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輸出低迷する鉄鋼5社エンジニアリング部門
99年度決算で明確化した製鉄プラントの凋落



 鉄鋼5社エンジニアリング部門の1999年度決算状況は、海外−特に製鉄プラントの低迷ぶりを如実に顕した。かつては鉄鋼業のエンジニアリング部門の花形であった製鉄プラントも、今や欧州、そして韓国の圧倒的な競争力の前で色褪せつつある。

●利益は改善傾向に
 鉄鋼5社エンジニアリング部門の99年度決算状況は、神戸製鋼が唯一受注額を伸ばしたほかは各社とも受注・売り上げを減少させた。その神戸製鋼も、加古川向けのごみ焼却設備の大型受注が増加に寄与したもので、エンジニアリングカンパニーは海外大型案件が受注できず、低迷を続けている。新日鉄でも、期待をかけていた特別円借款案件を失注するなど、海外の低迷が目立つ内容となった。
 売上高では全社が減少。住友金属では建築分野の需要低迷が要因としているが、全体的にはやはり海外の減少が大きく響いている。ただ、今回の受注・売り上げの減少は既に予想されていたものであることから、各社はコストダウンに積極的に取り組んでおり、その成果から収益は改善傾向にある。かねてから3桁の経常利益達成を目標としていた新日鉄では、調達コストの削減や固定費の圧縮により100億円超の利益を達成。98年度で赤字を計上していたNKKも黒字化した。川崎製鉄も収益が改善している。しかし、住友金属は若干の赤字となり、神戸製鋼も減益となった。

●環境分野も2000年度は予断許さず
 不調の海外案件でも、特に製鉄プラントの状況は深刻だ。各社が公表した海外の製鉄プラント受注案件はNKKのエレリ製鉄所向けEGL/クロムメッキラインと新日鉄のPOSCO向けCDQ設備の二つだけ。世界的に製鉄設備の需要が低迷しているなかで、欧州の製鉄プラントメーカーが合併で強大化しているほか、韓国がそのコスト競争力を存分に発揮しており、日本が受注できる案件は確実に減ってきている。製鉄プラントがエンジニアリング部門の花形であった時代は終わった。
 製鉄プラントに代わって、期待がかけられているのが環境プラント。住友金属はリサイクルプラントが好調に推移。新日鉄も昨年は溶融炉を3基受注した。しかし、2000年度に関しては神戸製鋼も加古川向けのような大型案件は期待できない。新日鉄も溶融炉の競争が激しくなることを予想しているなど、この分野も厳しさを増しそうだ。