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恒例のENR誌のデザインファーム500社ランキング(Top 500)が発表された。それによると、1999年の500社の設計売上高合計は410億3,000万ドル、前年の364億6,000万ドルの12.3%増と大きく伸びた。この伸びは主として米国国内に起因する。すなわち、米国国内は288億ドルから332億3,000万ドル、15.3%増となったのに対して、海外はアジア・南米の経済不振の影響を受け、78億ドル、僅か1.3%増にとどまった。このランキングは米国のデザインファーム(コンサルティングエンジニア企業や建築設計企業)と、エンジニアリングコントラクターの1999年のエンジニアリング関連売上高のアンケート調査により、上位500社を集計したもの。従来は設計(=designエンジニアリングやアーキテクチャ)契約のジョブのみによるものだったのに対して、一昨年発表分から設計建設(デザインビルドやEPC)契約の設計部分も含まれるようになり、設計関連ビジネス(エンジニアリングビジネス)のランキングとしての性格が明瞭となっている。分野別には石油が7.8%減、有害廃棄物が0.8%の微減のほかは、増加しており、なかでも電力49%・水供給25%・輸送18%と大きく増加した。他の分野も工業プロセス15.3%、一般建築14.5%、下水廃棄物10.0%、製造業2.6%と増加している。 企業ランキングを見ると、トップ企業はBechtel、2位に巨大デザインファームURS、以下EC(Engineer-contractor)企業がFluor Daniel、Jacobs、Foster Wheeler、Parsons、KBRという総合ないしプロセス・エンジニアリング大手、環境インフラのEarth TechとBechtelとあわせて7社となった。デザインファーム系の企業はURSに加えてCH2M Hill、Parsons Brinkerhoffの3社(もっともURS、CH2Mは業態をエンジニアアーキテクトコントラクターEACと報告している)。 昨年のデザインファーム業界の最大の出来事はURSによるDames & Mooreの合併で、本欄でも既報したように、売上高20億ドル、従業員1万5,000人の巨大企業となった。その結果が、2位の企業としてあらわれた。この動きに代表されるように、コントラクターだけでなく、デザインファーム業界でもM&Aが多発しており、業界再編が進んでいる。最近もMACTECによるHarding Lawson、AECOMによるMetcalf & Eddyの買収が伝えられる。M&Aは規模拡大もあり、新規有力プレーヤーも現れるといったこともある。また、シナジー効果や新規分野進出を狙ったものも多く、M&Aの目的はかなり多様である。 デザインビルド契約が米国において、従来から類似したEPC契約が普及しているプロセスプラント以外の分野の民間ならびに政府プロジェクトで、従来の設計施工分離契約にかわる契約方式として普及してきており、純デザインファームもこれへの対応を迫られてきている。リスク負担やコントラクターの下請けとなる懸念の一方、プロジェクトセンスの良さを買われてコントラクターとパートナーシップを組むケースが増えているという。設計ビジネスは、いまや労働集約的ではなく、資本集約的となっており、時間売りではマージンが低く、デザインビルド契約は高いマージンの可能性があるといわれる。デザインファームがデザインビルドに対応しようとするか、どうかは企業拡大の鍵という。IT技術への対応もデザインファーム拡大の要素である。問題は産業標準がないことという。各社ともエレトロニクス革命に対応できていなかったら、いずれビジネスから追放されると恐れている。 IT分野は巨大な市場でもある。この分野ではインターネット企業向けビルのように、「ファーストトラック」が求められる。米国の輸送分野(道路や空港など)は連邦政府の資金により、とてもホットな市場となっている。経済が好調時にインフラを整備したいという民衆の声に応えるものであろう。1999年に大きく伸びた水供給は今後も成長する。この分野では民営化が続いているが、資産の完全な売却といった完全な民営化よりは、供給契約といった官民のパートナーシップが増えるという。電力はもっともホットな市場だ。タービンの供給能力がネックになるといわれる。石油・プロセス市場は上昇が見込めない。原油価格の上昇は産油国の資源保存の結果であり、精製分野の能力増につながらないという。しかし、期待できる分野がある。それはクリーンフュェルへの関心であり、多くのフロントエンド段階にあるワークがあり、大型プロジェクトに徐々に転換していっているという。このように、米国の市場は全体として好調で、デザインファーム各社とも好況を謳歌している。しかし、各社は2〜3年後のスローダウンを警戒しており、それまでに市場における地位の確立を狙い、コントロールされた戦略的成長を目指しているという。 |