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三菱重工、PCB処理プラント事業を積極展開へ

“無害化”“一貫処理”をアピールしプラントを販売

 長年、保管されてきたPCBの処理が漸く本格化しようとしている。既に、PCB廃棄物処理促進に関する法案が閣議を通過しており、今年半ばにも具体的な処理方針が明らかになってくると予想されている。こうした動きに、プラントメーカーの反応も相次いでいる。昨年、独自でPCB一貫処理プラント技術を開発した三菱重工業も、PCB処理プラント事業を積極的に展開していく構えだ。

自治体のFSに協力

 三菱重工業が開発したPCB一貫処理プラントは、同社長崎造船所で稼動中であり、2ヶ月で150kgのPCBを無害化している。長崎造船所には約1トンのPCBが保管されており、同事業所でのPCB処理は、年内にも終了する見込みだ。
 同社の処理技術は、水熱分解法を用いたもので、380℃、26.5MPaの高温高圧の熱水中にPCBと水酸化ナトリウムを投入する。水酸化ナトリウムは熱水中で炭酸ナトリウムとなり、これがPCBの塩素と反応して塩化ナトリウム、つまり塩になる。さらに脱塩素PCBも酸化され、二酸化炭素と水に分解される。排出されるのは、二酸化炭素、水、塩の3つであり、完全に無害化される。プラントは連続で運転されるが、処理後の排水は排水基準をクリアしているかどうかの確認が必要なため、複数のタンクを設置し、切り替えることで連続運転を可能としている。
 PCBを使っているトランスやコンデンサには、木や紙などPCB含浸物が多く入っているが、これらは湿式超微粉砕ミル(UFミル)でスラリ化して処理プラントに投入される。一方、トランスおよびコンデンサの容器や鉄心・コイルは容器処理プラントで化学洗浄し、洗浄廃液も水熱分解処理プラントに送られ、無害化される。
 処理プロセスでは、作業員の被曝の恐れがある。これまで、PCB処理が進まなかったのは、法的な問題だけでなく被曝問題の解決が難しかったという側面もある。三菱重工業では、原子力分野における放射線安全管理の豊富な経験を活かして、作業員の被曝にも対処した一貫処理プラントとしている。
 “無害化”と“一貫処理”をテーマとした三菱重工の技術は全国の自治体にも注目されている。実際にPCB処理に関するFSの要請もあり、協力しているところだ。

プラント市場は未知数

 2月に閣議決定した、PCB廃棄物処理の特別措置法案は、環境事業団法の改正とセットになっている。特別措置法では、国がPCB廃棄物処理の基本計画を策定し、さらに都道府県がおよび政令指定都市が区域における処理計画を策定することを定めている。また、PCB廃棄物を保有している事業者には保管と処分状況の届出、期間内での処分を義務付けすることとなっている。
 その処分の受け皿となるのが環境事業団である。環境事業団が、広域的にPCB処理事業を行えるようにし、基本的には各都道府県に一カ所ずつ処理プラントを設置していくが、広域処理となる可能性もある。
 環境事業団以外の民間会社が処理事業を行うことに関しては記述されておらず、不明ではあるが、少なくとも自家処理は認められる。そこからすると、PCB処理プラントの設置件数は、20〜30件程度と見られる。だが、事業団が直営で処理を行うのか、民間委託する形になるのかという点にしても、環境事業団の方針が明らかとなっていない現段階ではPCB処理プラントの市場規模は未知数である。
 特別措置法は公布から1ヶ月以内に施行することになっているため、国会審議が通過すれば、今年半ばまでには処理方針が明らかになるものと見られている。
 また、法案では具体的な処理期間は明記されていないが、概ね10年以内となるものと見られる。PCB処理プラント市場は、期限と規模の二つの制約が課せられている。これまでに処理技術の認可を受けているのは10数社ある。これらの企業が今年、一斉にプラント販売を開始することが予想される。
 そのなかで三菱重工は、処理方針を見極めつつプラント事業を展開していくほか、水熱分解処理技術を、他の難分解性廃棄物処理にも適用していき、拡大を図っていく考えだ。