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メタン・リファイナリーの展望

Chem Systemsはこのほど、遠隔地や小規模など回収のむずかしい天然ガスからの合成燃料・化学の経済性調査を発表、これら低コストのガス田からの合成燃料・化学生産は、経済的に現在の燃料・化学に対する代替となり得るとしている。

 Chem Systemsのレポートは"Stranded Gas Utilization: Methane Refineries of the Future."と題するもの。将来の天然ガス時代を象徴する意欲的な名称の調査だ。マルチクライアント調査として、昨年取りまとめたものだが、その概要を公表した。なお、Chem Systemsは化学・エネルギー分野の著名な国際的大手コンサルティング企業で、現在ではIBMの傘下にある。
 燃料分野では、軽油・ガソリン・DME (dimethyl ether)・メタノール、化学分野ではメタノール・オレフィン・アンモニアに関する分析を行い、技術としては、GTL (Gas-to-Liquids)、MTG (methanol to gasoline)、MTO (methanol to olefins)・MOGD (olefins to gasoline and distillates)・DMEプロセス・大規模メタノールプロセス・メタノール発電を評価している。
合成燃料・化学の経済性調査は遠隔地である中東において生産、米国のガルフ(USGC)、西欧、日本という先進工業国市場に輸送する設定とし、いくつかの技術と製品の組み合わせで行った。別に発表されている予定目次によって、検討する製品別の技術は左の表のとおり。表に見る限りは日本のDME・GTL技術は入っていない。
 以下、このレポートの結論を紹介する。

合成燃料

 GTLプロセスから得られる中間留分生産技術は開発の諸段階にあるが、燃料代替品ならびに高付加価値製品の可能性を高めるよう商業化が進められている。
 この分析は合成燃料のUSGC、欧州、日本への輸送コストも扱っている。それもあわせた各地でのコスト比較を次頁の図として掲げる。3地区とも軽油に対して、かなりの競争力があることが示されている。とくに日本ではどのプロセスにおいても、GTLコストが軽油価格を下回っている。この調査が示している経済性指標から見ると、GTL技術の将来はきわめて有望である。
 DMEの一段階プロセスによる生産は、従来の2段階方式(天然ガスをメタノールに、メタノールをDMEにする)にはまだ、コスト的に競争力がない。どちらの技術も経済性は、軽油市場価格に十分に対応できる。
 MTG・MOGDでガソリン・ガソリン混合物を生産する技術は従来の石油からの生産技術には経済的に競争力がない。

メタノールの化学・発電

 MTO技術すなわちメタノールからのオレフィン生産技術は、プロセスによって、エチレン・プロピレンを種々の比率で産出するか、主としてプロピレンを産出するか異なっている。
 この評価で行っているのは、Exxon Mobil、Lurgi、UOP/Hydroという諸プロセスに対して、全オレフィンの生産コストと、プロピレンの生産コストとUSGC・欧州・日本への輸出コストとの比較だ。
 この分析が示すところによると、中東のmethanol to propylene(MTP)・propylene to polypropylene統合コンプレックスはUSGC・欧州・日本のローカルプロピレンプラントに競争できる可能性がある。
 遠隔地の天然ガスからのアンモニアの生産は、中東でのアンモニア・尿素統合コンプレックスから生産される尿素の納品コストで計ると、一般的には尿素のローカルコストに対して競争力がない。
 大型メタノールプラントから生産されるメタノールによる発電は、USGCにおける天然ガス発電には競争できないが、LNG発電には競争できると計測している。