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メタノール経由でDMEを製造
メジャーなども参加を打診

三菱ガス化等4社、DME燃料で事業化を図る

FS会社を4社で設立、豪州にプラント建設へ

 三菱ガス化学、日揮、三菱重工業、伊藤忠商事の4社は、西オーストラリア・ダンピア地区でのDME(ジメチルエーテル)プラント建設、および燃料用途としてのDME商業化を目指す。そのため、4社は共同で同プロジェクトの事業化調査会社を6月21日付けで設立する。DMEを燃料として商業化するのは、世界でも初めての試みであり、プラントのスケールも従来に比べて飛躍的に大きいものとなる。チャレンジングなプロジェクトがスタートする。

メタノール経由でDMEを製造

 同プロジェクトは、パースの北約1,500kmに位置する、西オーストラリア州ダンピアに、2006年末を目処に総額5〜6億ドルを投じてDME製造プラントを建設。日本市場に向けて燃料DMEを供給するもの。プラントは三菱ガス化学のメタノール脱水法DME合成プロセスを使うものであり、生産能力は140〜240万t/y規模を想定している。
 三菱ガス化学では、主に発電用燃料やLPG代替燃料としての普及を目指すとしており、さらにはLNGの代替としての活用も働きかけていくという。価格に関しても、「環境プレミアムを認めてもらった上で、既存燃料と同等のレベルを提示したい」としている。
 既に、三菱ガス化学ではスプレーの噴射剤用として、同社新潟製造所で1万t/yのDMEプラントを保有している。しかし、今回のプロジェクトではあくまで燃料用途のDMEの販売を目指しており、そのためプラントの規模もこれまでと比較にならない大規模なものにスケールアップする必要がある。今回、採用されるプロセスは原料の天然ガスから、まずメタノールを合成し、そのメタノールの脱水反応によってDMEを合成するという2段階のプロセス。しかし、これまでのメタノール製造プラントは2,500t/dが世界最大規模であり、今回のプロジェクトではDMEで5,000t/d程度としているため、従来の倍以上となる。
 NKKなどが、世界に先駆けて天然ガスからDMEを直接合成するプロセスを開発しており、三菱ガス化学やデンマークのハルダー・トプソーなども同様のプロセスの開発を手がけている。直接合成法が燃料用としてのDMEの位置付けを与えたという意義は大きい。しかし今回、メタノール脱水法を選択したのは、これらの直接合成法がいずれも開発段階にあり、燃料用としてDMEを供給するためには大規模なプラントとする必要があるため、現段階では技術面でも経済性でも、既に確立されているメタノール脱水法の方が適している、との判断によるものだ。
 なお、メタノール経由のため、メタノールそのものも商品化して事業性を高める、ということも考えられるが、これに対しては「メタノールのマーケットが小さいため、販売先が少ない。そのため現段階ではDME専門のプラントとして操業することを考えている」(三菱ガス化学・中村博海常務取締役)。
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メジャーなども参加を打診

 今回、4社が設立するのは「日本DME(Japan DME Ltd.)」。資本金は1億円で、4社が25%ずつ出資する。本社は三菱ガス化学本社内に置き、社長には同社天然ガス系化学品カンパニー・プレジデントの中村博海常務が就任する。
 日揮と三菱重工業では、同プロジェクトでプラントの設計・建設を請け負っていくことを期待している。日揮はオーストラリアでのプラント建設実績を持っており、三菱重工はガス化とともにメタノールプロジェクトを手がけてきている。また、伊藤忠商事は伊藤忠燃料などグループ全体で国内でのDMEの市場開拓と販売網の確立を図っていく考えだ。
 日本DMEは、FSのための会社であり、事業内容としては@DMEの事業化調査、ADME市場調査、用途開発、マーケット戦略の策定、BDME規格、安全性の確立の検討、CDME事業化に必要な投融資の検討、D西オーストラリア地区のDME事業化検討および評価、Eその他DME事業化検討に必要な事項―としている。
 FSの期間は約1年間を想定しており、その結果プロジェクトの事業性が確保できた時点で、日本DMEを母体として事業会社を設立していく考えだ。その際、4社以外でも事業への参加を希望するところがあれば、参加企業を拡大していくこともある。既に、欧米のメジャー・オイルや現地のガス生産会社、輸送会社などからオファーを受けているという。
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