ENB誌恒例のインターナショナルランキング(Contractor上位225社、Design Firm上位200社)が発表された。本欄で既に述べたように、EPCやDesign-BuidのEngineering、DesignポーションをDesign Firmランキングに報告するため、Contarctorランキングは建設ビジネス、Design Firmランキングは設計ビジネスのランキングとなっている。なお、ここでは設計とはEngineeringを含むDesignの訳語として使う。従ってエンジニアリングコントラクターの動向は両ランキングをあわせて見る必要がある。また、ランキングの基準は1999年の売上高で、インターナショナルとは各社の本社以外の国を指す。 [売上・受注動向] 海外売上高は建設・設計・合計とも前年比1〜2%増、アジア・中南米経済危機以来の停滞から十分な回復を見せていない。国内売上高は建設が米国を除いて市場が低迷していることを反映して微増となったが、設計は市場の大きい米国市場の好調を反映し、全体でも5%台の成長となった。建設受注高は海外が大きく2桁成長、合計でも7%の成長となった。受注についてはこの記事の内容からは好調な原因はつかめないが、99年に実施された欧州企業の米国企業合併による受注が海外受注にカウントされることもあると思われる。いずれにせよ、受注ベースでは世界のエンジニアリング建設市場は回復に向かっているものと見られる。 [地域別動向] アジア市場は建設・合計では1桁の減少だが、設計では増加に転じており、回復基調がうかがえる。国としては中国は石油関連PJもあり、いぜん期待市場という。インドは市場としても期待できるが、具体化にはビューロクラシーが時間をとらせる。 中東・アフリカはいずれも減少となっている。中南米は建設微増、設計微減となっている。これら地域には売上ベースでは高原油価格の影響がでていない。しかし、ようやく世界的に石油・石油化学投資、産油国のインフラ投資が動きはじめている。 欧州市場は建設が2桁増に対して、設計が2桁減となっている。EU、旧ソ連・東欧などかなり状況が異なるが、全般的にいえば、低迷していることの反映であろう。一方、北米市場は米国経済の好調を反映して好調に推移している。 [市場別動向] 一般建築は好調に推移している。工業関連では製造業が建設・設計とも大きく減少したのに対し、プロセス産業が大きく増加している。これはプロセス産業に含まれる薬品・バイオ関連の好調を反映しているものと見られる。石油関連(オフショア・石油精製・石油化学)は建設・設計とも1桁減となっている。原油価格高騰は投資にあまりつながらないとの見方があったものの、前述したように原油価格高騰の影響も徐々にでている。 インフラ関連では、下水道廃棄物が建設・設計とも増加したが、水供給・交通施設は建設減、設計増となり全体減、有害廃棄物は設計減により全体減、電力は建設増、設計減で全体で微増に終った。インフラの展望としては、電力は望めず、水供給・下水道、通信が期待できるという。この動向はアジア・中東・アフリカなど世界的な動きである。インフラの民営化が世界的に論議されており、資金調達手段としてもアジアなどで検討されている。 [国籍別] 米国企業は建設・設計とも微増した。カナダは大きく減少したが、これはAGRAのAMECによる買収に見るようなカナダ企業の再編によるところが大きい。 欧州企業は全体としては建設・設計とも大きく伸びたが、国別には大いに異なる。成長したのは英国企業である。それに対して、ドイツ・イタリア・オランダ企業は減少、フランスは微増した。 日本企業は建設・設計とも大きく減少した。建設では前年14%あったシェアが10%を割るにいたった。韓国は建設・設計とも40%・30%と大きく減少した。韓国企業は少なくとも売上高では低迷したことがうかがえる。一方、上昇著しいのは中国企業である。建設・設計とも2桁の伸びであった。 [新たな経営戦略] かつて海外プロジェクトは本社でマネージできたが、現在では現地化(go local)が必要となっている。欧州企業の米国企業買収が目立つが、現地化の一例だ。M&Aは現地化の手段となっている。現地企業とのパートナリングもある。人を含むリソースの調達が本社から減り、現地が増加している。 インドは良質でコストが安いことからエンジニアの供給基地として重要となっている。 景気循環的でリスクの高いエンジニアリングビジネスの影響を低めることもあって、ファシリティマネジメントやアウトソーシングへの進出が欧米企業で目立っている。 [企業別動向] Bechtelの1999年ランキングが海外建設売上高、建設受注高、内外合計設計売上高、海外建設設計売上高でトップ、海外設計売上高で2位、内外合計建設売上高で5位となるも、設計を併せた内外建設設計売上高では2位と好調が目立つ。内外合計建設売上高では例年のとおり、日本のゼネコンが強く、大成建設が1位などベストテン中5社を占める。最近、フランスのVinciとGTMが合併することとなったが、両社をあわせると内外合計建設売上高、内外建設設計売上高で日本企業を抜き、トップとなる。AMECはAGRAとの合併により、海外設計売上高のトップとなった。また昨年、大合併したURSは内外合計設計売上高の2位となっている。 日揮は海外建設売上高で18位、海外設計売上高で15位、あわせた海外売上高で17位となった。東洋エンジニアリングは海外建設設計売上高で24位、千代田化工は37位。韓国企業では現代建設が19位、中国建筑工程総公司が20位となっている。 |