EnB18号目次へ


米国のエンジニアリング建設産業のIT動向
ENR誌のe.CONSTRUCTION



 ENR誌はエンジニアリング建設産業のデジタル革命の現況分析をe.constructionとして四半期ごとに特集するという。その第1号から、冒頭のWeb accessed ASP(Application Service Provider)の節とEPCコントラクターの動向を伝えるグローバル・マルチオフィス・アプローチの節の内容を、以下紹介しよう。


●Webベースプロジェクトマネジメントツール

 −自社開発からASPのレンタルへ−

 ENR誌は現時点において、コラボレーションとプロジェクトマネジメントツールを提供しているエキストラネットプロバイダーに現状ならびに将来の機能と価格についてアンケートしている。17サイトが回答している。16サイトのオペレーションシステムがWeb-accessed ASPとなっている。その内容について各サイトのパワーユーザーにチェックしたところ、実際に提供できる以上のものを各サイトは提示しているようだ。主要なマーケットを見ると、約半数の8サイトがアーキテクトエンジニア、規模などで示しているサイトもあるだけに、建築設計プロジェクトが主要市場ということがわかる。
 重要なことはこれらのサイトを使うと不完全なものであっても後戻りできないというコンセンサスができていることだ。今日のまだひよこ段階のツールキットをフルに使っている人はほとんどなく、多くはソフトウェア機能の半数しか使っていないし、チーム共有も小部分にすぎないが、いやおうなくメリットはでている。この業界は全体としてIT化の習熟曲線をゆっくりとたどっているようだ。
 コラボレーションとプロジェクトマネージメントシステムを選定するのに最初に決める必要があるのは、自分で作るか、購入するのかということだ。大企業でもParsons Brinkerhoffのように自社開発するものもあれば、J.A.Jonesのように購入するものもある。またBechtelのようにソフトウェア企業に投資するものもある。さらに最近ではASPからコラボレーション・プロジェクトマネジメントソフトウェアをレンタルする企業が増加している。
 ASPからレンタルすれば、自社で持つ場合に対してITサポートのオーバーヘッドコストが低減する。一方、ASPの不利な点もある。オフラインで仕事しようとしてプラグインができていなかったり、アクセスが必要な時間にASPが休止しているなどだ。「企業にとって致命的なものまで自社のサーバーにおかないなんて考えられない」という声もある。しかし、ASPは今日のホットトピックスとなっている。

●グローバルオフィス

−ワークシェアリングの技術的障害は克服−

 グローバル・マルチオフィス・アプローチすなわち、グローバルに展開したオフィス間でワークを分担してコラボレートするやり方はBechtel、Fluorの場合、定着して久しいという。ABB Lummus Globalはオフィスを海外展開しているが、サテライトオフィスに米国から派遣するという。技術の進歩によりグローバルにワークをシェアリングできるようになったが、メンバー間のperson to personのインターフェースを否定するものではない。
 インド・フィリピン・東欧・中国とグローバルにワークをシェアする目的は、第1にコストであるが、その他キャパシティ面ないしスケジュール短縮もある。さらに、相手国への技術移転ということもある。
 各ロケーション間のドキュメントの調整はマルチオフィスアプローチの課題の一つだ。データベース複製テクノロジーにより、ファイルは一つのロケーションから自動的にアップデートされて他のユーザーは同じバージョンにアクセスできるようになる。またグローバルワークをシェアリングする上での障害はすでに技術的に克服されているという。
 今後成長する分野の一つに、Webベースのプロジェクトマネジメントツールがある。現在のWebベース製品のファイルマネジメント能力はアーキテクチャルエンジニアリングプロジェクトに適している。Web製品の挑戦すべき課題は、複雑で大型のEPCプロセスプロジェクトへの対応だといわれている。このレポートの他の部分からも、建築設計プロジェクトのIT化がもっとも進んでおり、大型のEPCプロジェクトは次の課題となっていることがうかがえる。