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エネ庁、ガス市場自由化へ取り組み

ガス市場整備基本問題研究会を発足

 経済産業省資源エネルギー庁は、国内ガス市場の自由化に向けて本格的な取り組みを開始した。
 ガス利用の新技術の進展や、エネルギー業界間での競争の活発化など、ガス市場を巡る環境の変化が急速に進むなか、今後のガス市場制度を根本から検討していくため、このほど研究会を設置したもの。2002年11月に予定されている改正ガス事業法の見直しに向けて、中長期を視野に入れたガス事業のグランドデザインを検討していく。

現行法では対応できない

 ガスを巡る環境は急速に変化しつつある。
 1995年と99年に実施されたガス事業法の規制緩和により、大口分野での小売の自由化、その範囲の拡大、さらに新規参入促進のための接続供給制度の導入などが実施された。その結果、電力会社や商社などがガス事業に進出するなど様々な企業活動が活発化している。この4月には日石三菱グループと帝国石油が折半出資で天然ガス事業を行うための共同事業会社「NexTエネルギー」を設立する計画だ。
 また、燃料電池やマイクロガスタービンなどの実用化が迫りつつあるなど、ガス利用技術も急速に進展してきた。一方、サハリンプロジェクトの進展により基幹天然ガスパイプライン構想も現実味を帯びてくるなど、ガス市場構造の変革も求められるようになってきた。
 さらには、エンロンのような外資系企業も国内天然ガス市場に関心を寄せているほか、昨年10月の日米規制緩和対話では国内のLNG受入基地のオープンアクセス化が求められるなど、国際的にも日本のガス市場の自由化を求める声が高まっている。
 しかし、現行のガス事業法は1954年に施行されて以来、根本的な考えは変化していない。そのため、こうした環境の変化と新たなニーズに対応できていないのではないか。そうした認識からエネ庁では、2002年に予定されている改正ガス事業法の見直しに向けて、市場環境の変化に対応できるような新たなガス市場の整備に関する研究会を発足させた。

白地でグランドデザイン描く

 発足したガス市場整備基本問題研究会は、資源エネルギー庁電力・ガス事業部長、および資源燃料部長の私的研究会として設置されたもの。学識経験者のほか、都市ガスおよびLPGなどの業界団体、日石三菱など石油業界、電気事業連合会など29人のメンバーで構成されており、オブザーバーとして公正取引委員会も参加する。1月29日に第1回の研究会を開催しており、今後順次開催、今年秋頃に取りまとめを行う予定だ。
 エネ庁が進めるガス市場構造改革では、日本国内で国際的に遜色のない競争力のあるガス・サービスを提供していくために、これまでの規制緩和のような現行制度の部分的な見直しではなく、制度の根幹に立ち返って抜本的な検討を行い、長期的な観点から21世紀のガス市場の基盤となる制度を構築していくことを目指す。
 具体的には、まず概ね10年程度の中長期を念頭におき、あるべき規制のフレームワークのグランドデザインを白地で描く。そのうえで、それに至る制度改革のステップを検討していくというプロセスを考えている。
 さらに、検討にあたっては聖域を設けることなく、ガス貯蔵・気化からパイプライン輸送、ガス卸、小売などの各段階に応じて規制のあり方を検討していく方針だ。
 新たに発足した研究会では、まずグランドデザインを描くことを目標とする。従来の市場構造を踏襲しつつ変革を進めるのではなく、根本から日本のガス市場を見直していく。従来の都市ガス、地方ガス、LPガスといった業界構造も、LNGを基幹とした供給システムも、一旦白紙に戻して検討が進められることが期待される。