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天然ガス需要の拡大に対応
LNGで年間1,500億円の受注を目指す

千代田化工建設、LNGビジネスを拡大へ


 千代田化工建設がLNGビジネスに力を入れている。6月1日付けで実施した組織改正で従来のLNG営業部をLNG本部に昇格して要員の充実を図っており、これまで受注したFEED業務の優位性を生かして本体の受注拡大への体制を整備した。

天然ガス需要の拡大に対応

 6月1日付けで実施した組織改正では、従業員が減少しているなかでの受注の確保と利益の向上を目指し、可能な限りのコンパクト化を目指した。そのため、コンパクトで責任体制の明確化、技術優位性のある事業分野への集中と重要案件のタスクの明確化、アライアンスやグループ総合運営が効率的に行えることなどを基本に全社的に組織を見直した。その結果、現業部門は海外プロジェクト、LNGプロジェクト、国内・産業設備プロジェクトの3つのプロフィット/センターを設置することとなった。
 特に中核分野であるLNGに関しては、3つのうちの1つとして組織を独立させ、LNGプロジェクト統括のもと、LNGプロジェクト業務室、LNG営業本部、LNGプロジェクト本部で構成する組織としてスタートした。膨大なマンアワーを必要とするLNGプロジェクトの受注に向けて、この組織で要員の拡大を図っていくとしている。
 世界の天然ガス輸送の74%はパイプラインで行なわれており、LNGで輸送されるものは全体の26%程度。そのLNGのうち75%が日本、韓国、台湾の極東アジア向けである。日本では電力需要の拡大に歯止めがかかっているため、最近ではLNG輸入が拡大する方向にはない。しかし台湾では、天然ガス火力発電所の計画が増えており、これに伴ってLNG需要が拡大すると予想されている。また韓国でも国内幹線天然ガスパイプラインの整備が進められており、これに伴って都市ガス用としての天然ガス需要は拡大していくと見られる。さらに、これまでアラスカやメキシコからパイプラインで天然ガスを輸入していた米国でも電力需要の拡大に対応するため天然ガスコンバインドサイクル発電の新設計画が相次いでいる。これにより米国内での天然ガス需要が急拡大しており、LNGの輸入量を増加させようとしている。米国では既に4箇所の受入ターミナルがあるが、その受入能力の拡大や、新たなるターミナルの建設が計画されている。
 また、中国やインドといった大国でもLNG輸入を開始しようとしているほか、ポルトガル、スペイン、イタリアなど欧州でもLNG輸入計画が進められている。全世界的に、LNGの需要は増大傾向にあり、供給側でもLNGプラントの能力増強や新設計画が多く計画されている。
 今回の千代田化工の組織改革は、ニーズが拡大しているLNG分野の受注拡大に向けて体制を整備したものである。
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LNGで年間1,500億円の受注を目指す

 事実、ここ2年間で同社のLNG分野は拡大の兆しを見せている。
4月にEPCを受注したカタール・ラスガスの拡張工事をはじめ、同社はこの2年間で世界で発注されたLNGプラントのFEED業務11件のうち、計8件を手がけている。
 「FEED業務をやることで、そのプロジェクトの詳細な技術や知識を得られ、どういったコストダウンが可能かをEPCの入札前に把握することができる。そのため、FEEDを手がけることはEPC入札で優位に立つことができる」(LNG事業統括)。ラスガスのEPC受注がそのことを証明している。
 さらに、6月には新たにインドネシア・ボンタンLNGプラントのFEED業務も受注した。ジャカルタの東北東約1,500kmに位置する、東カリマンタン州ボンタンLNGの増設案件であり、新たに295万t/yのLNGプラント(Iトレーン)と付帯設備を建設するもの。これにより、ボンタンLNGは2004年には年産2,459万t/yの巨大なLNG製造拠点となる。事業主体であるインドネシア国営石油会社プルタミナは、これによって世界のLNG市場でのリーディングポジションを確保していく考え。千代田が行なうFEED業務は、今年9月には完了する予定だ。
 千代田では、インドネシアでは他にイリアンジャヤ州タングーLNGプラントのFEEDも手がけており、これは既に完了している。しかし、LNGマーケットが不透明であることから、EPC入札はまだ実施されていない。ボンタンでも、状況は同様であるが、こちらのプロジェクトはアルンLNGが停止したことで、その代替としての位置付けもあることから優先的に進む見込であり「年内にはITB(入札招聘)が行なわれるのではないか、と期待している」(同)。
 そのほか、エジプト・ダミエッタのLNGプロジェクトではShellのプロセスで千代田がFEEDを行なっており、今年8月にもEPCがスタートする見込み。千代田化工では随意契約ベースでの受注を働きかけている。また、KellogがFEEDを行なっているカタールガスの近代化計画も9月にはEPCがスタートする予定となっており、今年はLNGプロジェクトが注目される。
 一方、LNGの受入ターミナルでも現在は台湾の桃園LNG受入基地計画で現地CTCIとの共同によってEPC受注が内定している。
 千代田は、これまでも日本国内にある22のLNGターミナルの約半分に関して建設参加しており、受入基地でも実績は多い。桃園プロジェクトが動き出せば、千代田にとって海外で初のLNGターミナルの実績となる。これらの実績をもとに中国広東省で計画されているLNGターミナルのEPCにも参加していく考えだ。
 LNGプラントは通常、中長期のLNG供給契約によりプロジェクトが動き出す。建設資金はプロジェクトファイナンスが基本であり、操業の開始が遅れると大きな損失が生まれる。そのためコントラクターにとってはコンプリーション・リスクが存在する。これまで、世界のLNGプラントの26%を建設してきた千代田では、全ての案件で予定を前倒しで完成させており、その面での信頼は高い。
 一方、ここ数年のリストラによって従業員を大幅に削減してきたが、最近の案件では殆どが他のエンジニアリング企業とのアライアンスで取り組んでいる。今後もアライアンスによるプロジェクト遂行を基本として、LNG分野を拡大。年間約1,500億円の受注をこの分野で上げていく方針だ。
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