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テキサコ、北海道陸上P/Lで事業化調査に着手
サハリン輸入ラインをJPDOと共同FS



 米テキサコはこのほど、北日本パイプライン開発機構(JPDO)と共同でサハリンの天然ガスをパイプラインで輸入し、稚内から苫東まで陸上を縦断する天然ガスパイプラインの事業化調査(FS)に着手した。北海道内での天然ガス供給を狙いとしたこの構想は、かねてからJPDOが事業化に向けて検討を重ねていたが、事業化は可能とみてFSの実施に踏み切った。この計画が実現すれば、これまで天然ガスの供給先が不透明であるため具体化に不安のあったサハリン開発を加速する可能性があるほか、停滞している苫東開発の再生にも寄与する。

●苫東でガス化学産業を集積
 JPDOが提唱するサハリン〜北海道パイプラインはコルサコフから宗谷海峡をわたり稚内に上陸、旭川、札幌を経て苫東へと抜ける陸上パイプライン計画。苫東までの区間はプロジェクト全体の第1段階として位置づけられており、第2段階では室蘭、函館を通って青森県のむつ小川原へ到達させる考えだ。
 従来、サハリンからの天然ガスパイプライン構想は、コルサコフから稚内、留萌の海岸沿いに海底パイプラインを通して札幌で上陸させるというものであった。しかし、このルートでは北海道内への天然ガス供給が極めて限定されてしまうことになる。しかも沿岸部を通すために想定される漁業補償の額が相当な規模となることも予想され、プロジェクトとしての経済性にも影響を与えるという恐れもある。
 そのためJPDOでは、サハリンからの安い天然ガスを北海道内各地に供給でき、道内の経済活性化に資することのできる陸上パイプライン計画の検討を進めてきた。JPDOの構想では幹線パイプラインに、いくつかの支線ラインを接続することで、小樽、帯広、釧路、根室、網走など道内主要地方都市にも天然ガスを供給、各地で分散型複合エネルギー供給施設整備を行なうとともに、出口である苫東にはガスをベースとしたガス化学産業を集積させることを考えている。これにより、国家プロジェクトしては失敗に終わっている苫東開発の再生にもつなげることができる。さらに、パイプラインに光ファーバー・ケーブルを併設することで、エネルギーおよび情報通信の動脈としていくことも考えている。

●都市ガスの3分の1の価格に?
 JPDOは、北海道経済文化同友会(PEC)が、サハリン天然ガス導入パイプラインの事業化立ち上げを目的として98年12月に設立したパイロット・カンパニー。設立以来、天然ガスパイプラインの経済性や課題などの検討を進めてきた。今年3月にはサハリンVのオペレータである米テキサコとプロジェクトの本格的事業化調査を共同実施することで合意。4月から稚内・宗谷地区、苫東地区で需要開発調査分析や事業実施計画策定作業を開始している。
 JPDOでは、この第1段階のパイプライン建設を社会資本整備事業として民間主導型官民協力プロジェクトの形で推進し、サハリン天然ガス開発の各グループが使用できるものとすることで井戸元開発の加速も狙っている。事業開始は2006年を予定しているが、約3,000億円という資金調達については今後の課題となる。しかし、需要がある程度現実的に見込めれば、インフラ整備は確実に進展する。テキサコでは「(条件さえ整えば)1m3あたり10円以下の価格で供給できる」と想定しているという。標準的な都市ガス価格の3分の1近い価格である。この驚異的な価格の持つインパクトは図り知れない。