GE〜東芝が商用化へ、対する三菱も実用化にメド
GEと東芝が、共同で開発した次世代型ガスタービンコンバインドサイクル発電システム「H System」の国内商業販売を10月以降に開始すると発表した。98年に両社が開発から製造、営業までRSP(リスク&レベニュー・シェアリング)方式での事業展開を発表して以来5年を経て商業化にこぎつけた。一方、同じくH型ガスタービンを開発している三菱重工業も既に実用化にメドをつけている。ガスタービン複合火力はついにH型時代に入るのか。
英バグラン・ベイで実証
「H System」は、燃焼温度を世界最高水準の1500℃レベルとし、ガスタービンと蒸気タービンを直列に配置して発電機を駆動する世界最大の一軸式コンバインドサイクル発電システム。蒸気冷却方式の採用により世界最高の熱効率60%を実現できる。このため、従来のガスタービンコンバインドサイクル発電システムに比べて発電コストを低減できるとともに、熱効率が高い分燃料使用量を低減できる、環境適合性も高いシステムとなる。
GEはこのシステムのキーコンポーネントとなるH型ガスタービンの開発を95年に開始。98年からは東芝とのRSPで実用化を進めてきた。東芝はこの協定のなかで蒸気タービン、発電機の設計、製造と、GEの設計した圧縮機の製造を担当している。またGEはシステムの総合設計と性能の責任を担うと共にガスタービンを設計・製造し、システム制御を供給する。シェアはGEが60%、東芝が40%だ。
その第1号機は英国ウェールズ地方、カーディフ近郊のバグラン・ベイ発電所に導入され、技術実証試験を実施。広範囲なフィールド検証試験は2002年11月に開始。ユニットは、全負荷を含むあらゆる条件で運転され、大気温度7℃で出力53万kWを記録した。
この結果、商用システムとしての性能を確認、今年9月にはガスタービン蒸気冷却技術を用いた世界初の商用コンバインドサイクル発電プラントとしての運転を開始する予定だ。
これをうけて両社は、今年10月以降に主に日本市場を対象として本格的な営業活動を展開していく考えだ。
既にGEは東京電力・富津火力発電所4号系列の3基のHシステムを受注している。同設備は合計出力152万kWで、2008年以降順次運転開始の予定だ。
このプロジェクトでも東芝は包括契約の下に蒸気タービン・発電機の設計・製造と圧縮機の製造を担当することになっている。
GEと三菱、設計思想に相違
H型ガスタービンは、これまで開発・実用化されてきたガスタービンとは大きく異なるものだ。燃焼器からガスタービンへの入口温度(TIT)が1,500℃にも達するので、そのままでは直接にこの温度を受けるタービン・ブレードは溶けてしまう。TITが1,300までであった従来のガスタービンでは、ブレードへの耐熱コーティングと、空気冷却によって耐熱性を確保していたが、1,500℃では空気冷却も限界となる。そのためブレード内部に、空気より冷却効果の高い蒸気を通すことでこの温度を実現するというもの。ローター軸からブレード内部に蒸気を送るとともに、冷却後の蒸気改修もローター軸を通して行う。回転機械であるガスタービンでこのような構造を作り上げるには高い技術レベルが要求される。そのため、世界でこのタイプのガスタービンの開発を手掛けているのはGE〜東芝と三菱重工の2グループのみとなっている。
この冷却用蒸気は、GE〜東芝のHシステムでは蒸気タービンから抽出してガスタービンに送る。これに対して三菱重工業では排熱回収ボイラから抽出するという具合に設計思想が異なっている。単純に考えれば、三菱重工のH型は1軸直列型以外のレイアウトも可能で柔軟性は高いと見られる。そして同社も、同社高砂製作所のガスタービン試験棟「Tポイント」で2回にわたるテストを実施、既にH型の実用化のメドはつけている。
世界で最も高効率化設備の導入意識が高く、投資も多い日本でH型競争が世界に先駆けて始まるかもしれない。
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