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ベンダー業界主要企業アンケート調査
明るさ出始め、着実に回復軌道へ

 業界の景況は昨年と「横這い」と見る企業が全体の約8割を占め、2000年3月期は売上高、経常利益とも「増えた」と「減った」企業がほぼ拮抗し、二極化の傾向が目立つ。また、2001年3月期の計画は2000年3月期に比べ売上高、経常利益とも「増える」企業が圧倒的に多く、ベンダー業界にも明るい兆しが見え始めてきた―。これは小誌がベンダー業界の主要企業を対象に実施したアンケート調査(回答企業13社)の結果だ。我が国のプラント/エンジニアリング業界は、国内市場のユーザー業界再編や長期不況に伴う設備投資の低迷、海外市場での案件数の減少や競争激化などを背景に厳しい状況のもとに置かれている。だが、その中で調査結果を見る限りベンダー業界の景況は、着実に回復軌道に乗り始めてきたと言えよう。ただ、業種によって回答企業数にバラツキがあり、今回は業況が依然、厳しい業種の企業からの回答が大幅に減っている。一方、2001年3月期の重点施策では、新規分野、新規顧客の開拓や新製品の開発と並んでコストダウンを挙げる企業が多い。さらに既存分野の深耕や従来の客先の掘り起こしを挙げる企業もあり、売り上げ拡大に向けた積極的な施策が目立っている。

●売上高、経常利益とも増加基調に
 今回の調査では『貴社が関連する業界の業況』の設問で回答の選択肢を前回の「良い」「悪い」「横這い」から「良くなる」「悪くなる」「横這い」に変更し、業界自体の業況予測を調べてみた。それによると「横這い」と答えた企業が全体の77%を占め、「良くなる」15%、「悪くなる」8%。前回の調査(回答23社)で現在の業況が「悪い」と答えた企業が全体の78.3%(横這い21.7%)を占めたことを考えると、「悪い」状態での「横這い」とも読み取れる。
 だが、『貴社の2000年3月期の実績』では、99年3月期に比べ売上高が「増えた」46%「減った」46%、「横這い」8%で「増えた」企業と「減った」企業が同数となった。前回の調査結果の「減った」65%、「増えた」22%、「横這い」13%に比べて「減った」企業が減少、逆に「増えた」企業が増加している。売上高が「減った」企業が目に付くものの全体的には回復基調が窺われる。また、経常利益は「増えた」46%、「減った」39%、「横這い」15%の順。前回調査結果の「減った」70%、「増えた」22%、「横這い」8%に比べ大きく改善しており、売上高、経常利益とも回復基調にあると言えよう。このため「業界の景況」での「横這い」も前回の調査時点よりもある程度、改善された段階での「横這い」と見られる。
 2000年3月期で売上高が「増えた」理由は、「環境関連施設、特にごみ処理プラントの好調による」「半導体関連製品などの増加」など。「大型プロジェクトが寄与」や「大型物件の売り上げ予定が99年3月から99年4月〜5月にずれ込んだ」などの理由も挙げられ、対前期比約10%と2桁の売り上げアップを達成した企業もあった。一方、売上高が「減った」理由は「需要の減少」「客先の海外発注」「化学プラントの減少」など。「弊社の受注というよりも客先の受注量が減っていることの影響による」などベンダーならではの理由を挙げている企業もある。「横這い」では「国内の設備投資が減少し、東南アジアの設備投資についてはエンジニアリング企業が現地調達に移行している」を理由に挙げ、「日本は人件費が高い」ためと分析している。
 経常利益が「増えた」理由では「販売費、一般管理費の削減による」「大型物件の期ずれと販売管理費、特に人件費の削減効果」などリストラクチャリング(事業の再構築)の成果を挙げる企業が多い。その中には対前期比400%増の大幅な伸びを達成した企業や減収ながら同150%の増益となった企業も出ている。経常利益が「減った」理由には「海外大型プロジェクトのコスト増」「コスト競争の激化」などが挙げられている。
 前回の調査では、売上高が「減った」理由として「受注量の減少と価格低下」や「販売競争の激化による販売価格の低下」が最も多かったが、今回は価格低下がその要因とする回答は見られなかった。また、経常利益が「減った」理由でも前回の調査で挙げられた「大型プロジェクトの値引率の増加に伴う相対的なコストの悪化」や「建設設備業界の市況低迷に加え、エンジニアリング部門の赤字案件の一部売上計上」などの理由が姿を消している。

●強気の計画目立つ2001年3月期
 『貴社の2001年3月期の計画』では、2000年3月期に比べ売上高が「増える」と答えた企業が全体の83%を占め、「減る」「横這い」は各8.5%にとどまった。前回の調査結果の売上高が「減る」41%、「増える」36%、「横這い」23%の結果に比べ、強気の計画が目立っている。また、経常利益でも「増える」が75%に達し、「減る」17%、「横這い」8%となっており、前回調査の「増える」36%、「減る」32%、「横這い」32%に比べ、明るさが一段と鮮明になっている。これは2000年3月期で景況回復への手応えを掴んだ企業が積極姿勢に転じたためと見られ、回答の中にも売上高が「増える」理由に「2000年3月期が底であり、客先での受注量上昇の兆しがある」を挙げた企業もあった。
 このほか、売上高が「増える」理由は「民間設備投資の回復が見込まれる」「新設大型プロジェクトが複数ある」「半導体関連の設備投資が好調」「引き続き環境関連施設が好調に推移する」など。「前年度受注の単発物件の売り上げが計上されるため」や「競合メーカーの倒産による受注増」などといった理由も挙げられている。「減る」や「横這い」の理由は「プラント関係のプロジェクト減」「大型プロジェクトが少なくなり、それを補う新規・小型プロジェクトの案件が増える」などとなっている。
 また、経常利益が「増える」理由には、売上高が「増える」理由に併せて「売れている製品や利益率の良い得意先に絞る」「数量増加によるコストダウンが進む」「原価低減」「経営努力」などが挙げられた。経常利益が「減る」理由は「大型プロジェクトが少なくなり、利益効率が下がる」「販売価格のダウン」など、「横這い」の理由では「薄利多売で利益の絶対額を確保するしかない」といった切実な声も寄せられた。
 これらの回答を前回の調査結果と比べると、前回では売上高や経常利益が「増える」理由に「新製品の多くが育ってきている」「新販売品目の投入」など新製品に関する回答が多く、それだけ新製品に対する期待も強かった。だが、今回の調査では売上高、経常利益のいずれにも新製品に関連した回答がひとつもなく、逆に「民間設備投資の回復が見込まれる」に代表されるマクロ面でのプラス要因を挙げる回答が目立った。
 『2001年3月期の重点施策』(複数回答可)では、「@物件の絶対数確保、A仕入れコスト・販売管理費の削減、B技術力の強化(付加価値を高める)」「@海外生産シフト、A高付加価値商品の拡充と事業拡大、B環境配慮型商品の売り上げ拡大」「@半導体関連の強化、A化学プラント関連の体力強化(原価低減)、B新商品強化」など得意分野や競争力の強化を狙ったオーソドックスな施策が多い。また、「@売上高よりも利益重視、A売れている業界への経営資源の集中、B新製品開発と人材育成に注力」「省資源、省エネルギー、環境保全を切り口とした総合社会基盤整備事業への注力」などの施策も挙げられている。
 「従来の客先の掘り起こしと新製品の展開」「新規分野の開拓と既存分野の深耕」「コストダウンと未開拓分野へのPR強化」「新規顧客の開拓」など営業関連を重点施策に挙げる企業も目立つ。さらに「リストラと技術開発」などの単刀直入な回答のほか、「プラントの仕事が増えない限り、手の施しようもない」といった率直な意見も見られた。
 また、前回の調査では、重点施策の中で「海外エンジニアリングメーカーへのアプローチ」「海外企業との提携」など海外関連の施策が新製品やコストダウン関連の施策と並んで目立っていたが、今回は「海外生産シフト」の1件のみ。さらに前回は「事業・製品ポートフォリオの見直しによる経営資源の利用効率改善」「全社の体制整備」など経営体質の改善にまで踏み込んだ施策も多かったが、既に各社ともリストラクチャリングに取り組んでいるためか、今回はあまり見られなかった。

●要望が多い購入時の“価格”関連
 『プラント/エンジニアリング業界に対する意見、希望』に関しては、「納入製品の価格の高い、安いによって供給業者を決めるのではなく、その技術力やノウハウなどをもっと重視して欲しい」「安価のみでなく、品質も見て欲しい」「適正価格の維持」など購入決定時の価格に関連した要望が多い。また、ベンダーのコストアップに繋がる「仕様変更の削減」やプラント/エンジニアリング企業との「共同開発」を求める意見もあった。一方、プラント/エンジニアリング業界の厳しい業況を反映してか、「欧米のエンジニアリング会社に対する優位性を保つ」「受注に向けて営業力を強化する」といった“アドバイス”や「技術力で海外との競争に負けず、頑張って欲しい」などの“激励”も寄せられた。

 <注>アンケート回答企業の中で、一部の企業は決算期が設問と異なるところもあるため、その場合は調査時点で前年同期との比較とした。


[アンケート質問事項]

質問1-1:貴社が関連する業界(例えばバルブ業界など)の現在の業況は
 昨年に比べ □ 良くなる □ 悪くなる □ 横這い

質問2-1:貴社の2000年3月期(99年4月〜2000年3月)の実績は99年3月期に比べ
  売 上 高 □ 増えた  □ 減った  □ 横這い
  経常利益 □ 増えた  □ 減った  □ 横這い

質問2-2:2000年3月期の売上高、経常利益の対前年度比増減率と、それぞれの理由を簡単に述べてください

質問3-1:貴社2001年3月期(2000年4月〜2001年3月)の計画は前期に比べ
  売 上 高 □ 増える  □ 減る   □ 横這い
  経常利益 □ 増える  □ 減る   □ 横這い

質問3-2:それぞれの理由を簡単に述べてください

質問4-1:貴社の2001年3月期の重点施策(複数でも可)を述べてください

質問5-1:貴社の顧客であるプラント/エンジニアリング業界に対するご意見、ご希望がありましたらご記入ください


[アンケート回答企業](順不同)

▽イーグル工業▽荏原製作所▽キッツ▽ササクラ▽サーモン・ファーイースト▽進和テック▽中村電機製作所▽日本ベレー▽パシフィック通商▽フジキン▽ベンカンシステムプラント▽本山製作所▽ネステック