相次ぐ大型案件の受注、JVの拡大がエンジニアリング会社のプロジェクトITを複雑化させている。世界に散らばる設計オフィスと建設サイト、さらに顧客とをWebで結び利便性を拡大すると同時に、セキュリティ問題がより重要な課題となってきた。一方で、エンジニアリング会社のITシステムはJVの拡大により、共通プラットフォーム化が進んでいるように見える
世界の大規模案件では、一つのエンジニアリング会社に単独発注することがなくなり、殆どの案件でエンジニアリング会社同士によるジョイントベンチャーが採用されるようになった。ところが、プロジェクトの遂行にITが不可欠となった現在、JVによるプロジェクトは、お互いに異なるITシステム間で如何に効率的に遂行していくかが課題となった。
実際には、世界的なエンジニアリングコントラクターのプロジェクト遂行システムはほぼ似通った思想で構築されるし、CADなどの中核となるツールは、共通する市販パッケージが採用されているので、異なるシステムといっても、全く異質なものというわけではない。通常、JVの場合にはプロジェクトリーダーとなる会社のシステムを採用することになる。
しかし、JVパートナーが広がり、プジェクト遂行に関わる場所が増えれば、ネットワーク環境の整備は大きな問題になる。そこで、近年急速に整備されてきたネットワーク環境を利用した、グローバル設計インフラ、海外調達などの機能をインターネットベースで対応するようになってきた。
また、顧客からはプロジェクト進展状況をある程度工事が進んだ状況でミーティグを行うが、その際には顧客の担当窓口だけでなく、完成したプラントの運転担当者によるチェックが掛かる。そうなると、プロジェクト遂行システムには、JVパートナーとともに、顧客とのシステムも同時に考える必要がある。一方で、インターネットなどのネットワーク環境が飛躍的に向上してきたこともあり、プロジェクト遂行システムのWeb化が進んでいる。
日揮、千代田、TECの3社ともプロジェクト遂行の為に必要なシステムの基本概念はほぼ同様である。これは世界的なエンジニアリング会社でも同じ傾向にある。いずれも、海外プロジェクトが事業の中心であり、コンペティターだけでなく、顧客とも連係できる、世界標準的なシステムを採用していくのは必然となる。そのうえ、JVによる受注が急速に拡大、互いのシステムに関する理解も急速に向上した。同じ市販ソフトを用い、同様の思想で構築されたITシステムでは殆ど大きな差はなく、JVでチームを組んでも違和感がなくなっているという。一方で、このように各社のシステムが似ているということは、ITシステムそのものは商談における競争力には繋がらない。競争に参加するために必要なプロジェクト遂行の環境を整備できているかどうか問題なのである。
であれば、いっそのことエンジニアリング会社間で共通したプラットフォームを作り、その上で各社のシステムを構築していくほうが効率的かもしれない。
今のところ、共通プラットフォームつくりへ向かう動きはないものの、今後さらにJVでの受注案件は拡大していくと考えられるので、自然と共通プラットフォームに近いものが出来ていく可能性はある。
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