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99年度海外プラント成約、3年連続の減少
成約額は90年代最低水準の80.4億ドルに



 通産省機械情報産業局国際プラント推進室がまとめた「1999年度の海外プラント成約実績」によると我が国企業の海外向けプラントの成約実績は573件、80.4億ドル(対前年度比15.2%減)で件数、成約額とも90年代に入って最低水準だった98年度実績(805件、94.8億ドル)をさらに下回った。この結果、海外プラント成約額は97年度以降、3年連続の減少となり、世界的な案件数減少による受注競争の激化などに悩む我が国プラント/エンジニアリング業界の実態を反映する内容となった。ただ、我が国の主力市場であるアジア経済が急速な回復を見せ、これまで延期や凍結されていた案件が動き出し始めるなど明るい兆しも見えてきたところから国際プラント推進室では、99年度を底に2000年度は回復に向かうとの判断を強めている。

●アジア地域向けが50%の大台割る
 99年度の我が国企業の海外向けプラント成約実績は上期28.4億ドル、下期51.9億ドルの合計80.4億ドル。上期に成約が見込まれていた大型案件の中に下期に成約がずれ込んだ案件があったため下期は5半期ぶりに50億ドル以上の水準を達成した。年度ベースで90年代最低となった主な要因として国際プラント推進室では、@アセアン地域の経済は全体的に回復の動きが見られるものの、同地域のプラント・プロジェクトに依然、凍結や延期されたままの案件がある、A欧米や韓国などの企業との間でファイナンスの組成を含む価格面、非価格面での競争が激化し、我が国企業の競争力が低下している―などを挙げている。
 仕向地別の動向を見るとブラジル向けの大型案件があったことなどから中南米向けが大幅に増加する一方、アジアや大洋州、その他地域向けの大幅な減少によって全体では成約件数、成約額の減少に繋がった。その中で我が国プラント輸出の中心であるアジア地域向けは依然、主力市場となっているものの件数(282件)、成約額(39.8億ドル)とも大幅に減少。海外向けプラント成約実績全体に占める成約額のシェアは98年度の53.5%から99年度は49.5%となり、90年代に入って初めて50%の大台を割り込んだ。
 これはマレーシア、シンガポール、台湾向けなどの成約額が大型案件の成約などを背景に増加したが、それ以上に中国やフィリピン、パキスタン向けなどが大幅に減少したことによる。特に国別シェアで97年度、98年度とトップを占めていた中国の成約額が97年の14.5億ドルから98年度9.9億ドル、99年3.9億ドルと激減し、順位を大きく下げている。アジア地域で成約した主要大型案件にはマレーシアのLNGプラント、シンガポールの石油化学プラント、コンバインドサイクル発電プラント、インドネシアの化学肥料プラント、LNGプラントなどが挙げられる。
 また、中近東は件数が98年度の41件から26件に減少したものの、サウジアラビアでの大型案件(化学プラント)の成約があったため成約額は98年度の5.1億ドルから5.4億ドルと僅かながら増加した。中南米も件数が98年度の151件から68件に大きく減少したが、ブラジルの大型案件(化学プラント、鉄鋼プラント)の成約が増えたこともあって成約額は98年度の7.8億ドルから13.1億ドルと大幅に増加した。
 大洋州ではオーストラリアで大型案件(発電プラント)を成約したが、その他が振るわず件数(6件)、成約額(3.5億ドル)とも大幅に減少。西欧は件数が98年度の75件から44件に大きく減少したものの、トルコの大型案件(発電プラント)の成約によって成約額が98年度の4.3億ドルから7.2億ドルに増加した。北米は米国で一般プラントの成約が大幅に減少、件数が98年度の127件から94件に減少した一方で、発電プラントの大型案件の成約があったため成約額では98年度の5.8億ドルから5.9億ドルに増加した。

●化学プラントは大型案件が増加
 分野別の動向では、化学プラントの成約額がやや増加したものの、その増加分以上に発電プラント、情報通信プラント、一般プラントの成約額が大幅に減少。発電プラントはコンバインドサイクル発電、石炭火力発電など大型案件を成約したが件数(85件)、成約額(25億ドル)ともに減少した。発電プラントでの1億ドル超の大型案件は8件、17.8億ドル。また、情報通信プラントはアジア、大洋州、中南米向けの件数、成約額が大幅に減少した結果、全体で件数(227件)、成約額(9.2億ドル)とも大幅に減少した。
 化学プラントは件数が98年度の58件から33件に大きく減少したが、LNG関連プラントを中心に大型案件が増えたため成約額は98年度の27.5億ドルから30億ドルへと増加。1億ドル超の化学プラントは98年度の6件、18.1億ドルから9件、26.9億ドルに増えている。鉄鋼プラントは件数(34件)が減少、成約額(4億ドル)はほぼ98年度並みとなったものの依然、低水準で推移。一般プラントは大型案件の減少や中国向けの大幅減少などによって全体でも件数(194件)、成約額(12.2億ドル)とも大幅に減少した。
 一方、海外調達率は化学プラントでの調達率が上がったが、発電プラントの調達率が大幅に下がったため全体では98年度の37.5%から34.2%に下がった。また、1億ドルを超える大型案件は発電プラント、化学プラントが大半を占めており、件数が19件と98年度と同水準だったものの成約額は98年度の51.3億ドルから47.1億ドルに減少した。