ワシントンを本拠地として活動を続けている非営利団体EFI(Energy Frontiers International)がこのほど、米アリゾナ州で“水素社会を実現する技術”をテーマに講演会を開催、日本からも水素パイプラインをテーマとした講演が行われた。馴染みのないEFIという組織と、その講演会の概要を紹介する。
日本では馴染みの薄いEFIという組織は、1980年に米国のエネルギー関連企業を中心に設立された。当初は、GTL(Gas to Liquid)に関する全米会議として発足、96年にEnergy Frontiers International(EFI)となった。
現在、EFIには全世界のエネルギーに関連した企業が参加しており、その数は53社。BPやChevron、Exxon Mobilなどのオイルメジャーのほか、ABB、Siemens Westinghouse、KBRなどが、また日本からは、千代田化工建設、東洋エンジニアリング(TEC)、日揮の専業エンジニアリング会社大手3社のほか、NKK、三菱重工業、三菱ガス化学、丸紅、東京電力など9社が参加している。
これらのメンバーは、GTLやDME(ジメチルエーテル)の国際会議メンバーと殆ど一致しており、その影響力は大きい。
これまでEFIでは、エネルギーに関する多くのデータベースを構築し、会員企業に提供するとともに、各種の技術会議や現場視察などを開催してきた。最近では、GTL、再生可能エネルギー、燃料電池、分散型電源、オイルサンド、CO2封鎖技術、ビジネス戦略、政府政策などに関する講演会を行った。また、現場視察ではShellマレーシアのSMDSプラント、カナダのSuncorおよびSyncrudeのプラント、米ルイジアナのExxon‐AGC21テストプラント、トリニダード・ドバゴのLNGプラントなどの視察を行っているという。
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4月末にEFIは“水素社会を実現する技術”をテーマに講演会を開催した。講演会ではプリンストン大学のJoan Ogden氏が水素社会への展望について発表した。それによると、水素は電気のように高い品質のエネルギー坦体であり、高効率でCO2排出量もゼロ。多くの1次資源あるいは再生可能エネルギーから製造できる。一方、水素インフラの整備は技術的・経済的な障壁が高いと見られているが、水素インフラの開発コストはメタノールやGTLよりも低い。現に既に水素に関する技術は存在しており、発展しつつある。むしろ水素インフラの技術的課題は燃料電池など水素利用技術にあるとしている。
今後の展望として、初期段階では天然ガス改質や電気分解で小規模に製造されるが、中央集中需要が増えるに従ってパイプラインシステムを持つ都市規模の供給システムが導入されていく。このシステムについて同氏が構想している、CO2捕獲・破棄システムを持つ化石エネルギー・コンプレックスで水素および電力の同時生産システムを紹介した。
また、日本からは新日本製鉄・エネルギーエンジニアリング事業部・大橋一彦氏により、北東アジアでの風力および太陽光発電利用による水素製造と域内パイプライン構想、さらに北方4島を日ロ米3カ国による水素共同エネルギー管理基地とする構想についての講演が行われた。
なおEFIでは、今年6月15日に米アラスカで“Gas to Market”をテーマに、GTLやガス市場分析、メタノールなどを対象とした講演を行う予定だ。
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