合成ガス製造技術核にGTL・DME、MTO
東洋エンジニアリング(TEC)がGTLやDMEといった次世代エネルギーに積極的に取り組んでいる。メタノールやアンモニアなどのプラント建設での豊富な実績と、これらのプロセスの要となる独自の合成ガス製造技術でこの分野への参入を図っている。
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GTL(Gas to Liquid)やDME(ジメチルエーテル)は、天然ガスを原料として製造されるもので、硫黄分を含まないなど環境特性に優れた次世代燃料として注目されている。
その製造プロセスはいずれも、天然ガスの主成分であるメタンをCOとH2の合成ガスにするところからスタートする。この合成ガスを反応器で合成することで、様々な製品を作ることができる。
合成ガスをアンモニア合成すればアンモニア、PSA(Pressure Swing Adsorption)を使えば水素製造が可能だし、GTLはフィッシャー・トロプシュ合成で、またメタノール合成でメタノールを製造したのち、メタノールの脱水反応によりDMEを製造する。さらにメタノールからはオレフィン合成によりエチレンなど化学品も製造できる。これがMTO(Methanol to Olefin)である。つまり、合成ガス製造技術があれば、多くの種類のプラントに適用できる。
しかし、合成ガス製造技術はかつてはメタノール換算で1系列当たり2,500t/dが限界とされていた。そのため、大量生産が前提となる燃料用向けでは採算がとれなかった。その後、合成ガス製造のスケールアップが可能となり、イランで建設が始まろうとしているメタノールプラントでは1系列あたり5,000t/d規模の能力で設計されている。また、三菱ガス化学などがオーストラリアで計画しているDMEも、この規模だ。
これに対して、現在TECが提唱している合成ガス技術は、部分酸化法と蒸気改質法を組み合わせた“コンバインドリフォーミング”技術であり、メタノールでは1系列で1万t/dを可能としている。一気に2倍の規模である。
GTL、DME、MTOのいずれにしろ、プラント全体のコストの中で合成ガス製造設備のコストは50%以上を占める。そのため、合成ガス製造プロセスが大型化できることは、製品のコストダウンに大きな影響を与える。重要なプロセスといえる。
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1万トンのメタノールからは、約7,000トンのDMEが製造される。TECではこの規模をベースに製品コストを試算している。メタノールベースでは、中東立地で従来の5,000t/dではメタノールはトン当たり80ドル程度。これが1万t/dになると、製品価格は60〜70ドル程度となる。また、DMEではMMBTU当たりで50セント〜3ドル程度となり、LPG価格を下回り、場合によってはLNGも下回るという。
TECは現在、三井物産とともにイランでのDME事業に関するFSを開始。同社の技術をベースにしてDMEプラントの建設に意欲を見せている。
ただ、当初はDMEのマーケットが確定していないことからも、アジア等の既存のメタノールプラントにDME合成設備を付加する改造によってDME供給するという提案も行っている。これにより、DMEの日本への供給開始時期を早めることができる。
同社では2005年のDME供給開始を目指しており、その実現のため化学会社や商社、現地製造会社などとの連携を深めていく考えだ。
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合成ガス製造技術は、リファイナリー、ケミカル、ガスといった各種プロセスの枠を超える可能性を持つ。MTOプロセスに関しては開発段階であるが、いずれは具体化してくるものと予想されている。
また、TECではGTLに続いてATL(Asfalt to Liquid)プロセスについてもウオッチしているという。既にTECは中国などで重質油をShellのガス化技術によってアンモニアを製造するプラントの建設実績を持っているが、さらにアスファルトから合成ガスを作って軽質の石油製品を作るプロセスについても関心を寄せている。
これら合成ガス技術を核とした、プロセス体系を充実させていくさせて商品範囲を拡大させていく考えだ。
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