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CCT、課題は高効率化から低コスト化へ
クリーンコールデー国際講演会で明確化



 クリーンコールテクノロジー(CCT)の開発・普及促進を狙いに、毎年開催されているクリーン・コール・デー国際講演会が9月5日、東京プリンスホテルで開催された。化石燃料のなかでもCO2排出量が最も多く、燃焼に伴って窒素酸化物、硫黄酸化物、煤塵を発生する石炭の利用は、温暖化対策のなかで選択され難い資源となりつつある。しかし、全世界に存在し価格も安価な石炭は、資源制約の面からは今後も使用されることが望ましい。これを解決するのがCCTであり、その実用化と普及が石炭利用のカギを握っている。だが、世界的に天然ガスのインフラ整備が進んでいる状況のなかでは、CCTといえどもコスト競争力が問われることになる。

●2030年にゼロエミッション化
 通産省は、昨年12月に石炭利用技術戦略を策定したが、今回の講演会ではその詳細が資源エネルギー庁石炭・新エネルギー部・沖茂部長から紹介された。
 環境負荷を低減する石炭利用技術の開発を目的としたこの戦略では、開発目標を3段階に分けて設定している。@2000〜2010年までを“高効率化第2世代”として、まずCO2排出量を20%削減、SOx、NOxに関してはいずれも10ppm以下に抑制する。A2010〜2020年までは“高効率ハイブリッド世代”として、石炭からの輸送燃料化技術および化学原料化技術の実現を目指す。具体的には、石炭ガス化複合発電(IGCC)、水素製造、DME(ジメチルエーテル)などの実用化時期としている。更に、B2020〜2030年は“ゼロエミッション世代”と位置付けている。この時期に石油供給がタイト化し、本格的な水素時代が到来するものと予測し、水素製造をコアとしたCO2フリーの技術開発を実現するという。
 この戦略のなかで、大きな位置を占めている技術が石炭ガス化と石炭利用水素製造の二つ。石炭ガス化技術は、実用化できればコンバインドサイクル発電が可能となり、熱効率が飛躍的に向上する。さらに、石炭ガス化ガスを燃料電池の燃料とした上でコンバインドサイクル発電を行うトリプルコンバインドサイクル発電構想も進められている。また、石炭ガス化ガスを原料として、DMEを製造することも可能であるなど、その用途は幅広い。既に、石炭ガス化燃料電池複合発電(IGFC)は、電源開発などが若松事業所で総額164億円規模の“EAGLEプロジェクト”として進めている。これが実現すると、発電効率は現在の最新の石炭火力で実現している42%から、一気に55%にまで高まり、CO2は31%削減される。
 もう一つの石炭利用水素製造技術については、資源環境技術総合研究所および石炭利用総合センター(CCUJ)が主体となって“石炭利用CO2回収型水素製造技術(HyPr-RING)”として進めているものがある。これは、従来の石炭による水素製造プロセスに対し、約10倍の水素ガス製造能力を持つもの。しかも得られる水素ガスの濃度は、従来法の30%から80%に高まり、精製工程なしに水素ガスの利用が可能という。また、CO2も高濃度で回収でき、有効利用を図ることもできる。開発は2007年度まで約31億円をかけて行われるもので、2004年度には小型実験プラントが完成、試験が開始される見込みだ。
 一方、米国でもエネルギー省(DOE)が中心となってCCTの開発に努めている。IGCCをはじめ、流動床ボイラシステム、SOxおよびNOx制御技術、選炭技術などがあり、これらの技術をベースに“ビジョン21複合発電設備”プログラムを進めている。現在のところ研究段階であり、プロセスの詳細は不明だが、燃料電池や石炭転換システム、ガス化技術などを組み合わせたもので、さらにCO2隔離技術もそこには含まれる。  これらの技術開発は極めて意欲的なものであり、実用化されれば、「今後、選択されにくくなる」といわれている石炭でも、障壁はかなり低くなるだろう。

●CCTはCDMで具体化?
 「石炭の需要は今後とも順調に伸びる。しかし、それは石油やガスに比べてれば、ゆっくりしたものになる」(IEA/オリバー・アペル氏)。IEAでは、今年11月に世界エネルギー展望(WEO2000)を出版する。今回の講演会では、その内容が紹介された。それによると、2020年までのエネルギー需要は年率2%程度の伸びが予想される。エネルギー資源別では、石油が依然として主力エネルギーの位置を占め、中東依存度が高まる。また、ガスも重要性が高まり、石炭も増加はするものの、2015年にはガス需要が石炭需要を上回るものと予測している。「石炭からガスへの転換が進む」(同)。そのため、CCTはガスコンバインドサイクル発電との競合にさらされることになる。だが、現状でCCTはコスト面で競争できない状況にある。「IGCCが実現したとしても、コスト面では太刀打ちできない」(同)。同氏は、IGCCがコスト競争力を持つのは2015年以降になるとみているが、それもOECD国内という。しかもその時点では天然ガスの需要が石炭需要を上回っていることになり、CCTの実現は怪しくなってくる。
 また、石炭の増加は殆どが非OECD諸国内のもの。特に中国とインドが大きなシェアを占めることになる。そのため、コスト高となるCCT発電システムはより選択されにくいということになる。

●CCTで外資導入を図る中国
 当事者である中国では、「今後50年間にわたり石炭は中国の1次エネルギーの50%を占める」(中国国家経済貿易委員会/柏然氏)。しかも、エネルギー効率が非常に悪いため、環境汚染が深刻な状況が続いているという。
 その中国でのCCT戦略は、まず第1に原炭の選炭比率を向上させること。次に高効率燃焼技術の導入・普及により石炭の利用効率を高める。石炭加工利用過程での環境保全設備を強化して汚染物質の排出を抑制する―などが主眼となっている。つまり、消費される石炭の質の向上と利用効率の向上、そして汚染物質の抑制が当面の問題なのであり、IGCCのようなハイテクノロジーは求められていない。ただ、日本ではニーズのない石炭液化に関しては「今後2年以内に1〜2カ所で石炭液化商業モデル工場の建設プロジェクトを開始したい」(同)としている。既に、NEDOを通じて依蘭炭および神華炭を対象として、FS調査を実施している。
 来年度からの10次5カ年計画でも、CCTは大きな比重を占めている。だが、CCTを中国で推進するには海外との協力が不可欠。まず、大型石炭ガス化や液化、排煙脱硫など大型でしかも最先端のCCTの導入は先進国から技術を導入し、モデル工場を作っていく必要がある。一方、既存技術でも先進的なボイラ技術などは海外から製造技術を提供し、合作の形で普及させていく必要がある。さらに、「国際基金や無償援助など資金協力が必要だ。中国はこれからの10年間でCCTを普及させるために約5,200億元の資金が必要となるとされている。海外の企業による直接投資を含む外資導入が必要だ」(同)。外資導入によるCCTの普及にも道筋をつけていこうという考えだ。
 今後、多くの石炭を消費していく中国やインドにCCTを導入・普及させていくことが温暖化対策の重要なポイントである。この面から見ると、CCTの最大の課題は高効率化ばかりでなく、早期に低コスト化を実現させることだと言えるだろう。
 「CCTのチャンスはクリーン開発メカニズム(CDM)にある」(アペル氏)。