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政府がPFI基本方針まとめる
具体性欠く内容で、今後に課題残す



 PFI推進法の成立から約10カ月。漸く「PFI基本方針」がまとまった。PFIを導入したくとも、政府の基本方針が出てこなければ、計画を進めにくいという自治体も多かったが、その基本方針が提示されたことでPFIの普及に弾みがつくものと期待される。しかし、この基本方針に対する評価はあまり芳しくないようだ。

●「曖昧な表現」に終始
「推進法の枠を出ていない。具体的なことについては、何も記されていない」。漸くまとまった基本方針に対して、ある関係者はそうもらした。
 今回公表された基本方針は、PFIの意義とその原則、さらにPFIの実施による効果について述べている前文と、PFI事業の選定に関する事項をまとめた第1章、PFI事業者の募集・選定について述べた第2章、事業者の責任の明確化など事業の実施に関する第3章、法制・税制・財政・金融上の支援に関する第4章、推進委員会に関する第5章、地方公共団体にでの特定事業の実施に関する第6章、その他特定事業の実施に関する第7章で構成されている。
 このなかで、最も注目されるべきなのが第4章だ。
 基本方針がまとめられる以前から、PFIに取り組む企業の間では、自治法の改正と地方交付税の見直しに対する要望は強かった。
 金町浄水場のコージェネ事業では、自治法に民間企業との長期契約の概念がなく、基本的に単年度契約であるため契約書の作成に苦労したという。また、特に問題としてされているのが、公物管理に関するもの。建設した施設が行政財産となると、事業者はメンテナンスすら自らの判断ではできず、その都度自治体に提案し、自治体が実施を決めるという形になる。しかも、自治法上は施設管理を民間に丸投げできないことになっている。 こうした法律上の制限を取り払うことが国に対して求められているのだが、基本方針の4章の(4)で「公物管理法等について、PFI事業推進のために必要な規制の撤廃または緩和を速やかに推進する」とはしているものの、それがいつまでにどのようなかたちで実施されるかについては全く触れていない。
 また、この第4章では公共施設の管理者が受けることのできるものの範囲内でPFI事業者も財政支援を受けられるようにする、また税制に関しても現行制度に基づくものを基本に必要な措置を検討する―などの支援を検討するとしている。
 だが、これまでに指摘されてきたPFIを導入するうえでの問題点、特に地方交付税の存在によって、従来型の公共事業のほうが、自治体にとってはPFIを導入するよりVfM(バリュー・フォー・マネー)があるという、逆転現象に対する措置に関しては何ら触れられていない。
 さらに、金融上の支援として「政府系金融機関による金融上の支援における選定事業の位置づけを整備し、融資が円滑に実施されるようにする」という項目が挙げられている。確かに、そうした措置はPFIの導入には有効ではあるが「PFIのPはパブリックであったか」という冗談も囁かれている。それはともかくとしても、全体にその内容は曖昧な表現に終始し、具体性に欠いたものとなっており「よくわからない、というのが率直な印象だ」(民間団体)という。

●相次ぐ実施方針の公表
 とはいえ、ともかくも基本方針がまとまったことで、実際にPFIプロジェクトが動きやすくなったことは確かだ。実際に、茨城県は常陸那珂港における北埠頭外貿コンテナターミナル整備へのPFI導入計画で実施方針を策定、事業者の募集要項の配布を開始した。また、千葉市でも消費者生活センター・計量検査所複合施設整備の実施方針を公表、4月中旬から事業者の募集を開始する。
 今後も、実施方針の策定が全国で続いてくるものと見られる。その意味では、基本方針は最後のタイミングに間に合ったということができるだろう。しかし、その内容は、推進委員会と政府、中央官庁の思惑が入り乱れて、全体としてまとまりを欠いているという印象は否めない。
 少なくとも、その前文に明記されている民間経営資源活用原則、効率性原則、公平性原則、透明性原則、客観主義、契約主義、独立主義を保持しつつ、早期に関連する法整備や、税財制の改革が進んでいくことが期待されるところだ。