へと発展させていく考えだ。
さらなるアライアンスも
NKKは製銑、製鋼、鋼板プロセスライン、条鋼圧延まで一貫した設備を手掛けており、特に電気炉は高く評価されている。住友重機械工業は、連続鋳造設備やスキンパスミル、テンションレベラー、棒鋼・線材圧延機などのメニューを持つ。日立造船もシンタープラント、ペレタイジング設備、連続鋳造設備、形鋼圧延機などを提供してきており、特に連続鋳造設備の評価は高い。
この3社が統合することで、製鉄プロセスの上流から下流まで、鋼板圧延プロセスを除けば殆ど一貫した品揃えとなる。特に、NKKがグループに入ることで、高炉メーカーとしてのソフトが使えることから、操業ノウハウを含む設備ニーズにも対応できるようになるのが一つの武器となる。また世界最強の製鉄プラントメーカーであるSMSも鋼板圧延プロセス以外の分野はそれほど高い競争力があるわけではないので、十分に競争していける、と見通している。
新会社は国内市場も対象としているので、NKKにとっては国内の他の高炉メーカー向けに事業を拡大するチャンスでもある。
一方、連続鋳造設備は住重と日造でメニューが重なっている。「両社の技術を持ち寄ることでアップグレーディングさせていきたい」(日立造船機会事業本部長 若林勝氏)。また、住友重機械の中厚スラブ連鋳設備(QSPプロセス)は住友金属との共同開発であり、これまで同社と共同でプロジェクトに対応してきた。「QSPに関しては今後、3社グループと住友金属との関係を維持していく形になる」(住友重機械工業機械事業本部長 高瀬孔平氏)。
3社のメニューにない鋼板圧延プロセスに対しては「今後、コンソーシアムやアライアンスの可能性がある」(NKKプラントエンジニアリング本部長 藤原義之氏)としており、圧延メーカーが3社グループに参加する可能性も示唆した。
ただ、受注規模300億円というのはSMSのせいぜい15%程度に過ぎず、その差は依然として大きい。製鉄機械はゆっくりと進化する。それに対応するには技術の温存が重要であり、まず生き残っていかなければならない。それが再編を促しているのだが、日本が欧州3強に本格的に対抗していくためには、さらなる再編は必至だ。
既に、他の製鉄プラントメーカーも高炉メーカーも、従来の枠を超えたアライアンスを模索している。製鉄プラント業界の再編は始まったばかりだといえる。