拡大するバイオマス利用技術の展望
バイオマス利用が活発化している。住友商事がバイオマス発電をタイで受注したほか、鹿島が世界ではじめてとなるバイオガス燃料電池発電設備の運転を開始、さらに丸紅などが木質系バイオマスからのエタノール製造技術で技術導入を行った。
住友商事がタイで受注したのは、精米後の籾殻を発電燃料とする1万kWの火力発電設備。タイ発電公社(EGAT)の子会社でIPP事業を手掛けているEGCOと電源開発が共同で実施するプロジェクト。両社の共同出資による事業会社ロイエット・グリーン社が事業主体となり、タイ北東部ロイエット県に建設されるプラントで電力は全量EGATに供給される。
住友商事は明電舎とともに発電設備のEPCを一括受注したもので、籾殻燃料ボイラは大阪のよしみねが製造する。
タイでは、年間を通じて精米後の籾殻が大量に発生するが、これまではその殆どが廃棄物として処理されている。今回のバイオマス発電所は、精米工場隣接地に建設されるもので、廃棄物である籾殻を燃料として利用し、低コストで安定的に発電が行える。
NKKでは、循環流動床(CFD)ボイラをベースとした、バイオマス発電を提唱。CFBボイラで年間約700万トン程度発生している間伐材など木屑廃棄物を焼却して20MW規模の発電を行うシステムを大阪の木材団地向けにFSを行っている。
これらはバイオマスを直接焼却して発電を行うといものだが、一方で生ごみをメタン発酵させ、メタンガスをエネルギーとして有効利用するバイオガスシステムの開発も進められている。
鹿島建設は8月、同社が95年に開発した固定床式高温メタン発酵によるバイオガスシステム「メタクレス」と燃料電池をくみ合わせたシステムをを完成、運転試験を開始した。
同システムは、神戸市内に設置されており、市内のホテルから出される生ごみをメタクレスで処理。回収したメタンガスにより燃料電池で発電する。バイオガスシステムと燃料電池を組み合わせたシステムは世界でも初めてであり、将来的には発生した電気を電気自動車用充電スタンドなどに供給する構造を持つ。また、バイオガスの一部を圧縮して、CNG(圧縮天然ガス)自動車用に供給するシステムの検証も計画している。
同システムは、回収された生ごみを微粉砕してスラリー化。炭素繊維担体が充填されたバイオリアクターで嫌気性微生物で有機物を分解してメンタガスと二酸化炭素のバイオガス化する6t/dの生ごみから1,200m3/dのガスが発生する。バイオガスは、脱硫・精製されて、定格100kWの燃料電池に送られ、発電する。またリアクターに残る発酵液に関しては浄化処理して下水道放流する。
鹿島では同システムの実証を行い、自治体や広域組合、大規模商業施設のほか、食品工場などを対象に、10数t/d規模でシステムの標準化をはかり、さらに20〜30t/d規模にスケールアップしていくとともに、1t/d以下もターゲットに低コストユニット型の開発も進めている。 バイオガスではほかに、大林組などもBIMAシステムで実績を築いている。京都・八木エコロジーセンターで家畜糞尿の処理システムが稼動しているが、同センターから増設工事を受注した。このシステムは、5t/dの糞尿を処理し、1,650m3/dの消化ガスを回収。60%程度含まれるメタンを2台のガスエンジン発電機の燃料として発電を行っている。出力は最大134kW。
メタン発酵処理施設は2002年度から国庫補助の対象プラントとなることが決まっているため、大林組では今後、都市部でも生ごみ発電プラントの需要が出てくるものと予想している。そのため、食品計の生ごみによる発電プラントの検討を進め、焼却やコンポスト化と組み合わせたシステムとして提案していく考えだ。
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バイオマスのエネルギー利用が現実化してきた一方、ケミカル原料としての利用でも新たな動きが出てきている。
丸紅と月島機械は、米BCインターナショナル社から、バイオマスアルコール技術の日本国内および東南アジアにおけるライセンス権を獲得した。この技術は、木質系バイオマスからエンタノールを製造するもの。木質廃棄物を原料バイオマスとして、酸による加水分解工程でヘミセルロースの分解を行い、キシロールなどのC5糖化する。C5糖を回収後、廃棄物を希硫酸法で加水分解しC6糖化。これを回収したのちm、BCインターナショナルが開発した菌体であるK011を用いて、C5糖からアルコール発行を、またC6糖からはイースト菌によるアルコール発酵を行い、それぞれのアルコールを上流無水化して燃料アルコールを取り出すというもの。分解されないリグニン分は蒸留塔下部から抜き出され、ボイラー燃料として使用される。
両社はでは、まずバガスが豊富なタイにおいてバガスベースのエタノールプラントの建設を目指すとしている。標準的な設備の規模としては、年間60万トンのバガスや廃木材を処理し、同8万klのエタノールを生産する。この規模では建設費は60〜70億円となり、生産コストはリッターあたり30円以下になると見込んでいる。
また、今回のライセンス契約では、BCインターナショナルが将来開発するエタノール以外の有機酸や糖類の生産プロセスの使用権も含まれており、丸紅および月島機械では、これらの技術をベースとしたバイオ・リファイナリーの展開も目指すとしている。
バイオマスは生物体資源であり、特に植物体のバイオマス資源は二酸化炭素を吸収した形であるため、それを燃焼しても二酸化炭素の発生量をカウントされない“再生可能資源”である。
従来は、主にボイラー燃焼による排熱利用の発電システムが主流であったが、最近では発酵プロセスを用いることでメタンガスを回収。これを燃料として発電を行う「バイオガス」システムが注目を集めている。
また、メタンが効率よく回収できれば、メタンをベースとしたガス化学プロセスにも使用できる可能性がある。
これまで、経済性の問題から、あまり普及してこなかったバイオマス利用だが、様々な技術の登場により、利用の拡大が期待されるところだ。
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