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国際市場の動向
市場動向、国籍別動向
経営動向
企業ランキング

ENR国際ランキングにみる世界エンジニアリング企業


 ENR誌恒例の世界のエンジニアリング企業の海外売上高によるランキングが発表された。2000年の建設(Contracting)売上高・設計(Design)売上高とも前年並みの水準におわった。海外が建設・設計とも1桁台の減少となったのを国内が建設・設計とも1桁台の増加でやっとカバーしたという状況であった。建設受注高は国内・海外・合計とも7%前後の好調な伸びとなっている(表1参照)エンジニアリング・建設各社はM&Aや事業再編により、企業の生き残りと成長を図っている。


 今回引用するENR誌のランキングは、デザインファームのTop200 Internatinal Design Firms(July 23)、コントラクターのTop225 Internatinal Contractors(August 20)で、それぞれのInternationalランキングおよびGlobalランキングと解説記事により、世界のエンジニアリング建設企業の動向を見ることにする。ここでいうInternatinalランキングとは各社の本社所在国以外への数値によるもの、Globalランキングとは各社の内外合計数値によるもの。かつてとちがい売上高がランキング基準となり分析されており、必ずしも業界のトレンドを示せていない。Globalランキングも分析されておらず、世界のエンジニアリング建設業界の動向を示せていないなど問題もあるが、世界の動向を示すほとんど唯一の数値である。
 2000年の海外売上高が減少した要因の一つに前年建設で2位、設計で8位であったKvaernerが参加しなかったことがある。参加しなかった理由はKvaernerが昨年、建設部門をSkanskaに売却し、業容が変化、ランクが下がることを避けるためのようだ。これを別にしても2000年の海外売上高は建設・設計とも低迷しており、これは97年のアジアからはじまった経済危機による受注減に起因している。国内は米国が好況が続いていたものの、他の地域は微増もしくは低迷であったため、建設・設計とも1桁の伸びにとどまった。建設受注高は前年に続き内外とも好調であった。また設計も受注ベースでは好調が伝えられておる。アジア・中南米市場はいつ上昇するか、石油価格上昇の影響が中東など産油国市場にどの程度影響するか、米国市場の今後の動向はどうなるかなどが問題と業界はみているという。しかし米国発信のIT不況は影響は素材レベルの産業の設備投資低迷にまできており、世界的にエンジニアリング建設市場に大きく影響することは避けられない。

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国際市場の動向

 表2に地域別の海外売上高を示した。建設売上高では米大陸以外は前年減となった。とくに米国・カナダの伸びが著しい。設計売上高は各地域とも減少となった。
 アジア市場は全体としては軟調だ。香港・シンガポールなど期待できる市場もある。香港はインフラ、民間双方だが、民間は景気低迷が懸念されるという。中国は各社が注目している市場だ。石化プロジェクトなども期待市場だ。国内プロジェクトに関して設計(design)についてローカルな設計組織と競合が許され外国企業へも開放されるという動きにも注目している。
 インドネシア・ベトナムなど他の地域は期待がむずかしい。インドは市場としての評価は難しいが、エンジニアリング供給基地としての関心が高まっており、各社のロウコストエンジニアリングセンター設置の動きが目立つ。
 中東は石油の高価格の影響が出てきており、石油・石化だけでなく、インフラ分野の投資がでてきた。しかしブームは期待できないという。ガスプロジェクトへの期待が大きい。上下水道・淡水化などが動いている。
 アフリカでは産油国が中東と同じ動きとなっている。ナイジェリアがその例だ。南アは競争が激しい市場だ。他の国はさまざまだが国際機関の基金によるプロジェクトが多い。
 中南米はチリが改善の方向、ブラジルは期待できるが、アルゼンチンは期待できないという。
 欧州ではドイツは国内市場低迷で、ドイツ各社は国際ビジネスにもっともハングリーだ。フランスは経済良好で、建設市場も良好だ。英国は良好な市場だ。リスクの移転は高度、顧客の要求は高度という厳しい市場だが、規模は維持される。しかし新規企業の参入は難しい市場だという。水関連が好調だが英国政府は輸送など公共分野のプロジェクトを進めており、PFIなど民間主導PJへの信頼は長期の繁栄に繋がるとみている。その他、アイルランド・ギリシャのインフラブームもあるが、これはEUの開発ファンドによるという。
 中東欧市場はEU加盟のためのインフラ建設がはじまった。今後もEUからの支援が大きな市場となる可能性があるという。ポ−ランドは成長がダウンするが、チェコが期待できるという。この市場はローカル企業間の競争が激しい。ロシアは困難な年が続くと見られる。外資の直接投資以外投資が期待できない。
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市場動向、国籍別動向

 海外売上高の市場別売上高を表3に掲げた。これによると、プロセス産業・石油関連の減少、インフラの堅調が目立つ。Kvaerner不参加の影響もあるが全般にハイドロカーボンはじめとするプロセス関連市場の97年来の低迷を示している。なお、通信が2000年から新たな分類となった。表3のその他の前年比は通信を含めたものの前年比。
 海外売上高の国籍別売上高を表4に掲げた。これによると、前述した国内市場低迷に対応したドイツ企業、アジア危機後の韓国企業の国際展開が両国の企業の前年比急増となって表れている。中国企業は能力範囲を拡大,競争力を拡大しつつある。中国企業は前年は急増したが、本年は2桁減となった。
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経営動向

 ENR誌は「国際コントラクターは池で泳ぐアヒルのようだ。水面では動きがほとんどない、しかし水面下でアヒルは懸命に足を動かしている。国際コントラクターのM&Aの動きは静かな市場で漕いでいるようなものだ」という。デザインファームについても「大手企業は世界的展望の元で活動し、M&Aの動きがはじまった」と述べている。すなわちエンジニアリング・建設業界全体にM&Aの動きが進んでいる。
 デザインファームでは、オランダのNedecoとNethconsultとが統合した。どちらも小オランダ企業の連合体。Internatonalデザインファームランキングで昨年AGRAを合併したAMECに次ぐ2位となった。他にもAtkinsのBenham統合、AECOMのMaunsel統合がある。Globalランキング一位は一昨年大型合併したURSだ。
 最も最近の事例はMontgomery WatsonとHarzaの合併で、2001年6月にMWH Globalとなった。人員5500人、30カ国に展開、売上高7億ドル以上。水のMontgomeryと環境のHarzaの統合。顧客がone stop shoppingをもとめ、エンジニア企業がコントラクター・プロジェクトマネージャー・企業家への転換という時期に対応した企業基盤拡大であり、国際展開強化の狙い。国際展開は98年に英国PJでBechtelに勝ったことがステップとなった。
 世界中でローカルプレゼンスを増すことは大手デザインファームの戦略となっており、ローカルパートナーを求める動きが目立っている。
 プロセスコントラクターのM&Aとして、最も最近の動きは、本欄でのべたTechnipによるオフショア企業Coflexipの統合である。成功すれば、欧州最大のプロセスコントラクターの成立である。オフショア・パイプラインを含めて石油企業の全ニーズに対応できる企業だ。なお。Coflexipの子会社は今年のはじめAckerから深海部門を買収している・
 欧州コントラクターの事業とくに国際事業再編の動きが続いている。VinciはCompenon Bernard、Dumez-GTMという大手2社が統合売上高150億ドル以上の,巨大企業だ。2000年global売上ランキング1位の企業となった。
 Phipp Holzmannは6000人を減員した。海外分野は60%、2001年は75%になるという。これは国内が不振に対して海外は米国のJonesなど優良企業であるからだ。
 Hochtiefは国際事業のコントロールを本社コアから外し、Hochtief Constructionにスピンオフした。住宅の低迷と米国オーストラリアでのM&Aが海外比率を10年前の10%から80%に上昇させた。米国事業はTurnerである。オーストラリアでは2001年になってLeighton Holdingの支配権をとった。Leightonは通信インフラ分野の企業で、Hochtiefにとって新分野。海外企業事業は自立しており、本社のコントロールは特別PJのみという。
 Skanskaは80年代から米国に進出、90年代に拡大した。97年に本社が米国企業からCIを導入、コングロから建設不動産に集約再編した。米国から売上の1/2利益の1/4を得ている。米国事業での成功体験を欧州にも応用しようとして、昨年Kvaernerの建設部門(Skanska Construction)を買収など、英国・ポーランド・チェコで大手企業を買収している。
 オーストラリアのLend Leaseは建設事業をロンドンのCM企業Bovisに統合した。アジア大洋州には強いが、国際化時代に他地域にも拡大し、グローバルな顧客にアクセスするためだ。
 売上高よりもマージンに重点を置く企業が増えている。例えばSkanskaだ。長期売上スキームを目指す企業ももある。例えばBovis Lend Leaseだ。ファシリティマネジメントに進出、M&Aも狙っている。米国でも軍のファシリティマネジメントをとっている。英国で劇的に伸びているPFIの長期アウトソーシングもある。
 BOTプログラムのファイナンスPJが再び、仕事確保の手段として前面に出てきた。例えば、FluorのLondon事業の海外売上に貢献しているのはオランダの高速鉄道システムのBOT契約だ。Bouyguesの海外売上の多くはBOTかデザインビルドだ。もっとも途上国のBOTはコストがかり、政府相手ではうまくいかず先進国向けのスキームという意見もある。
 欧州でも米国同様従来のデリバリー方式にかわってプログラムマネジメント・CMの需要が増えており、これを武器とするとBovis Lend Leaseはいう。
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企業ランキング

 表5にランキングを示す。これは建設(Contracting)設計(Design)合計の海外売上高によってランキングしてある。
 International ContractorではHochtief、Skanska、Bechtelの順、10位まででは欧州建設企業が7社、プロセス企業がほかにKBR・Fluorの計3社。Global ContractorではVinci、大成、Bouyguesの順、Bechtelは4位となった。10位まででは欧州建設企業は4社、日本企業はあと鹿島、清水、大林、竹中の大手5社。International・Globalとも欧州建設企業の上昇が著しい。
 International Design FirmではAMEC、NEDECO、Bechtelの順、10位までではコンサルタント企業が5社、エンジニアリングコントラクターがあとABB Lummus、Foster Wheeler、KBR、Jacobsの5社。Global Design FirmではURS、Bechtel、AECOMの順、10位までではコンサルタント企業が6社、エンジニアリングコントラクターがあとJacobs、Parsons、Fluorの4社。両デザインファームランキングとも米国以外のコンサルタント企業の上昇が目立つ。
 建設・設計あわせたランキングでは量的関係から、コントラクターランキングとほとんどかわらない。ただしエンジニアリングコントラクターの位置が若干上昇、例えばGlobalランキングでBechtelが2位に上昇している。
 専業3社をみると、日揮がコントラクターでInternational23位、Global72位、デザインファームでInternational13位、Global29位、合計でInternational17位、Global61位。日揮は合計売上高のInternationalランキングでエンジニアリングコントラクターとしては11位になる。TECは同じ項目で各39位、111位、38位、98位、37位、108位。千代田化工は同じ項目で58位、122位、106位、NA、62位、127位(同社の場合、EPC契約のE部分をDesign売上にいれているか疑問である)
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