○…TBS系列のテレビ番組に「世界ウルルン滞在記」というのがある。世界の秘境の村や世界の職人などのもとに、日本のタレントが1週間ほど滞在するというドキュメンタリを題材にして構成した番組だ。秘境の村でネーティブで伝統的な慣習のもとで暮すというストーリーで、数年前までは今でもこうした風俗はあるのか、やらせではないのかと疑いながら見ていたものだ。
ところが最近は様相がかわってきた。アマゾンの奥地でも太平洋の島々でもタイの山岳民族でも、普段はすでに伝統的風俗は失われてしまい、伝統を守ろうとするリーダーや長老が伝統を守るあるいは懐かしむために日本のタレントを受け入れ、伝統的生活を再現するというものになっている。アルプスの農業でもそこにいる若者は地元の人々ではなく、環境運動家であった。
もはや、秘境は失われ、建前を取り繕うことさえできなくなっている。秘境の村といえどもTシャツを着る。現金収入は不可欠であり、優勢な言語による教育が普及せざるを得ない。若者は都市に出て行く。物質文明は全世界を覆いはじめた。全世界の人類が先進国同様の生活をめざしている。だがそれが物質的に可能か、
経済的不平等を解決できるのか、人類はパンドラの箱をあけてしまったのではなかろうか。
○…何時のことか記憶は定かではないが、株価が1万5000円〜1万6000円のころだったと思う。2万円近くあった日経平均株価がじりじりと値を下げている頃だ。新聞紙上で一線のエコノミストたちが、「日本経済の実力」にあった株価をアンケート形式で答えていた。彼らは「1万4000円を割ると殆どの銀行が持ちこたえられない」、「1万2000円台で持ちこたえられる銀行は1行だけ」と考えていた。株価予想では、「1万3000円〜1万4000円で底をうつ」、というのがほとんど。そのなかで、誰だか忘れたが1人だけ「日本経済の実力にあった株価は7000円〜8000円」と答えていた人がいた。その時、まさか1万円を割り込むはずが無い、そんな事態になれば日本経済は破綻するだろう、という感慨を持ったのを覚えている。現状は、不幸にしてそのまさか(私にとって)の予想が的中してしまった。
「世の中何が起こるかわからない」という経験をこれまで何度かしてきたが、現状の株価もその一つだ。しかし、現状で日本経済は何とか持ちこたえている。時代の経済環境にあわせた企業人のいろいろな努力・改革が持ちこたえさせているのだろう。政治家、官僚の努力・改革によってではないのは確かではなかろうか。
|