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東芝〜三菱電機、海外視野に送変電機器で包括的提携



 東芝と三菱電機は、電力の変電および系統分野で包括的な提携を行うことで合意した。国内の送変電プロジェクトが減少しつつあるなかで、両社とも事業規模は縮小しつつある。一方、海外ではこれからも多くの需要が見込めるものの、欧米の列強との激しい競争にさらされており、今後は単独では競争力を維持できなくなると判断したものであり、海外を視野に入れた提携と言える。
 両社は、国内の電力変電・系統分野ではいずれもトップ企業にある。しかし、需要の多い海外ではトップのABBが世界のシェアの15%を占めており、その事業規模は年間およそ3,500億円程度で抜きん出ている。また2位グループはシーメンスおよびアルストームであり、シェアはいずれも6〜7%、年間受注高はそれぞれ2,000億円程度を維持している。これらの企業に比べて、両社はいずれも年間1,000億円規模であり、2位グループの半分程度しかない。国内市場が大幅に縮小しているため、各社とも海外市場への積極展開が不可欠となっているが、海外ではこれらの有力企業との激しい競争により、採算性を悪化させている。そこで、両社が一緒になれば2位グループに入り込み、競争力を増すことができ、採算性も向上できると判断し、今回の提携に踏み切ったもの。
 具体的な提携範囲は、@変圧器および開閉装置の電力変電分野とA系統用・配電用の計算機システム、保護制御リレー等電力系統および配電自動化分野。
 提携の内容としては、@製品開発の効率向上に向けた技術提携、A生産性の効率向上に向けた相互OEM供給、Bコスト低減に向けた部品・資材共同調達、C海外販売の一本化およびエンジニアリング業務の一本化−の4項目を挙げており、今後両社で協議を重ねつつ各項目を順次実現していく考えだ。ただ、両社ともに製造工場の整理統合や、同事業の分社・統合まではいまのところ視野に入れていないという。
 両社の提携には、昨年実施された大型モーターの合弁会社TMAの成功が足がかりとなった。この合弁を通じて両社の間の信頼性が高まり、また海外市場における認識も共有しているほか、海外市場でそれぞれの得意な国や地域、製品などに補完性があることが決め手となった。
 送変電分野の市場は、国内では30%需要が減少しているうえ、価格も20〜30%ダウンしている。一方、海外市場は全体で3兆円程度が見込まれており、今後も需要が伸びつつあるが、価格は熾烈な競争により30〜50%も下がってきている。こうした厳しいマーケットで生き残っていくには包括提携によるコストダウンが不可欠であった。今後の課題としては、東芝がGE技術、三菱電機がウエスティングハウス技術とそれぞれの技術ルーツが違うため、これを如何に整理統合していくかがポイントとなる。
 国内市場の狭隘化により、世界で最も重電産業の多い日本ではかねてから業界の整理統合の必要性が叫ばれていたが、今回の提携により、漸くその第一歩を踏み出したことになりそうだ。今回の提携を実施することで、東芝は原動機から発電機は米GEと、送変電分野では三菱電機と、それぞれの関連で事業展開を図ることになり、電力システム単独の事業分野は極めて狭くなっており、重電分野におけるアライアンス型の事業展開がほぼ完成したといえる。これにより、今後注目されるのは、単独で残っている日立製作所の動向だ。