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米国内建設市場は好調、しかし慎重なムード
―99年の米国内建設ビジネスも2桁の伸び―



 デザインファームに続いて、恒例のENR誌のコントラクター400社ランキング(Top400)が発表された。それによると、1999年の400社の建設売上高合計は1,748億7,000万ドル、前年の1,581億3,000万ドルの12.0%増と既報したエンジニアリング売上高と同じく12%台の伸びとなった。この伸びはエンジニアリングと同じく国内の伸びによるもので、米国国内が1,177億3,000万ドルから1,452億2,000万ドル、13.7%増となったのに対し、海外は284億ドルから4.2%増の296億ドルにとどまった。新規受注は1,924億ドル11.7%増、米国国内は1,658億ドル14.9%増と大きく伸びたが、海外は267億ドル、4.3%減となった。
 このランキングは米国コントラクターの1999年の建設関連売上高をアンケート調査により、上位400社を集計したもの。CMのうち、ゼネラルコントラクターと同様なリスクを負う“at risk”契約はこれに含まれる。また、設計建設(デザイン・ビルドやEPC)契約は従来、すべてこれに含まれていたが、一昨年発表分から建設部分ないしCM部分となった。さらに機器調達はコントラクターの責任範囲になる場合、これに含まれる。エンジニアリングビジネスと対比した建設関連ビジネスのランキングとしての性格を持っている。すなわち、一昨年以前はEPCプロジェクトの多いエンジニアリングコントラクターはコントラクターのランキングで比較できたが、現在はエンジニアリング・建設両ランキングをあわせて比較する必要がある。

[米国市場の動向]
 国内市場別には石油が9.8%減の70億ドル、製造業が2.6%減の76億ドル、装置産業が1.9%減の95億ドルの3分野が減少となったが、他の多くの分野で2桁の伸びを示した。最大の伸びは電力で74.9%増の47億ドル、一般建築が15%増の827億ドルで最大のシェア、交通が12.7%増の181億ドル、有害廃棄物が12.9%増の49億ドル、下水・廃棄物処理が16.4%増の24億ドル、水供給が14.1%増の17億ドルであった。産業関連3分野が減少となった事はエンジニアリングコントラクターにとって必ずしも順調な年とはいえない。
 電力市場は規制撤廃による需要増が期待されながら長らく低迷していたものが、本年は一気に爆発したものだ。2005年頃まで長期に続くと期待されている。マージンは大きくないが、かつてより良くなっているという評価もあるものの、競争は厳しいという。Bechtelは、この分野は「コモディティ市場」である。ガスタービンメーカーは価格が急上昇しており、タービンや機器がコストの大半を占める。コントラクターの付加価値は少ないと指摘する。同社は大型プラントや自社の保有技術を使うプラントを選ぶという。
 急上昇したもう一つの市場は半導体プラントだ。ハイテクブームは規則的ではないが、期待はできるとみており、「津波」のように急速かつ大きいという。メモリーチップ・フラッシュメモリー・マイクロプロセッサーのいずれもブームとなった。医薬品もプロセス市場(装置産業)で依然、「輝いている分野」となっている。研究施設・製造施設とも好調であり、M&Aなどにより、この分野に展開している企業も多い。金属市場は全体としてははっきりしない市場であるが、アルミ分野にブームが見られる。問題は投資が米国国内か海外か未定ということだという。セメント市場はブームだが、マージンが低いという。一般建築市場もブームだが、各コントラクターは警戒感を抱いている。受注残は十分で、2年間の反映は保証されているが、その先が不安という。経済が2000年はフラット、その先はマイナスと予測されている。また、現在はいずれの建築各分野とも好調だが、今後の低迷が予測される分野があるからだと言われる。

[企業動向]
 ランキングのトップはBechtelで、Bechtelは本年はエンジニアリング・建設双方を制し、米国エンジニアリング建設業界のトップとなった。続いてFluor Daniel、Kellogg B&Rとなった。トップ10にはEC企業は上記3社に加えて、8位にFoster Wheelerがはいっている。なお後述の2つの大企業合併各2社の合計はいずれもトップ10に入る。残りの6社が建設専業のコントラクターとなるが、この半数の3社が海外系となっている。昨年以降の動きでは、4位のTurnerがドイツのHochtiefの傘下に、9位のBovisがオーストラリアのLend Leasに合併された。6位のSkanska、さらに11位にドイツHolzmann傘下のJ.A.Jonesと海外企業の米国市場参入の動きとして注目されるが、買収された米国企業側にも海外展開・海外顧客獲得(例:TurnerがDaimler-Chryslerに入る)などのメリットも大きい。
 市場の奪い合いから、M&Aの嵐が巻き起こっている。合併被合併企業双方にとり、地域・または分野で補完的であり、一流の人材を確保できることが重要という。もっともすべての企業がM&Aモードにあるわけではない。例えば、これまで積極的なM&Aで成長してきた環境のIT Groupの新経営戦略は既存ビジネスの利益性向上だという。
 最近における2つの最大級の合併、危機に瀕したRaytheon E&C(REC)のMorrison Knudsen(MK)による合併、Stone&Webster(SW)のJacobs Engineering Group Corp.(JEC)による合併は本欄でも紹介した。SWは自己破産してJECが買収ということを4月初めに発表したが、4月末に破産裁判所に申請したという。同業企業にとって永年、尊敬すべき企業であったSWが消滅することは残念とみられている。RECやSWの破綻は電力分野の競争が厳しく、低価格・リスクシフトという状況にあり、しかもミスがトラブルに結びつくタフなビジネスで、かつてのコストリインバーサブルなビジネスではないという。
 JECがSWを買収することはJECの電力分野への進出を意味する。このことに関してJECのCFO(財務統括役員)は次のように述べているという。「JECは電力分野進出をためらってきた。それは電力プラントのコントラクトビジネスが巨大な損失の歴史であるからだ。われわれは巨大なコントラクトビジネスの基礎となる層をみている。ここに国内でリインバーサブルである多くの仕事があり、これがJECの目指す分野だ」という。ENR誌の別号でJECの社長兼CEOもほぼ同様なことを述べており、JECが電力分野でどのようなビジネスモデルを選択するか注目される。
 デザインビルドの増加はサブコントラクターの重要性が増している。建築が機器・電気主導になり、複雑なエアシステムなど要求が多くなっているという。従来のオーナー・デザイナー・ゼネラルコントラクターの3本足からこれにサブコントラクターを加えた4本足の椅子になっているという。