荏原など4社、海外環境ビジネスで合弁
アジアを中心に環境プロジェクト獲得を目指す
荏原製作所、千代田化工建設、東洋エンジニアリング(TEC)、三井物産の4社は、海外の環境ビジネスをターゲットに、合弁エンジニアリング会社を設立することを決めた。各社の環境技術を持ち寄ることで、今後拡大が見込まれるアジアなどを中心に共同で事業を育成していく。欧米の有力コントラクターに対抗していく考えであり、最終的には事業統合も視野に入れている。
欧米への対抗を目指す
昨年11月、荏原製作所と千代田化工建設は、海外向け環境エンジニアリング会社を設立することで合意していた。今回の合弁会社設立は、その合意に沿ったものであるが、意外だったのはTECおよび三井物産の2社がメンバーに加わったことであった。
その間の経緯について荏原製作所の依田正稔社長は次のように述べた。
「2〜3年前から、海外を対象とした環境エンジニアリング事業を展開したいと考えていたが、荏原製作所は海外は不慣れ。また、実績が多い国内市場も、成長の限界が見えてきたと感じており、アジアへの展開を模索していたが、アジア地域では米ベクテルなどの有力なコントラクターが進出しており、荏原単体でアジアの環境ビジネスを展開するのは無理があった。そこに、千代田化工との合弁の話があり、昨年11月に合意に達した。しかし、やはり2社だけでは海外の有力コントラクターに対抗するには不安があり、三井物産および東洋エンジニアリングとの話を進め、千代田化工も異存がないということで4社体制でスタートすることになった」。
2社から4社へと体制が変わったのは、荏原製作所の考えによるものであったことがわかる。依田社長は「環境エンジニアリングの日本連合を目指す」としていることから、今回の合弁目的を単に海外進出するのではなく、アジアを中心とした海外の環境市場において、欧米の有力コントラクターと正面から競合していくことを考えているようだ。
2010年に受注1,000億円目指す
4社が設立する新会社は「潟Gンバイロメンタルエンジニアリング(Environmental Engineering)」。4月2日に設立する予定であり、代表取締役社長には荏原製作所専務取締役エンジニアリング事業本部長の豊岡功氏が就任する。資本金は10億円で荏原製作所が65%、千代田化工建設および東洋エンジニアリングがそれぞれ15%、三井物産が5%を出資する。本社は東京・港区港南。従業員は当初120名でスタートする。このうち、荏原から60名、千代田とTECからそれぞれ30名ずつ出向・移籍する。
新会社は、各種環境プロジェクトの設計、施工から運転管理、保守、ウエイストマネジメントをや、各種設備・機器の製造、調達、技術コンサルティングなどを手掛けていく。そのため、組織的にはエンジニアリング会社としてEPC機能一式を保有。営業本部、プロジェクト本部、エンジニアリング本部、調達本部、管理本部の5本部制を採用する。固形廃棄物処理を中心に大気汚染防止、水処理など各社が保有する技術の実施権供与および受注協力を行い、事業を育成していく。また、将来的には新エネルギー関連も事業の対象としていく考えだ。
市場としては、主に東南アジアや中国市場を狙っていくとしており、2005年には年間受注規模450億円の達成を目指す。
新会社が狙う東南アジアの環境プロジェクト市場は、2010年には9兆円に成長するものと見ている。しかし、ベクテルやフォスター・ウィラなど欧米のコントラクターが積極的にこの市場で事業展開しているほか、韓国や中国などの企業も積極的に打って出てきている。そのなかで、新会社はおよそ1,000億円程度の受注規模を達成したいとしている。
ただ、アジアの環境プロジェクトは、民営化が進みつつある。特に、マレーシアやシンガポールでは既に公的セクターから手が離れ、民間企業が権益を取得し、処理設備を建設して運営する形になってきた。そのため、民間事業会社との関係をいかに作っていくかが問題となる。さらに、今後はコントラクターへも環境プロジェクトへの出資を求められる場合も増えることが予想される。
新会社があくまで単なるエンジニアリング会社か、あるいは事業参加もオプションとしていくか。新会社の動向が注目されるところだ。