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発生メタンガス全量を利用
PFI事業として十分な目算

東京都、下水道事業で初のPFI導入


メタンガス利用の常用発電設備


 東京都はPFI(プライベート・ファイナンス・イニシアチブ)を加速させている。全国のPFI事業の先行事例になった水道局の「金町浄水場常用発電設備事業」に続いて、各部局が次々とPFIに取り組み始めた。そんな中、今度は下水道局がPFI事業に取り組む。下水道局は汚泥処理過程で発生するメタンガスを燃料とするコンバインドサイクル発電設備整備事業にPFI方式を導入する。下水道事業本体へのPFI手法導入はまだまだ越ええなければならないハードルがあるが、その試金石としての今回のPFI事業の取り組みが注目される。

発生メタンガス全量を利用

 下水道局が2004年稼動を目指して1万3000kWの発電設備を建設する下水処理場は「森ヶ崎水処理センター」。区部全処理水の4分の1を受け持つ(大田区、品川区、目黒区、世田谷区など)日本最大の処理場である。低廉な電力、自主電源などの確保、省エネルギーなどが狙いだが、最大の目的は未利用エネルギーであるメタンガスの有効活用。
 下水道の汚泥は第一沈殿地、第二沈殿地を経て、消化槽でメタンガス、脱離液、消化汚泥に分離、減量される。その後、脱水機に送られ、さらに減量して焼却炉で焼却される。消化槽は約40℃の温度で20日間程度あたためる。ここで発生するメタンガスは年間約11,680ノルマル立方メートル(森ヶ崎水処理センター)。
 「現在、メタンガスは約3分の1を消化槽の燃料として利用しているが、3分の2は処理して廃棄されている」(都下水道局計画調整部)という。このメタンガスを全量発電用燃料として利用するのが今回のPFI事業だ。
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PFI事業として十分な目算

 都は今年秋までに同事業の実施方針を策定する。年度内にPFI事業者の公募を行う予定で、2002年度上期に事業者と契約を締結した後、建設に着手する。2004年度上期に事業の運用を開始する。
 PFI事業者は自ら資金調達を行ない、コンバインドサイクル発電設備を建設、運営し、下水道局に電力および熱を供給する(同処理センターで必要な電力量の65%を供給し、汚泥消化槽加温用に必要な熱の全量を賄う)。また、下水処理水を発電機の冷却水(使用予定量約225,000立方メートル/年)として利用する。事業者はメタンガスと処理水を下水道局から購入、電力と熱を売却する。供給熱量は16,800MJ/h。
 事業方式はBTO(ビルド・トランスファー・オペレート)で、事業期間は20年間。
 現在、同センターの年間電力料は約12億円。都はこの電力料金が低減出来ることで「PFI事業として立ち上げるに十分なVFM(バリュー・フォー・マネー)が見込める」と考えている。
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