エンジニアリングアウトルック
◆総論
リストラ後の方向性が問われる
経済産業省国際プラント推進室がまとめた、2000年度のプラント輸出成約額は152億3,000万ドルとなり、史上最低だった1999年度に対して2倍近い伸びとなった。しかし、この数字によってプラント輸出が本格的に回復したということはできない。
2000年度の輸出額が飛躍的に伸びたのは、台湾高速鉄道プロジェクト、黒海天然ガスパイプラインという超大型案件がカウントされたという特殊要因こよるもの。北米地域における発電プラント需要が高水準で維持しており、しかも今年度に入ってからは既に2件のLNGプラントを日本勢が受注しているなど、日本のエンジニアリング業界にとって追い風となる状況はあるものの、それはプラント輸出全体の一部にすぎない。そのため、2000年度の業績ではプロジェクトを獲得したところと、そうでないところというように明らかに明暗が分かれる状況となった。日本のプラントビジネスが本格的に回復するには、アジア地域の本格的な立ち上がりを待たねばならない。それにはまだ時間がかかると見たほうがよさそうだ。
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一方、エンジニアリング業界では過去の負債を払拭すべく徹底したリストラクチャリングを推し進めてきた。人員削減など固定費の削減とともに、財務リストラも敢行。その成果により、業績は回復しつつある。また、2000年度では幾つかの企業が統合・再編に踏み切った。小野田エンジニアリングはアサノテックなどと合併し太平洋エンジニアリングに。また甲陽建設もグループ企業と統合し日陽エンジニアリングとなった。さらに、製鉄機械事業で三菱重工業と日立製作所が統合したほか、NKK〜住友重機械工業〜日立造船もジャパン・スチール・プランテックを立ち上げた。重電では、送変電・受電分野で三菱電機と東芝、日立製作所と富士電機〜明電舎の2グループに再編された。いずれも、同一の分野で多くの日本企業が事業を展開していたが、国内市場の縮小と海外における欧米コンペティターとの競争力格差が大きな問題となっていた分野である。他社と事業を統合することで、海外市場での拡大を狙う。また、今年4月に発足したエンバイロメント・エンジニアリングは、これまで日本が弱いとされてきた海外での環境設備エンジニアリングを専門とする。海外の環境市場という日本の企業にとって新たな市場の開拓を目指すものだ。
アライアンスの動きも活発だった。なかでも三菱重工業と近畿車輛の海外鉄道プロジェクトでの提携は、日本が欧米に比べて競争力のない鉄道プロジェクトのターンキー案件獲得を狙う動きだ。鉄道プロジェクトがプラント輸出のなかで無視できない規模に成長しつつあるなかで、日立製作と川崎重工業も同分野で提携を行ない、積極的に市場開拓を図ろうという考えだ。
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リストラの敢行とアライアンスによる構造改革は進んだ。これらにより財務体質は強化された。エンジニアリング業界の次の発展へ向けた準備は整った。問題は将来に向けた方向性を打ち出しているかどうかである。
専業大手エンジニアリング会社でも、日揮がガス関連プロジェクトの上流展開、千代田のLNGおよびアライアンス戦略、TECのeソリューションおよびEPC案件のグループ戦略というように、3社それぞれに異なる戦略を打ち出している。
造船重機でも、ガスタービンや環境分野など、各社が強みを持つ分野への傾注を強めており、事業の「選択」は確かに進んできている。
その一方、ハードあるいはEPCビジネスを核としたサービスビジネスや、ソリューション型ビジネスの拡大など、事業を選択しつつもそれに関連したソフトビジネスの拡大を目指す企業は多く、事業の幅が広がりつつある。
こうしたソリューション型ビジネスへの展開はニーズに沿った部分もあるが、マーケット対応というよりもサプライヤー側の収益源の拡充のためという要素が大きいように見える。
こうした各方向での事業展開=戦略を各社は打ち出してきてはいるが、それらが成果を見せるようになるのはこれからだ。
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3社とも2000年度受注目標を突破
2000年度の受注は日揮が3000億円、東洋エンジニアリング(TEC)が2000億円、千代田化工が1000億円を超え、3社とも前年比増となった。ハイドロカーボン市場の好転が背景にある。特に2001年度に入ってから、千代田化工のカタールLNGプラント、日揮のオーストラリアLNGプラント、千代田化工・TEC JVのイラン肥料プラントなど好調な受注がつづいており、2001年度の各社の受注目標=日揮2700億円、千代田化工1500億円、TEC1400億円を達成できる勢いだ。このように千代田化工・TECの再建計画の実行環境は好転しつつある。
日揮は業務効率改善・固定費削減などの結果、純利益で50億円弱と黒字定着が見えてきた。中期経営計画「日揮成長のシナリオ」は世界のエンジニアリングコントラクターのトップランナーであり続けるためEPCビジネスの分野拡大を図るとともに、顧客のニーズに応えたサービスビジネスも目指す。
千代田化工は2000年11月に新再建計画を発表、半額減資と増資を実施した。事業の選択と集中を徹底、人員減・事業領域の見直し(海外環境ビジネス・自動車プラント事業分離、IT・環境コンサル子会社の売却など)を進めている。荏原・NKK・CTCI・CCCとの提携などアライアンスを正面に出している。LNGについてはEPC以外に7件のFEEDを受注しており、EPC受注が期待される。LNG以外ではBPAなどのスペシャルティケミカル分野展開、国内重視の姿勢が見える。
TECは2000年1月に第2次再建計画を発表、海外でのトランスナショナル体制への移行、国内での提案ビジネスの構築が進んだ。トータルソリューションプロバイダーを新ビジネスモデルとし、プラントEPC事業のIT化・ソフト化の推進、eソリューション事業の育成を目指す組織に変更している。なお、2000年度のプラント・IT別業績ではプラントは売上高1046億円・営業利益22億円、ITが売上高118億円、営業利益13億円となっている。プラントEPC事業のポイントは、海外子会社との連携・赤字JOBの解消・中小案件へのシフト・提案ネゴ案件増という。
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事業再編が本格化
2000年度の業績は比較的好調だった高炉5社のエンジニアリング部門だが、それもダイオキシン恒久対策の駆け込み需要で国内環境設備が大幅に拡大したことによるもの。新日鉄では年間最多の6件の溶融炉を、NKKもガス化溶融炉などで多くの案件を獲得。神戸製鋼はガス化、流動床、ストーカ炉の全メニューで受注を獲得した。2001年度以降は2000年度の反動で暫くはごみ焼却炉の発注も控えめになってくるため、受注面では減少を余儀なくされると見られている。そのなかで環境分野はプラント販売以外の動きが目立った。土壌浄化への参入をはじめ、NKKの高炉原料化、川鉄の産業廃棄物処理など、ソリューション型の事業展開が本格化。事業の幅が広がっている。
高炉エンジニアリングの機軸でもある製鉄プラントでは、技術協力などソフトを中心としたものになりつつある。各社の受注状況を見ても、鉄鋼事業で協力関係にある海外企業の案件が中心。中国・上海宝山など期待される大型プロジェクトもあるが、海外では欧州勢に対抗しきれていないのが現状だ。
そのなかで、NKKは住友重機械および日立造船と製鉄エンジニアリング専門の会社「スチールプランテック」を設立した。また川崎製鉄との統合により、川崎製鉄の製鉄プラント部隊もここに統合される見込みであり、鉄鋼事業の統合に伴って、エンジニアリング部門の統合再編も進んでいきそうだ。これまで各社とも同様のメニューで事業を展開してきたが、統合再編を目前にして変化しつつある。
一方、環境/製鉄以外で最も期待されるのがエネルギー分野。新日鉄が国内初のLNGプラントを受注したほか、NKKも千代田化工とアライアンスを組んでLPG備蓄基地で実績を築いた。また、バイオガスや太陽光発電、そして燃料電池など分散型電源への取組みも活発化してきた。さらに新日鉄では電力小売事業にも進出するなど、エネルギー関連分野が大きな期待分野となった。
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ハードを核としたサービスビジネスに注力
国内環境装置発注量の増加や、海外向け発電設備および鉄道関連プロジェクトなどにより、造船重機の受注高は増加した。
特に環境装置はダイオキシン恒久対策の本格実施を前に、最後の駆け込み需要で発注量はピークに達した。同時に、ガス化溶融炉の発注も急激に増加し、新規参入組との激しい競争状態となり、プラント価格の下落傾向は一層進んだ。そのため、各社ともコストダウンや経費削減を進めている。また、日立造船と三井造船、三菱重工と住友金属工業というように、環境分野におけるアライアンスが進んでいるのも最近の特徴といえる。
一方、三菱重工業と三井造船はそれぞれ、米国からの技術導入で土壌環境修復事業をスタート。プラント販売からサービス事業へ、環境事業の幅を拡大しようとしている。
発電設備に関しては、北米市場の急速な拡大により、各社とも受注を伸ばした。また、北米では長期メンテナンス付の契約が主流であることから、三菱重工ではメンテナンスサービス事業の体制を整えている。こうしたサービス分野への動きは各社共通しており、石川島播磨重工業ではグループ全体で各事業分野における部品工事およびメンテナンス事業を拡大させていく方針。また日立造船でも今後ソリューション型ビジネスを拡大させていくとしている。三井造船はプラント納入後のアフターサービス・運転までの製品ライフサイクルサービス事業の拡大を図る。その一方で、造船や製鉄機械など世界的な競争力が問われている分野に関しては統合再編の動きが進んでいる。
ハードの製作で充分な利益を確保していくことが難しくなっている状況で、ハード面ではアライアンスなどを含めて開発・製造のコストダウンを進める一方、そのハードを核としたサービス分野の拡大により収益性を高める方向に造船重機各社は動き出している。
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海外展開、サービス事業がポイント
国内電力会社の設備投資抑制で大きな影響を受けているものの、2000年度に関しては比較的好調に推移した。特に、原子力でBWRを扱う東芝および日立とその工事会社2社は、東京電力・女川3号が売上に立っているほか、既存原子力の定検工事が業績を支えた。また、火力発電設備でも東京電力・品川火力や中部電力、碧南火力、電源開発および四国電力の橘湾火力などがあり、国内電力向けは増加傾向にあった。
しかし、今後国内は減少する。そのなかで各社は、世界の発電設備需要を牽引している北米地域を重点として海外の拡大を目指している。
東芝と日立は、GEを経由した北米向けの案件が増えているが、今後は独自で受注する分野の開拓を急ぐ。日立では自主ライセンスとして販売しているH25ガスタービンを軸に展開。東芝も海外拠点の人員強化を進め、独自展開を図る。一方、シーメンス技術の富士電機もシーメンス経由で北米向けが拡大。川崎のタービン・発電機新工場も完成しており、9月には輸出向けなどでフル稼働していく。三菱電機は、今後北米地域での系統設備需要が拡大していくと見て力を入れていく。
系統設備では、三菱と東芝、日立と富士電機、明電舎の2グループに再編され、それぞれのグループが海外市場での受注拡大を狙っている。
サービス分野も今後のポイントの一つ。三菱電機は重電4社のなかで唯一エネルギーサービス会社に出資し、分散型電源事業を行なう。東芝、日立製作所もメンテナンスサービスの拡充を図る。特に日立ではESCO事業も展開しており、順調に拡大しているという。
重電工事会社は、親会社経由以外の独自分野の拡大が課題。東芝プラント建設は国内IPP発電のEPC受注を機に、PFIを含めた新分野のEPC拡大を図る。日立は食品・医薬品プラントを拡大していきたい考え。加えて両社とも環境分野の拡大に力を入れている。
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ソリューション展開が加速
山武、横河電機の計装大手2社の2000年度は、両社共に増収増益となり、好調に推移した。
市場としては、国内の産業部門の回復が遅れてはいるものの、半導体などIT関連市場は好調だった。そのIT関連分野も年度後半には急速に減退したものの、両社の業績を伸ばす大きな要因となった。
山武の産業システム事業は、ITとともに自動車市場向けの省エネ対応監視・制御システムを拡販。また化学向けでは汎用製品の大型設備化や高機能製品の増設投資が高まってきたことで、中・大型のMES(生産管理、装置管理システム)の受注が伸びた。横河電機もIT市場の拡大で半導体テスタ、ICハンドラ事業が大幅に伸びて事業の柱として成長した。
プラント向けの事業は、国内市場の冷え込みが続いているが、小口案件は動き始めている。そのため横河電機は、リプレース需要の立ち上がりを予想しており、それに対応すべく準備を進めている。特に、新製品「CENTUM CS3000 R3」を核としたソリューション営業を展開していく方針。また、従来のインダストリアル・オートメーションでの経験をベースに日本オラクルとの提携により、生産システムと経営情報システムの統合化需要に対応していく。そのため、オラクルのソフトをベースとしてMESを手がける専門部隊を設置しており、2001年度で30億円の売上を計画している。
一方の山武も産業システム分野で差別化技術とIT技術の活用によるソリューション事業を、プロダクト事業に並ぶ事業の両輪の一つとして位置付け、事業の拡大を図っている。 機器の製造・販売にソリューションビジネスを加えるというビジネスモデルの転換は、計装機器業界でも進んできている。いずれも、市場で充分に認知されたハード製品をバックとしたソリューションビジネスであり、今後の拡大に期待がかかる。
製品面で山武は省エネおよび環境分野に注力していく。また欧州の天然ガスパイプライン向けに天然ガス熱量分析計を開発。欧州法人を設立して販売活動を開始した。横河は今後、IT事業の拡大を図る。
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医薬・環境・エネルギーがターゲットに
機械系プラント/エンジニアリングでは、石油および石油化学分野が投資低迷で減少した一方、国内環境関連需要に支えられた形になった。
石油分野の新規投資はなく、むしろ統合再編によりプラントも集約されつつある。そのためメンテナンス需要すら減少される傾向だ。石油化学系も同様だが、そのなかでも医薬品分野は引き続き投資が見込まれる。新潟鐵工所が国内初の人工皮膚培養プラントを受注し、この分野の可能性を示した。クリーンルームを扱う大気社でも、医薬品をターゲット分野の一つとして力を注いでいる。
環境関連分野に関しては、全般的に好調だった。クボタや月島機械、タクマなどごみ処理・水処理設備プラントを手がけている企業だけでなく、単体設備を扱う新興プランテック、三菱化工機、ササクラ、そして据付工事の山九なども環境関連分野は軒並み好調に推移した。しかし、国内ごみ焼却炉は発注のピークを超え、2001年度以降は減少する。今後は、コストダウンおよび差別化技術の提案などによる競争力をいかに提示していけるかがポイントとなるだろう。
また、半導体関連も業績に影響を与えた。2000年度上期までの半導体関連投資の活況は、下半期になって急速に衰えたが、それなりに影響はあった。日機装が半導体分野で業績を上げたほか、高田工業所などもこの分野で伸びを見せた。
広く期待されるのがエネルギー分野。国家LPG備蓄基地などで業績を上げた石井鐵工、トーヨーカネツは今後もエネルギー分野の投資が続くと見て、タンク案件のさらなる獲得に向けてコストダウンなどを進めている。一方、注目されるのが日本製鋼所。水素吸蔵合金をベースとしたコージェネシステムを開発するなど、将来の水素社会を見据えた展開を見せている、そのほか、クボタやタクマもマイクロガスタービン、燃料電池などを開発。高田工業所もオンサイトエネルギーをターゲットにメンテナンス部隊を拡充した。
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ソリューションビジネスに注力
2000年度の企業環境は民間設備投資・公共投資の低迷、電子産業の投資が好調であった。水処理専業の栗田工業・オルガノは電子産業向け装置が好調で受注売上増・経常利益増を記録した。環境エンジニアリング大手の荏原は環境主体のエンジニアリング事業は受注・売上とも減だが、精密電子機器事業が大きく増加、機械部門が形式的には増加し、全社では受注微増、売上増だが大幅減益となった。
2001年度は、各社とも公共投資・民間投資低迷継続に加え、電子産業投資の縮小を織込みながら、受注増ないし水準確保、事業再構築などで増収増益を見込んでいる。最近判明した電子産業低迷は各社の想定以上であり、受注には大きな悪影響は避けられまい。
荏原のエンジニアリング事業は水・廃棄物にわたる総合環境事業であり、循環共生社会に向けた複合型環境事業拡大にふさわしいメニューの事業化をすすめている。新エネルギー開発でも風力・燃料電池(バラードとの合弁)・マイクロガスタービンの事業化(機械事業)などがある。PFIなどのニーズに対応したメンテ会社統合再編も注目だ。他社とのアライアンスもめだち、千代田化工・TECなどとの合弁によるエンバイロメンタルエンジニアリング設立は環境ビジネスの国際展開だ。千代田化工から多数株譲渡をうけたITエンジニアリングは情報・通信事業の本格的強化だ。汚染土壌リサイクル分野への進出も注目される動きだ。
水処理2社の事業展開戦略は、要約すると従来のハードの提供だけでなく、ソフトサービスを付加したソリューションを提案するというもの。栗田工業は土壌浄化ビジネスのリーディング企業だ。このほど、政策投資銀行・同和鉱業などと合弁で国内初の商取引に伴う土壌汚染リスク低減の専門事業会社ランドソリューションを設立する。技術だけでなく、必要な機能を総合的に提供する。土壌汚染を単に技術的課題として捉えるのでなく、土地に内在するすべてのリスク要因を捉えることで新しい市場を創造することをめざしている。
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新規分野テコに回復基調
ユーザー系エンジニアリング15社の2000年度(一部2月決算を含む)決算状況は、前期に比べ総じて回復傾向にある。しかし、親会社の新規設備投資が大幅に減少している中、親会社依存度の減少をいかに達成できできたかが明暗を分けた形となっている。石油・先油化学の再編が急テンポで進む状況で、ユーザー系エンジニアリング会社も自らの生き残り策を必至に模索している。
持てる技術を活用して、いかに新規分野に進出できたか。差別化できる分野をいかに持てたか。そして外部受注どれだけ増やせたか。これが業績に色濃く反映している。
このような状況下、増収増益を果たしたのは、旭エンジ、キリンエンジ、昭和エンジ、住友ケミカルエンジ、チッソエンジ、三井化学エンジ、三菱化学エンジの7社。
次期の業績に反映する受注状況を見ると、大幅に受注を増やしたのはキリンエンジ、昭和エンジ、三井化学エンジ。このうち、三井化学エンジは合併による効果が大きい。旭エンジ、クラレエンジ、コスモエンジ、住友ケミカルエンジ、太平洋エンジ、三菱化学エンジ、三菱レイヨンエンジも受注増を果たした。
経営戦略で各社がいずれも打ち出しているのは、コストダウン。グループ会社の投資減および保全、メンテナンス分野の落ち込みをカバーするため、人員削減や経費節減など経営体質のスリム化に努めている。
同時に、新規分野の開拓や新製品・新技術の開発に積極的に取り組んでいる。IT、エレクトロニクス、薬品・食品、エネルギー、環境関連などで保有技術を深耕し、応用して攻めの経営を進めていく姿勢が目立つ。さらに、国内市場の冷え込みを反映してか、海外市場に大きな期待を寄せる企業も多い。
親会社・グループからの仕事を待ち受ける姿勢から、攻めの経営に転じたかに見えるユーザー系エンジニアリング会社の出番は増えそうだ。
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提案型のビジネス展開が加速
建設業界を取り巻く受注環境は依然として厳しい。景気後退感が深まるなか回復傾向を見せない民間設備投資、財政面の制約によって減少が続く公共投資。建設業の先行きは依然として不透明だ。
このような中、各社のエンジニアリング部門の比重が高まっている。
これまで、総合建設業を支ええてきた建築、土木といった本業部門を技術的にサポートする役割りを担ってきたエンジニアリング部門の関連業務が活発化しているからだ。
これに対応して、各社は戦略的な組織編成を進めた。環境関連部門の独立が目立ったのも2000年度の特徴。鹿島はエンジニアリング本部にあった機能を独立させ「環境本部」を設置した.大成建設も「エコロジー本部」を発足させた。エンジニアリング部門と連携をとりながら、環境関連ビジネスを開拓していく。IT対応も目立つ。竹中工務店は「インフォメーションマネジメントセンター」を設置、大林組も「情報エンジニアリング部」を新設。清水建設の情報エンジニアリング部はビル、学校などの施設の情報化に多くの実績を持ち、さらに展開を強化している。
停滞する民間設備投資にあって情報通信関連投資は旺盛であった。また、土壌汚染処理・廃棄物処理など環境関連、風力発電・リサイクル発電などエネルギー関連、医薬品施設、物流施設などエンジニアリング部門が範疇とする分野の投資も活発であった。
さらに、今後さらに削減されることが確実な公共投資の中にあって、唯一、増加が期待できるのはPFI事業である。廃棄物処理分野、エネルギー利用などの分野でPFI手法の導入がますます増えていくだろう。
総合建設業各社は、いずれもこれら事業を今後取り組むべき重点分野にしている。各分野とも共通的に言えることは、いずれもコンサルティング能力が問われる点。いわば提案型のビジネス展開だ。単なる請負業からの脱皮。この鍵を握るのがエンジニアリング部門である。
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プラント関連で業容を拡大
商社の2000年度のプラント関連事業は、台湾高速鉄道プロジェクトや黒海パイプラインなどの、超大型案件によって業績が大きく分かれた。特に、台湾高速鉄道プロジェクトがカウントされた三井物産、三菱商事、丸紅、住友商事と、他の商社では業績に大きな差がついた。
なかでも三井物産は2000年度のプラント輸出成約額を押し上げた2件の超大型案件を二つとも成約したほか、マレーシアの鉄道案件、アゼルバイジャンなどの発電案件、インドのLNG基地など大型案件を複数成約し、プラント事業での強さを見せ付けた。
一方、トーメンはプラント輸出ではイラン向けの案件を獲得。イラン市場で実績を築いた。日商岩井はロシアの天然ガスパイプライン向けコンプレッサー商談を成約するなど、今後成長の期待できる市場・分野で足がかりを築いたことが注目される。
発電ではプラント輸出としては前期とほぼ変わらないものの、事業案件が目立っている。トーメンは電力事業を基幹事業の一つとして位置付けており、国内外で風力発電事業などを数多く手がけている。ニチメンでもメキシコ・ユカタン半島でのIPPが商業を開始。丸紅は国内で三峰川水力発電所を買収し国内の電力小売事業に参画。三菱商事もキュラソーでのIPP参加を決めており、住友商事もベトナムなどで発電事業に取り組んでいる。発電プラント商売から電力事業へ向かう商社の動きが加速していきそうだ。
2000年度で目立ったもう一つの動きが、インターネットを利用したプラント機器取引ビジネスの本格化だ。日商岩井が韓国製プラント機器買付サービスを手がける「ハンスB2Bドットコム」に参加したほか、丸紅もプラント業界を対象とした汎用機材や副資材、保守部品をインターネットで取引するサービスを開始。また三井物産は国内電力会社向け、三菱商事は海外発電向けでそれぞれ同様のサービスを開始している。商社のプラント関連事業は、その幅を広げつつある。
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買い手市場は続くか
2000年の有力エンジニアリング企業の受注は世界的に好調であったようだ。ENR誌の米国コントラクターランキングの受注400社計で、前年比で国内15%・海外2%増・合計14%となっている。欧州もドイツのVDMAのプラント受注統計も上昇を見せている。米国、欧州の大手エンジニアリング企業の多くは受注の上昇を伝え、本年にはいってもその傾向が続いているという。
高原油価格の影響はアップストリーム分野、中東のハイドロカーボンPJの活況につながった。中国・イランなどアジアの石化プロジェクトも動きはじめた。世界的な天然ガス発電PJは依然として盛況がつづいた。天然ガスPJは活況を呈しGTL PJも増大した。欧米の新排気量規制に対応した石油精製PJも実現しはじめた。
このような市場の好転から、業界に一部に6年間の不況から回復したという声もある。しかし、米国経済の急落は、これまで繁忙をつづけた米国エンジニアリング業界への影響、海外志向などが予想される。世界的に設備投資が下降しており、エンジニアリング市場の買い手市場はつづくという見方がなされている。
2000年に米国の大手エンジニアリング企業3社が崩壊した。S&Wの破産とShaw Groupによる買収、Raytheon E&C(REC)のMorrison Knudsenによる買収によりWashington Group(WGI)が成立したが、RECから引き継いだ問題によるWGIの破産、Kaiser Engineeersの破産と分割売却だ。欧州でもSalzgitter Anlagenbauの清算、Simon CarvesのSembCorp E&Cへの売却などがある。売却が計画されていた大手企業としてParsonsのエネルギー化学グループとKruppUhdeがある。両社とも売却が成功せず、後者は改めて、Thyssenn-Kruppのコアビジネスとして再編された。
Bechtelは2000年も米国統合建設売上高のトップの位置を維持した。2000年受注はは化学より石油エネルギーに注力した。Fluorの建設売上高はサービスビジネス展開の影響もあって低下したが、株主志向経営という面では好評だ。KBRは業績低迷により、本年アップストリームも含めた全エンジニアリング事業を統合した。FWは業績が好転している。
Jacobsはプロフェッショナルサービス志向のトップ企業だ。本年Storkの第2段階の統合を完了、グローバルなサービス体制を拡大した。顧客に広汎なサービスを提供し、アライアンスなど顧客との関係を深めるというコンセプトで顧客の投資の上流下流のサービスというのがプロフェッショナルサービスだ。米国ではコントラクターだけでなく、デザインファームがデザインビルド進出などリスクをとる方向に大きな変身を遂げつつある。
Technipは2000年の受注でアップストリームの伸びが著しい。本号で述べたようにCoflexip統合後はアップストリーム重視の戦略を展開する。これに先立ち、Krebs−Speichimを統合したが、ノンハイドロ分野重視戦略だ。Kvaernerは事業再編の過程のなかでコアビジネスを石油ガスとE&Cに再集中した。AckerによるTOBも乗り越えたようだ。Lurgiは受注売上とも減少、事業再編を行っている。Snamprogettiも事業再編に入っている。欧州の企業の事業戦略はアップストリームとバイオ・ファインケミカル分野といえよう。
AMECはカナダのAGRAを合併したが、建設からプロフェッショナルサービス重視の戦略に転換した。サービスプロバイダー路線はHochtief、Skanskaなどもビジネスモデルとして展開している。
最近の欧米各誌が注目しているのはランプサムターンキイ(LSTK)だ。米国で失敗した企業はS&W・RECは国内外のガス発電、Kaiserは国内の化学プラントのLSTK案件が大きな要因だ。リスクをコントラクターに負わせる傾向が増えている。プロジェクトファイナンスでは貸し手はLSTKを要求する。
米国や国際発電プラントはEPCビジネスで、最近のプロジェクトファイナンスによるIPPプロジェクトはLSTK案件だ。発電プラントは機器の比重が高く、下流へのサービスも機器メーカーの業務で、EPC企業はリスク要因が多く失敗している。米国の発電プラントではShaw Groupの受注例のように顧客とEPCコントラクターでリスクシェアするなど変化の兆候があるという。
化学・電力など国際プロジェクトではLSTKが通常となっているという。プロジェクトファイナンスが原則だからだ。欧米企業は低コスト国エンジニアリング企業とのJV、技術ポートフォリオの拡充、中国PJに見られるプロジェクトマネジメントコントラクト受注などの戦略がめだつ。
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