国内ガス市場でパイプラインを議論
ガス市場整備基本問題研究会が提案を整理
国内のガス事業構造をグランドデザインから描き出すことを目指している、経済産業省の「ガス市場整備基本問題研究会」は、これまで行われたプロポーザル・セッションで表明された提案および意見を整理。論点をまとめた。これに基づいて今後、テーマごとに議論を展開していくが、その第1回目のテーマが天然ガスパイプライン整備に決まった。
同研究会は、経済産業省資源エネルギー庁ガス市場整備課が事務局となって開催しているもの。ガス市場の自由化を含め、国内ガス市場の将来のグランドデザインを描くことを目指している。
今年1月に始まった同研究会は、まずプロポーザルセッションとして各委員の提案・意見の表明が第5回目まで行われた。第6回目の研究会では、これまでに提案された意見をまとめ、今後の研究会の進め方を取り決めた。
各委員から出された提案・意見は大きく11の項目に分けてまとめられた。その項目にはパイプライン整備およびその利用規制のあり方のほか、LNGターミナルオープンアクセス問題、卸事業制度、小売分野の規制、安定供給問題、保安規制などとなった。
この中で、パイプラインに関しては、それが整備されるかされないかによってグランドデザインを描く上で大きな影響があるため、第7回で議論されることとなった。そのため、東京大学・松村教授がパイプライン整備に関する原案を作成、これをベースに議論していく形となる。。
<このページのTOPへ> <EnB8号目次へ>
これまでに出されたパイプラインに関する意見としては、「自由競争を原則としたガス市場の構築には供給基盤となる国内パイプライン網の整備が不可欠」(帝国石油・國府専務)、「中小ガス事業者の卸調達の選択機会の拡大とコスト低減のためにも推進すべき」(武陽ガス・山下社長)という積極推進の意見の一方、「重要性は理解するが、それ一辺倒ではなく個々のエネルギー特性を活かして費用対効果を図った議論が必要」(全国LPG卸売協会・手嶋業務委員長)のように慎重な意見もある。しかし、積極的に反対を唱える委員はいなかった。
だが、その運用面では様々な意見が出されている。特にオープンアクセスに関しては、投資へのインセンティブや、ストランデッドコストの問題にも関わってくる。
「パイプラインは容量に余力を持って先行的に行うためリスクが高い。そのリスクの報酬として建設後一定期間は独占を認め、その後の託送料金も投資リスク回収を考慮したものであるべき」(帝国石油・國府専務)。「投資促進のために建設後一定期間は独占を認めるべき」(日石三菱・掛札副社長)。「第3者アクセスは当然あるべきだが適正な報酬率で投資リスクをカバーする制度設計が必要」(東京ガス・草野常務)と、一定期間の独占を認める意見に対し「建設直後からオープンアクセスがあっても、投資報酬に見合う導管利用料が確保されればコスト回収は十分に可能」(一橋大学・山内教授)など、オープンアクセスの時期では意見の違いが見られた。
また、オープンアクセスの範囲に関しては「電力会社のパイプラインは火力発電所とLNG基地を直結した、発電所の延長線上のものであり、第3者アクセスにはなじまない」(電気事業連合会・殿塚専務理事)という意見に対して「家庭用および小規模事業用以外の自由化を前提とすれば、低圧導管まで第3者アクセスの対象とすべきであり、電力会社や国産天然ガス会社のパイプラインについても一定配慮は必要なものの基本的に第3者アクセスの対象」(東京ガス・草野常務)と真っ向から対立する意見も出されており、パイプライン整備におけるオープンアクセスの問題は、今後の研究会でも中心議題の一つとなりそうだ。
また、研究会の委員ではないものの、ストランデッドコストに関してエンロンジャパンのJPハール社長は「規制緩和の初期段階でストランデッドコストを負担すべきところがあれば、既存事業者と平等な範囲において負担する用意がある」と述べている。また「LNG基地・輸送・配給の各段階においてオープンアクセスを実施することが市場参入者を増やし、競争を促進させるために必要。キャパシティの開放が既存設備の最適利用を促進する重要な手段」と、オープンアクセスが自由化市場において極めて重要なポイントであることを指摘している。
第7回目の研究会は5月中旬にも開催される予定だ。
<このページのTOPへ> <EnB8号目次へ>