次世代のクリーン燃料として期待のかかるジメチルエーテル(DME)。従来法に比べて低コストで生産できる直接合成法の実用化のめどがたってきたことで最近、急速に脚光を浴びはじめている。そのなかで、産学が集まってDME実用化に向けた情報交換および啓蒙普及を図る「DMEフォーラム」が9月4日、正式に発足した。47の企業・団体および24人の学者・研究者などが参加した同フォーラムの始動によって、産学連携の推進母体が誕生したことになる。2010年には世界で4,000億円市場に成長するとも言われるDMEへの期待の高さを示した。 ●生産から消費まで利用を促進 今回設立された「DMEフォーラム」は、今後増大するものと予想されているDME市場に的確に対応するために、その生産から消費に至る全てを網羅する利用促進組織を目指す。既に欧米では、同様の組織体制の整備が進められており、日本でもニーズが高まっているのに対応したものである。 フォーラムは東京大学・藤本薫教授が会長となり、事務局は東京・港区の石炭利用総合センター内に置く。メンバーはガス事業者、化学メーカー、プラントメーカー、エンジニアリング会社、商社、自動車メーカー、輸送会社など幅広い業種から47の企業・団体が参加。加えて、学界からも東京大学をはじめとする大学、各種研究機関などから24人の参加を得て、産学協同で利用促進のための情報交換や普及促進を進めていく。今後の活動としては、国際ワークショップの開催や実用化・普及を目指した調査・研究開発、機関紙の発行などを行っていく計画で、海外の組織とも連携した国際的な活動を展開していく考えだ。 DMEは、燃焼時に硫黄酸化物やススを全く発生しない。これは他のアルコール系燃料と同じだが、DMEの場合セタン価が高く、唯一ディーゼルエンジンに使用できるのが大きな特徴である。そのため、トラックなどの煤塵による環境汚染に対して、極めて有効な燃料として期待されている。 DMEが最近になって急速に脚光を浴びるようになってきたのは、NKKなどが原料ガスから直接合成できるプロセスを開発、その実用化にめどがたってきたためだ。従来、DMEは天然ガスからまずメタノールを製造、さらにメタノールの脱水反応でつくるという2段階のプロセスで製造されていたが、これではコストがかかるため燃料としての使用は経済的に無理があった。しかし、直接製造できるようになってきたことで、クリーン燃料としての可能性が高まった。また、燃料電池用燃料の第一候補であったメタノールは、毒性が強いため移動体用の燃料としては危険という認識が高まっており、毒性のないDMEはこの面でも優位性を持つようになっている。 現在、国内でDMEの直接合成プロセスを保有しているのは、NKK〜太平洋炭礦〜住友金属〜石炭利用総合センターと、三菱ガス化学の2グループ。三菱ガス化学はオーストラリアでのプラント建設を狙っているという。また、海外ではエアプロダクツ&ケミカルズやBPアモコなども直接合成プロセスの開発を進めている。 ●2010年、4,000億円市場に成長 DMEは天然ガス、コールベッドメタン、バイオ発酵メタンなどを使用でき、しかもこれまで有効活用されていなかった中小規模の天然ガス田を活用できる。さらに、IGCCで得られる石炭ガス化ガスからも合成できるなど、立地を選ばないのも有望視される理由だ。このため、アジア各地でのプラント建設が期待されており、自動車燃料だけでなく発電用燃料としても採用されるようになり、年間3,000万トンが流通。DMEプラント市場と製品市場を合わせ、2010年には4,000億円市場に成長すると見る向きもある。流通インフラとしては、既存のLPG関連施設で対応できるため、LPG業界も注目している。 なお、通産省でも今年4月に「DME戦略研究会」を発足させており、近く報告書をまとめる予定という。次世代燃料としてのDMEに加速がつきそうだ。 |