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LPG業界も注目
将来は「再生可能エネルギー」に
2006年には日本に供給開始
2002年度から研究開始

DME導入に向けエネ庁が報告書


 経済産業省資源エネルギー省が昨年12月に発足した「DME(ジメチルエーテル)検討会」がこのほど報告書をまとめた。2006年に燃料として日本への供給開始が計画されているDMEを次世代燃料として位置付け、その政策課題をまとめたもの。これを受けてエネ庁では、2002年度予算でDMEの研究・開発に関する予算要求を行う考えだ。

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LPG業界も注目

 DMEは、天然ガスをはじめ様々な原料から製造することができ、しかも自動車用から発電用、さらに燃料電池用としても可能性を持つ「マルチソース、マルチユース」の次世代燃料である。また環境特性にも優れており、しかも常温常圧ではガス体で低温あるいは加圧によって簡単に液化できるため、ハンドリングは液体で、消費時はガスであるという取り扱いの容易さも併せ持つ。
 物性はLPGと類似しているため、LPGインフラを利用でき、導入面でのコスト障壁も少ないなど様々な利点を持っている。
 一方、サウジアラムコがLPG価格決定方式を通告価格(CP)制度に変更して以来、中国やインドでの需要増加を背景に、LPG価格は高騰を続けており、他の燃料に対して価格優位性を失いつつある。そこでLPG業界でも供給のデボトルネックの一環としてDMEに対して強い関心を示しているのだ。
 エネルギー政策上でもアジア太平洋地域に存在する中小天然ガス田の有効活用ができるため、供給の多様化、エネルギーセキュリティの面からもLPG業界は導入推進を提言している。
 DMEの製造・供給が実現するかどうかはDMEの製造・輸送コストがカギとなる。
 報告書では、天然ガスを日本に持ち込む手段としてのLNGとDMEの製造・輸送コスト比較を行っている。
 LNGの場合、天然ガスを液化するためにマイナス163℃という極低温が必要であり液化・輸送コストが高くなるため、プラントの規模は400万t/y以上、ガス田埋蔵量5兆cf以上でなければ経済性がでないとしている。これに対してDMEは沸点が−25℃とLPG並の設備で貯蔵・輸送できるため、DMEプラントの規模はLNG換算で100万t/y規模(DMEでは170万t/y、5,000t/d)で経済性が成り立つとしてる。LNGの4分の1〜5分の1程度の規模で良いことになる。ガス田の埋蔵量も小さくて済むので、アジア太平洋地域に70程度1〜3兆cfのガス田や、それ以下の約200程度のガス田を有効活用できる可能性を持つ。
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将来は「再生可能エネルギー」に

 ハンドリングの容易さは、LPGと同様に島国で平地の少ない日本の地勢に適した“分散型燃料”となり得るとしている。また、セタン化が高く粒子状物質(PM)が排出されないDMEの特性は理想的なディーゼル燃料である。さらに燃料電池用燃料としてもメタノールに比べて腐食性が低く反応温度も低いため天然ガスやガソリンに比べて装置が小さくなり、運転性も良好と見られている。そのため将来の燃料電池自動車や家庭・業務用の燃料電池コージェネの燃料としても有望視されている。
 製造面でも、一酸化炭素と水素の合成ガスから製造されるため天然ガスだけでなくバイオマス、産業廃棄物、石炭など様々なものが原料となり、将来的には「再生可能エネルギー」としての位置付けも可能と期待される。
 注目されるのは、一般にガス田では圧力が非常に高く輸送が困難なため有効活用が十分になされていないエタンも、将来的にDMEの原料とすることも考えられるとしている。
 LPG用ガステーブルなどで燃焼させる場合には空気が多すぎるため、燃料ノズルを増やすなどで一次空気量を絞る必要があるが、一次空気がゼロでもすすが発生しないため、その設計は容易。
 ただ、空気に触れた状態では極めて少量ではあるものの爆発する可能性のある過酸化物が生成される。また不純物の種類によっては分解爆発を起こす可能性がある。そのため保安面で熱や衝撃、静電気、不純物混入など取り扱い条件を想定し、危険要因を挙げて検討する必要があるとしている。
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2006年には日本に供給開始

 これらの特性から燃料としてのDMEは非常に有望視される。実際に、日本では三菱ガス化学、日揮、三菱重工業、伊藤忠商事の4社が豪州・ダンピアで4,000〜7,000t/d規模のDMEプロジェクトを進めるべく、6月にFS会社を設立した。
 また、BPもインドの企業連合とDMEコンソーシアムを作り、カタール、イランなどで直接合成法(トプソープロセス)でDMEを製造、南インドの発電所に2005年をメドに供給を開始する考えだ。また余剰のDMEに関しては日本に供給する意向もあるとしている。
 BPではガスタービンおよびガスエンジン発電燃料としては液体燃料に比べてメンテナンスコストが大幅に低減されるため十分な経済性があるとしている。
 さらに、日本でスラリー床リアクターによる直接合成法を開発しているNKKなどは来年度から100t/dの実験プラントの建設をはじめるほか、海外で2,500t/d規模のプラントを建設し2006年をメドにDME供給を開始する構想もある。
 これらの計画が順調に進めば、2006年には本格的に燃料DMEの日本への供給が開始されることになる。
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2002年度から研究開始

 このため、2006年までにはDMEの輸入および流通に係る法的整備を進めておく必要がある。
 DMEの物性はLPGと殆ど同様であるため、基本的にプロパン設備での取り扱いの問題はない。しかし、ゴムやプラスチック等に対する膨潤作用があるため、パッキンやシール材の耐性の問題があり、フィールドテストが必要となる。
 また、充填所ではLPGの場合にはタンクを地下埋設することで保安距離の緩和措置があるが、一般高圧ガス保安規制ではそれがない。そのため、DMEを導入する場合、都市部のLPGスタンドでは保安距離が不足して転用が不可能となる。この点の緩和が規制面での課題の一つとなっている。この規制は工業ユーザーにも適用されているため、需要拡大の阻害要因となる可能性がある。
 また、DMEの純度については従来日本国内で流通しているDMEが99%以上であるのに対し、BPは85%程度としている。そのため、不純物混入の問題を検討し、国際規格として日本から世界に提案していく必要があるとしている。
 報告書では、導入を進めるため製造、流通、利用の各分野で技術基準などの整備を進めるとともに、新エネルギーとしての位置付けを明確化し、導入初期における支援策が必要としている。
 これを受けて資源エネルギー庁では、2002年度から3年間にわたり、安全性の確認などについて調査を行う考えであり、そのために、予算要求を行う。また利用面についても5年間にわたり研究開発を行っていく方針で、これについても予算要求を行うとしている。
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