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プロジェクト具体化相次ぐGTL

投資総額は110億ドル超に



 Gas to Liquid(GTL)プロジェクトが相次いで実現へ向かおうとしている。シェルが世界の4カ国でフィジビリティスタディに入ったほか、サソールなども懸案のプロジェクトの実現に向けて動き出した。具体化しつつあるGTL市場で日本のエンジニアリング会社はチャンスをものにできるか。

●メジャー各社が積極的に推進
 シェルがエジプトおよびトリニダード&トバゴ、インドネシア、イランの4カ国でGTLのFSを行うことを明らかにした。その中でも、エジプトのプロジェクトが特に進んでいるようで、シェルとEGPC(Egyptian General Petroleum Coorporation)、そしてエジプト石油省の3者が、生産能力7万5,000b/dのGTLプラントを2005年〜2006年の立ち上げを目指すという開発議定書に調印している。しかも、少なくとも1系列のLNGプラントをGTLとのコンバインドで建設するというもの意欲的なものとなっている。プラントのオペレーションのため、シェルとEGPCが合弁会社を設立するということも決まっているという。
 シェルでは、この4つのGTLプラントを今後10年間の間に建設していく考えであり、その総投資額は60億ドルに達するとしている。
 一方、かねてから懸案となっていたナイジェリアエスクラボスのGTLプロジェクトも具体化へ向けて一歩前進した。
 これは、シェブロンとナイジェリア国営石油が計画しているもので、既に第2フェーズまで完成しているエスクラボスのガスプラントに、第3フェーズとしてガス生産量4億cf/dのガス生産プラントおよび1万5,000b/dのNGLを建設、同時に3万3,000b/dのGTLプラントも建設することで合意した模様だ。投資額は合わせて20億ドルと見積もられている。昨年末にもEPC商談が行われると見られていたが、原油の高騰に伴ってナイジェリア政府がガス価格を引き上げたため、プロジェクトの実行が遅れていた。
 シェブロンは南アフリカのサソールとともにGTL技術で合弁会社(SCH)を漸く設立することとなり、その最初のプロジェクトとしてエスクラボスGTLを2005年までに建設する計画としている。SCHは、サソールのアイソクラッキング技術と、シェブロンのSPD(Slurry Phase Distillate)プロセスを統合したGTL技術を全世界に販売していくことを目的とした合弁会社であり、今後5〜10年間でGTLに50億ドルを投資していく計画だ。エスクラボスのプロジェクトでも、SCHが技術を提供することになっている。ちなみに、シェブロンのSPDプロセスではハルダートプソーの改質炉が使用されている。
 そのほかにもGTLのベンチャー企業であるシントロリュームの西豪州におけるGTLプロジェクトも、少しずつ前進しているようだ。
 このプロジェクトは総額4億ドルを投じて、西豪州Burrup半島に1万b/dのGTLプラントを建設するものでSweet Water プロジェクトと呼ばれている。以前、同プロジェクトのパートナーとして、世界最大のメタノール生産会社であるメタネックスが参加していたが、同社が同じ豪州で計画されているシェルのウッドサイドプロジェクトに資源を集中するため、Sweet Waterから撤退、一時はプロジェクトの行方が危ぶまれたが、替わってエンロンが参加することを決めている。今年8月には豪州政府とプラント建設に関するライセンスおよびローン・アグリーメント契約に調印。10月になってからはカナダの石油・ガス企業Ivanhoeがプロジェクトに参加、またメリルリンチがファイナンシャル・アドバイザーになることも決定するなど、プロジェクトの実現のために必要なパートナーや資金集めは着々と進んでいる模様だ。
 さらに、BPアモコもアラスカのニキスキでGTLの実験プラントを建設中であり、来年初頭には稼動する予定だという。コントラクターはクバナが担当しており、投資額は300万ポンド。BPアモコはアラスカのガス田の開発を進めており、天然ガスの供給とともにGTL製品の供給も選択肢の一つとしているという。
 これらの動きをまとめると、今後10年間でGTLの投資額は公表されているだけで110億ドルを超えることになる。

●日本のビジネスチャンスとなるか
 GTLプロジェクトの動きが目立っているのは、一つには原油価格の高騰が続いていることが上げられる。グリーンフィールドでGTLプラントを建設する場合、原油価格がバレル当たり20〜25ドルを超えなければGTL製品の価格競争力が出てこないと言われていた。最近はバレル当たり30ドルを超えつづけており、表面上は競争力が出てきたことになる。もっとも、天然ガス価格も原油価格とリンクするため、十分に競争できる状況になったとは言い切れない。しかし、石油流通への限界感や、GTLの持つクリーン性への期待感が高まっていると考えられる。特にオイルメジャーはGTLを21世紀の核となる技術の一つとしている。豊富な天然ガスから石油製品を作ることで既存の流通システムに大きな変更をせずに、世界の化石エネルギーでの地位を確保でき、しかも環境適合性を高められるという面からGTLへの投資を活発化させている。既存システムの変更に比べれば、GTLへの投資の方がはるかに安上がり、ということだ。そのため、各社は先行投資に走っているのだ。
 コスト面では、GTLはさらにコストダウンする必要はある。しかし、プラント建設のイニシャルコストを低減することは困難だ。FT(フィッシャー・トロプシュ)合成は確立された技術であり、プラントコスト全体に占めるシェアも小さい。問題は原料ガス改質炉だが、これも技術革新をまたなければならない。
 GTLのベンチャー企業であるレンテックは、ランニングコストを低減することでGTL製品価格を低下することを検討している。同社は、原料ガスを天然ガスではなく、産業オフガスを使用してGTLを作るという計画でFSに着手した。米国の大手化学メーカーと、米国内での産業オフガスを使ったGTLプラントのFSに関して、このほど合意したという。同社によれば、オフガスを使用し、既存の産業プラントのレトロフィットの形でプラントを建設すれば、天然ガスベースのグリーンフィールドプロジェクトに対し、b/d当たりのプラント建設コストは33〜40%程度と大幅に低減できるとしている。
 いずれにしても、GTLプロジェクトが活発化することで、日本のエンジニアリング業界にとっても新たなビジネスチャンスが生まれつつあることは確かだ。特にシェルのエジプトのプロジェクトでは、マレーシアのSMDSの実績を持つ日揮に期待がかかる。しかもLNGプラントとのコンバインドという計画である。
 ただ、欧米エンジニアリング会社がプロセス開発の時点から深く関わっているのにくらべ、日本のエンジニアリング会社の関わり方はやや距離をおいている。この当たりがやや気がかりなところといえるだろう。