日揮、世界初の本格的FPSOを受注
洋上LNGプロジェクトにも布石
日揮は、コノコ・インドネシアから大型の洋上ガス処理設備を受注した。FPSOプロジェクトとしては世界ではじめての本格的な設備となるものであり、同じくインドネシアでShellが計画している洋上LNGプロジェクトが実現すれば、それに向けての大きな布石となりそうだ。
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今回のプロジェクトは、南ナトゥナ海ベラナック油ガス田で産出される原油およびガスを処理して出荷するもの。FPSO(Floating Production Storage and Offloading:浮遊式生産貯蔵出荷設備)を建造するプロジェクトであり、原油処理設備のほか、アジア太平洋地区でははじめてLPG回収プラントを搭載する。
日揮はKBRのインドネシア法人であるP.T.ブラウン&ルートとのジョイントベンチャーでプロジェクトを受注した。受注額は総額約700億円で、このうち日揮の受注額は約140億円。日揮にとっては初めてのFPSOの受注だ。
FPSOの生産能力は、原油が10万b/d、ガスが350MMSCFD、プロパンが1万5,000b/d、ブタンが8,000b/d。
受注内容は、FPSOの建造のほかFPSOと海底パイプライン接続ポイントを結ぶフレキシブルライザー、および送電のための海底ケーブルの設計・調達・建設、さらに試運転助勢役務が含まれる。また、船体そのものの建造については米マクダーモットが下請けしており、同社では中国の造船所を採用する予定。
同商談では、日揮〜KBRのほか韓国・現代グループ〜フルアー・ダニエル、大宇〜SBM、三星重工〜テクニップ〜サイペムが、韓国の造船のコスト競争力を生かして参加していた。これに対して、日揮〜KBRはインドネシアでの実績やLPG抽出プラントの経験、KBRのオフショアプロジェクトでの強みに加え、中国での造船コストの安さを活かして受注に成功した。
JVは、中国で建造された船体をインドネシア・バタム島に曳航し、そこで各種設備をファブリケーションしてサイトに納入することにしており、完成は2004年後半の予定。
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洋上の原油生産施設として、タンカー上に原油処理施設を搭載したFPSOは、近年世界中で広く使用されつつある。
しかし今回は、LPG回収プラントを搭載。原油とLPGは洋上でタンカーに直接出荷され、ガスに関してはパイプラインでマレーシアに送られるという本格的なFPSO。
日揮では今後、FPSOを使った中小ガス田の開発や随伴ガスの有効利用が進むものと見ている。これまでにも日揮は石油公団との共同でLNGのFPSOの実用化研究を実施し、実用化のメドをつけているほか、現在はJETROの支援で新日本製鉄とともにDMEのFPSOにの実用化に向けた検討を進めている。
LNGも陸上より洋上のFPSOによるプラントの方がコストが安いことから、将来的にはLNG・FPSOの需要がでてくると見ており、今回のプロジェクトの受注はその先鞭をつけるものと言える。
現在、インドネシアではチモール海のガス田開発計画でGreater Sunraiseガスプロジェクトの開発を計画しているShellが、洋上LNGを提案。これによりコストを40%程度削減できるとしている。
この計画が実現すると、インドネシアで本格的なFPSOの実績を築いた日揮〜KBRは、コントラクターとしての優位性を持つことになりそうだ。
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