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ほぼ横ばい、総受注の27%に低迷
海外市場―30年来の受注最高記録、輸出比率73%に
機種別動向―米国発電所案件と化学の回復が牽引力に

ドイツのプラント受注、昨年急回復、海外依存強まる


 ドイツ機械プラント協会(VDMA)のプラント建設協議会(AGAB)会員企業による2000年度受注高は315億DMと、内外市場とも低迷した前年との比較では34%の大幅増加であったが、過去10年間の平均をわずかに上回る水準となった(表1)。この受注回復はもっぱら海外からの需要の飛躍的な増加に起因している。これに対し、国内受注の比率はわずか27%に低下した。この傾向は継続し近い将来も、主要な顧客は海外市場に見出すことになる見込みである。


 2000年度の輸出比率は、99年度の65%から73%に上昇した。海外の顧客はとくにドイツのプラント建設の高い技術的競争力、そしてプラントの立案・設計と並んで、ファイナンシング、運転から性能保証(Verfuegbarkeitszusagen)、バイバック協定、さらには販売支援措置に至る各種の付帯サービスを評価したものである。こうしたパッケージ提供者となることによって、ドイツ企業は海外の激しい競争に対し、成功を収めることができる。その際、ユーロ安もドイツ企業の価格競争力に有利に作用し、海外受注増の一因であった。会員企業は今年度についても楽観的で、大多数が、伸び率は一桁に落ちるものの、好調な受注を見込んでいる。

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ほぼ横ばい、総受注の27%に低迷

 国内受注高は84億DMと前年の83億DMの2%増であったとはいえ、総受注に占める国内受注比率は27%に後退し、内外受注の格差はさらに開いた。国内市場の今後の発展は、連邦政府により実施された税制改革が実際にドイツの産業立地に有利に作用するかどうかにかかっている。また、予想される発電所建設の停滞脱出が国内プラント市場にインパクトを持つ可能性もある。しかしすでに90年代半ば以来顕著であった2,3のプラント顧客分野の飽和化傾向(とくに環境保護プラント市場)からみて、国内業務の基本的傾向の逆転が短期的に生じる可能性はないと思われる。
 分野別にみると(表2)、前年同様、電気設備がプラント建設の最大の受注分野となっている。とはいえ、その受注高自体は、前年の20億DMを38%下回る13億DMに大幅減であった。しかし、電気設備の発注は景気動向に遅れて反応することを考慮すれば、近い将来、受注の回復が期待される。
 発電所の国内受注は、93年の50億DMをピークに一貫して減退してきた。2000年度は前年同様にわずか10億DMの受注にとどまった。したがって、発電コントラクターは、電力自由化の犠牲者となっているといえよう。潜在的な投資家が、電力価格の先行き不透明からきわめて投資に慎重になっているためである。これにたいし、発電コントラクターは、大口契約の低下を、メンテナンス・サービスの売上増により一部埋め合わせてきた。
 化学プラントは40%増の12億DMと、プロジェクト数減退で落ち込んだ99年の9億DMから、記録的だった98年の水準に回復した。
 金属精錬・圧延プラントの受注は、前年の5億DMから4億DMに減退した。これに対し、パルプ、紙、紡織産業向けプラントは好調で、前年の3億DMに対し4億DMの受注を確保した。
 環境保護プラントの受注は前年比では15%増であるが、受注の絶対額は2億DMと、過去10年平均(11億DM)の5分の1に満たなかった。この原因は市場の飽和化である。70年代と80年代の環境立法によって生じた投資推進力はリプレースや拡張を除けば終わりを告げた。
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海外市場―30年来の受注最高記録、輸出比率73%に

 2000年度の海外受注高は、アジア・中南米・ロシアなどの地域危機の影響があった99年度(152億DM)を51%以上上回る231億DMに達し、30年前の受注統計導入以来の最高額となった。輸出比率は1981年以来最高の73%に達し、過去10年間の平均を10ポイント上回った。この好調な輸出実績に特に貢献したのは、先進工業諸国からの受注が、前年の44億DMから72%増の76億DMと高い伸びを示したことである。その他世界の多くの諸国も発注を増加(平均61%)したが、東欧(CIS諸国を含む)だけは、特にファイナンシング面の問題や法的環境の不安定が投資家をしり込みさせているため、受注が微減となった。
 発注額上位3ヶ国は、米国が20億DM(前年は11億DM)、トルコ17億DM(1億DM)、UAE10億DM(7億DM)であった。米国における受注増加は全プラント種別にわたっており、同国産業の好景気を反映している。これに対し、トルコではエネルギー部門の大型プロジェクトが寄与した。前年首位の中国は9億DM(16億DM)にとどまり、4位に後退した。EUの最大の顧客国イタリアも同額の9億DM(4億DM)で5位となった。この5カ国合計では65億DMと、全海外受注の約3分の1を占める。
 受注額の規模からみると、2500万DM以上と定義している大口契約が132件、合計139億DMと全体の3分の2を占め、前年の95件、72億DMから急増している。1件当り2億5000万DM以上の契約は13件、合計56億DM(前年は4件、17億DM)と大幅に増加、海外受注全体の30%近くを占めた。1億〜2億5000万ドルは23件、33億DM、2500〜1億DMは96件、50億DMで、それぞれ前年比で増加している。
 地域・経済圏別にみると、先進工業国では米国と西欧の好況から、大口プロジェクト受注件数が倍増、55件、45億DM(前年は27件、14億DM)を獲得した。アジア太平洋圏は危機以前の水準に比較すればなお約3分の1を下回っているとはいえ、30件(19件)、37億DM(85%増)と顕著な回復を示した。中近東諸国では12件、18億DM(10件、10億DM)、東欧・CIS諸国では9件、4億DM(9件、6億DM)をそれぞれ受注。その他世界諸国からは、26件、35億DM(30件、22億DM)を受注したが、このうちラテンアメリカでの受注は12件、16億DM(6件、9億DM)であった。
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機種別動向―米国発電所案件と化学の回復が牽引力に

 2000年度は、主要なプラント種別のすべてで著しい受注増を実現できた。しかしその程度は地域や分野で様々である(表3)。最も景気浮揚の恩恵に浴したのは、発電および化学プラントのコントラクターであった。全海外受注の60%近くがこの両部門で占められた。
 発電所の受注は前年を110%上回る89億DMと記録的な年となった。特に先進工業国からの需要が著増(140%以上)した。なかでも米国におけるガスタービン・ビジネスとガス・スチーム複合発電所の好調が際立っている。しかし、アジア市場においても、ドイツ企業はシェアを回復できた。また2,3の中進国でも重要な契約発注があった。発電分野の受注は全海外受注の45%(前年は35%)を占めた。
 金属精錬・圧延プラントは、景気上昇による鉄鋼需要回復から投資活動が活発化、受注は10%増の29億DM(26億DM)に達した。アジア太平洋圏の受注は、前年の低迷(3億DM)から120%増の7億DMとなった。先進工業国のプラント発注は30%増の12億DM(9億DM)であった。
 化学プラントの受注は、前年に14億DMに減退したあと、2000年は26億ドルに回復した。有機化学プラントがうち24億DMを占めている。この受注増加は、その他世界諸国からの大幅な受注の伸び(180%増)が寄与しているが、先進工業国からの受注倍増も大きな要因である。
 環境保護プラント受注の33%増は、一見高い伸びと見られるが、絶対額が2億DMと最近10年の平均5億DMを大きく下回っていることから、見るべき成果ではない。
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