EnB11号目次へ


業績回復を図る造船重機
99年度決算で海外プラントの損失を一掃



 造船・重機大手6社の1999年度決算がまとまった。リストラに伴なう特別退職金の積み立て不足など、各社ともマイナス要因を多く抱えており、全般的には引き続き低迷した内容となった。しかし、日立造船が連結・単独ともに黒字化したほか、住友重機械工業も単独では過去最高の売上となり黒字を確保している。赤字の企業でも、その大きな要因の一つである海外向けの不採算プラント案件の損失を、99年度で一括して計上するなどの会計処理を行なうことで、2000年度には各社とも黒字化を図っており、回復に向けて着々と進んでいるようだ。

[石川島播磨重工業]
 陸上部門は連結決算で受注高6,474億円、売上高6,650億円。しかし114億円の営業損失を計上した。その要因はボイラプラント、セメントプラント、プレス機械などの海外工事で、仕様変更や調達の混乱から赤字工事が相次いだことにある。単体でもプラント部門は売上高、受注高ともに減少。特に受注高については、UAEのシャルジャセメントの受注などがあったが、ボイラ、タンク、環境などは減少。前年度比29.3%減の1,615億円にとどまった。陸上部門では今年度、連結で7,600億円、単独で5,300億円の受注を目指す。

[川崎重工業]
 連結のプラント関連部門では、環境装置でごみ焼却装置、ダイオキシン対策工事が増加、産機パワープラントも堅調ではあったものの、公共工事の減少で鉄鋼・機器関連が減少。プラントエンジニアリングの受注低迷により、一般機械部門全体では連結売上4,178億円で前期比181億円の減収となった。また単独では、プラントエンジニアリング部門は受注・売上ともやや増加したものの、機械・鉄構部門は大幅な減少となった。今年度受注は新設のガスタービン・機械部門で1,500億円、プラントエンジニアリング部門で2,100億円、機械・鉄構部門で1,000億円をそれぞれ目指す。

[住友重機械工業]
 連結では機械部門が製鉄機械、運搬機械、製紙機械の大型案件が激減し、売上げ高は前期比4%減の797億円となった。対して環境プラント部門はごみ焼却施設の受注やセメント向けIPPの完工などで前期比35%増の1,167億円となった。今期売上げは機械で600億円、環境・プラントで900億円といずれも減少の見通し。単独の受注では、機械部門が22.8%減の442億円、環境プラントは大型ごみ焼却設備の受注で34.9%増の647億円となった。今期は機械で500億円、環境・プラントで800億円の受注を目指している。

[日立造船]
 環境装置・プラント部門は環境装置分野での新規参入企業の増加による競争激化や、海外での需要低迷から連結売上高は1,788億円と前期を下回った。しかし、損益面ではスメドビック向けのセミサブリグの損失を既に前期に計上しているため120億円の増益となった。受注は1,410億円で、今期は1,950億円を目指す。単独では、ごみ焼却プラントは少なかったものの、排ガス高度処理設備を積み上げて1,078億円の受注となり、ほぼ横這い。今期受注目標は約1,500億円。

[三井造船]
 プラント部門の連結は、国内の投資低迷および海外の価格下落から厳しい状況。化学プラントおよび水処理設備、ごみ処理設備などで売上は1,341億円と前期の倍近い大幅な増加となったものの、営業損益は29.5億円の赤字。受注は選別受注を進めており454億円に留まった。機械部門に関しては事業用発電ボイラやガスタービン発電装置、造水装置などで売上高1,287億円となり、前期比26.8%の減少。営業利益は3.6億円。受注額は1,318億円となった。今期は、プラントで受注1,080億円、売上750億円、機械で受注1,600億円、売上1,400億円を予想している。

[三菱重工業]
 輸出工事の不採算案件を引きずる原動機部門は、連結売上高が海外大型プラントの引き渡しで7,398億円と増加したものの、営業利益は371億円の赤字となった。連結受注高では電力投資の抑制を受けて5.581億円にとどまった。今期は受注5,800億円、売上8,350億円を予想。機械部門でも売上高は海外向けプラントで6,732億円となったが営業利益は50億円の赤字。受注では2,850億円であった。今期は受注4,500億円、売上5,100億円を予想している。