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メタンハイドレートで中小ガス田を有効利用

三井造船が製造〜輸送チェーンシステムを開発

 小規模であったり、遠隔地であるため、利用することのできないストランデッド・ガスと呼ばれる未利用の天然ガス資源。豊富な埋蔵量が確認されている、そのガス資源を有効利用するために、メタノールやGTL(Gas to Liquid)、DME(Dimethyl Ether)などの技術が提案されている。
 これらに対し三井造船は、メタンハイドレート化することで、利用可能性を高めるための技術開発を進めている。開発はメタンハイドレート製造技術、ペレット化技術、輸送技術と輸送チェーン全体をカバーするものであり、5年後の実用化を目指している。

製造技術を世界で初めて開発

 メタンハイドレートは、水の結晶構造の中にガスの分子が包蔵された水和物であり、1m3のメタンハイドレートのなかに約170Nm3のメタンを包蔵している。
 現在、天然ガスはLNGの形で輸入されている。これは、マイナス162℃という極低温状態で天然ガスを液化するという厳しい操作条件であるため、プラントの建設費および運転費ともに高額なものとなる。
 しかし、ハイドレートは圧力20〜50気圧、温度1〜8℃で製造でき、マイナス数十度程度で安定化できるため操作条件は格段にマイルドとなる。このため、プラント建設費および運転費のいずれもLNGに比べ大幅に低減することができる。
 そのため、従来経済的に開発困難であったストランデッド・ガスの有効利用の可能性が高まる。
 一般的に、メタンハイドレートを製造するには高圧タンクに冷却水と天然ガスを供給し、混合するという方法をとる。その際、水と天然ガスの接触面積を増大させるとともに生成熱を効率よく除去することが重要なポイントとなる。
 三井造船が開発した製造技術は、攪拌式とバブリング式を融合したバブリング・攪拌方式を採用。これにより、多数の天然ガスの泡を水中に多数分散させ、接触面積を大幅に増大。水の比熱でハイドレートの生成熱を除去しているため、従来の装置に比べて10倍のスピードで製造することが可能という。また、従来の装置がバッチプロセスであったのに対し、循環方式で高効率の熱交換システムを採用することで連続・高速プロセスの確立のメドをつけた。このようなプロセスは世界で初めてのものとなる。

全社的な開発体制

 しかし、ハイドレート化しただけでは貯蔵・輸送の際の圧力によって、ハイドレートが崩壊する。船積み輸送するためには、圧力に耐えられる形とする必要がある。そのため三井造船では、ハイドレートをペレット化して船舶輸送するシステムの開発を進めている。ペレット化することで、貯蔵効率が高まるほか、船舶への積揚効率が向上し荷役も容易となる。さらにハイドレートの安定性が増して品質保証が可能となるなど、輸送の実現性が増すとともに経済性も高まる。
 このペレット化によるハイドレート輸送システムの構築に向けて、同社ではハイドレート製造装置およびペレットか装置だけでなく、貯蔵タンク、運搬船、運搬船の荷役装置、ハイドレートFPSO(浮体式生産設備)など、ハイドレート・チェーン全体にわたる技術開発を進めている。このため、プラント、鉄構、船、機械という全社組織横断的なプロジェクト・チームを作って開発に取り組んでいる。
 さらに、メタンハイドレートは日本近海にも天然の状態で存在しているため、その探鉱のための高精度検知システムも開発を進めている。
 ノルウェー工科大学グドムンドソン教授は、メタンハイドレート・チェーン全体の経済性をLNGと比較し、およそ24%程度のコストの削減が可能としている。また、エネルギー総合工学研究所ではLNGよりもハイドレートの方がエネルギー効率が高いという試算を出している。
 ハイドレート技術が実現すれば、ストランデッド・ガスの有効利用の可能性は飛躍的に高まる。三井造船は、将来のハイドレート・チェーンの実現に向けて全社的な体制で臨んでいる。
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